0445:会食
「もう~ほんと~年寄りを~ビックリさせないでほしい~泣かせないでほしい~」
フリージアさんはひとしきりビックリした後、大号泣しはじめ、挙動不審になり、自分自身の体躯を魔術などでも探り始め……自分を取り戻せたのは数日後だった。
「お姉様、都合の良いときだけ年齢を出すのはズルイのじゃ」
そうですね。お姉様と呼ばせておいて。
「だから馬車の中で何度も何度も言ったのですじゃ。ビックリするから、何が起こっても、何を見てもしばらくよく考えてから、判断する癖を付けて下さいね。と」
「んーだからーここが地下で遺跡だってこととか~何度も繰り返されて、なんかもう、重なってて。それがドーンと重ねて来たというか~頑張ったのよ? 理性的であろうと~」
あれで……ですか。
「だってだってだって、重病だったのよ~? 治らなかったのよ~? 段々、生活するのも気だるくなってきてて。このままだと後数十年で死ぬって言われて~。だから、緊急で身体全体を冷やして、凍らせて、眠りについたのに~。あの設備作るのだってもの凄い大変で~。なので、実験は小動物でしか出来なくて~実証実験は自分の身体でするしかなくて~。ぶっつけ本番なんてあり得ないとか思いながら、棺に入って~。ああ、もっと大変だったのは~後始末って言うか~目覚めるための仕組みも用意して~。とにかく大変で~大変で。寝れて無くて。なので~眠りにつくのは早かったけど~」
まあそうだよね。思う所はいろいろとあっただろうね。その一番のポイントが排除されてしまったワケだから。しかも本人は何の苦労もなく。
「ならば、まずは、御自身の身体が回復したことを喜びましょうか?」
「あ……そっか~」
興奮してゴチャゴチャになっていたみたいだが、冷凍睡眠からの復帰と、さらに病からの完治。どちらも回復したということで、めでたいことだと思う。
「そうよね~とりあえず~まずは~お酒?」
「ああ、そうですな。お姉様はお酒がお好きだと聞いておりました。私が飲まないので忘れてましたな」
「うん~お酒、好き~病気が酷くなって飲んでなかったけど~」
「色々と疑問はあると思いますし……誓約もしていただいたのですから、別にその答えを隠すようなこともありません。ですが、とりあえず、そこは心に納めて、お祝いしましょう。お酒は体調が整うまでは少しずつということにして……ケーキでも焼きましょうか?」
「おお、それは良いな! 我が主よ!」
オーベさんは結構甘い物が好きだ。脳が糖分を求めてるのかもしれない。
「そうね~もう、なんか疲れちゃった~身体は良くなったハズなのに~」
「お姉様、時間はいくらでもあります。それこそ、ハイノルドは……やりがいや生き甲斐を失ったときに寿命が来ると言われているではありませんか」
「うん、それは確かよ~殺されるんじゃなければ「自ら自分の生を手放すまで生きていける」場合が多いわ~」
「モリヤの言う通り、ここからは時間を掛けて行きましょう。それこそ、時間を止めて寝て、起きたばかりなのです。そんな無茶をして、さらに、急いでオベニスに来るまでも無茶をしています。じっくりとした休息は必要なのですじゃ」
それはそうだと思う。というか、そういう理由なら、数日どころか、数十日休んで良いと思う。ダラダラして。
「オーベ師の叔母様にして……魔道具師ですか。それはもう、大歓迎です」
「オーベ師がモリヤを連れて……といきなり言い出したので、荷物持ち以外に何かあるとは思っていたのですが。歓迎させて頂きます」
ということで、その日の夕食はうちの領のトップツーとの顔合わせをしながら、食事ということになった。オーベさんと約束したことも合って、俺が厨房で仕込みをしてきたメニューだ。
あ。その仕込み中にて……実は「スキルが増えた」。正確には、俺の鑑定で判明する能力値が増える瞬間を感じた。そう。何を隠そう「調理」である。
ショウイチ・モリヤ
界渡り 男 力162 躯137 器120 敏114 知610 精705
言語理解
能力付与
多重処理4
眷属守護
感覚共有5
→能力強化
経験共有
感覚共感
気配察知
調理
脅迫4
武芸3
魔力制御6
→風6
土4
光6
癒6
モギの指輪スキル:消費魔力
収納:10
鑑定:100
転移:500
ほら。あった。こないだの遠征前はなかったんだよね。
あの加速するような……グッと来る感覚。さっきカレーを作ったり、魔物肉のカツをあげてもらったり、サラダを作り、ケーキを作りしてたその最中に、ピキンと来たのだ。
ピキンといっても、身体の筋をおかしくしたとか、アキレス腱が切れた音とかじゃない。なんていうか、閃いた感じというか、判った感じというか。とにかく先に進んだというか。
スキルの取得と同時に様々な事が出来る様になった気がする。気がするだけで、多分、ここから修行しないと身には付かないんだろうけど。ただ、修行すれば、それが身に付くんじゃないかな? と思えるのがスゴイ。
ちなみに、オーベさんの実家から持ち帰ったカレー粉としか思えない粉、粉末ガーリックだと思う粉、シナモンみたいなの、バニラっぽい(の葉を砕いた物)等の香辛料「以外」の素材は全てこの領で買える物を使用した。ダンジョンポイントを使わなかった。
かなり前から探させていたかいがあって、オベニスでは米が普通に手に入る様になっている。川原のススキの様な感じで、米が自生していたのだ。現在は扱いの難しい(俺の記憶が乏しい)湿田ではなく、自生と同じ乾田での生産を開始している。
さらに、これまた「炊く」という調理法を教えた結果、安くてお腹が膨れるということで、丼物としてそれなりに飲食店で扱われるようになってきたらしい。まあ、まだまだ際物扱いみたいだけど。
さらに、生卵も「直営畜産場」で手に入るようになっている。当然だが、農業の育成と併せて、畜産業も誘致発展させていきたいと考え、オベニス地上、燃えてしまったせいで浮いたスペースの一角を牧草地として、様々な動物を育て始めている。
それがまあ、なんとか量産化の初期軌道に乗った形だ。衛生管理も(この世界にしてはかなり)徹底して、少なくとも、この領主館の調理場の食材倉庫には鶏(の様な鳥)の生の卵が常に常備されるくらいにはなった様だ。
それにしても向こうの世界……現代社会ってものすごい努力の結果、あの生活があったのだなぁとつくづく思う。茂木先輩のムチャクチャパワーがあってしても、清潔で安全な食糧、水を確保することがどれだけ大変か。
まあ、それこそ、よく考えれば、生活ということについて、日本が抜きん出てただけなんだよなぁ。向こうの世界でも。それにズブズブになってたなぁ……。
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