0443:浮遊馬車内

「こ、これはスゴいわ~! というか、浮遊石の罠がこんな形で使えるなんて~というか、浮遊石の罠を迷宮の外に持ち出すことなんて出来たのねぇ~」


 アリエリの引く浮遊馬車は絶賛爆走中だった。多少危険でも赤の街道を走り抜けるのが一番という判断で、とにかくスピードを優先することになっている。国境付近は横に逸れて山を越えれば問題無いとの判断だった。

 ノルドは、ハイノルドと一緒だと、緊張してしまうのはどうしようもない様だ。ここまで不平不満を口にしたり態度に出したりしていないが、アリエリがちょっと可哀想だったので、一緒に併走している。周辺注意を行う者がいると、楽なのだ。


「さて。どこからお話しましょうか。お姉様。何が聞きたいですかのう?」


「ん~そうね~ん~モリヤちゃんとオーベちゃんの関係から?」


「そこですか。私はモリヤの妻になりますのじゃ。まあ、モリヤは他に十二名の妻がいて、本妻はオベニスの現領主ですな」


「え? そうなの? オーベちゃんが本妻じゃ無いの?」


「彼はハイノルドだからどうとか、貴族がどうとか、そういうのは関係ないのです」


「……界渡りですもんね~色々と違うんでしょうね……というか、隷属されなかったにしろ……こちらの世界に来たばかりの時に良く殺されなかったわね~そもそも、普通に街に転移してきたの?」


「確かに。違いますな。彼はいつの間にか森に立っていたそうです。それを本妻である、オベニス領領主、イリス様が助けたのが全ての始まりとなります」


「あ~ならしょうがないか~。ってオーベちゃんはオベニスで?」


「はい。イリス様を我が君として、仕えることにしました」


「あらあら。貴方もハイノルドとしては変わり者ね~」


「ええ。ああ、そうです……お姉様にお伝えしなければいけないことが。お姉様がお眠りになった頃に比べて、ハイノルドは極端に数を減らしています。大陸中、世界中を探せばまだ他に居ると思うのですが……オベニス周辺、いえ、私が知る限り、私以外に生存しているハイノルドは……現在私と……お姉様だけですのじゃ」


「実はさ~……そんな予感はしてたんだよねぇ……」


「予感ですか」


「ノルドもそうなんだけど、ハイノルドの出生確率がもの凄く下がっててさ。何かキッカケがあれば種族滅亡もやむなしなんじゃないかな~って」


「そうなんですか」


「前兆はね。多分、五千年くらい前にはあったのよ。資料を見ると~。ただ、ずーーっと~どうにも出来なかったのね~」


 浮遊馬車は音も無く凄まじいスピードで進んで行く。アリエリの風の術のおかげで、空気抵抗などもほとんど無く、さらに音も遮断される。幽かに……風の音が聞こえるくらいだ。


「それにしても……この馬車凄いわねぇ……というか、これ全部、モリヤちゃん?」


「ええ。スゴイでしょう? 我が主は。この馬車の箱自体はガギルの技ですじゃ? モリヤはアイディアを……ああ、浮遊石は提供していましたね」


「側にガギルもいるのねぇ~そうねぇ。確かに……オーベちゃんが私を起こした理由が分かったわ~。病気が治らなかったとしても~魔道具職人としてもの凄く刺激を受けちゃいそうだもの~」


「そうでしょう? ああ、良かった。話に聞いていたお姉様の性格を読み違えて無くて良かったのじゃ」


「それにしても……にも関わらず、一番スゴイのは……彼が尊大に……偉そうにしていない所よね~素でこれでしょ~?」


「はい」


「誰もが……欲に縛られるのよねぇ~清廉潔白……と思っていても、完璧主義はどこかで破綻するっていうか~なのに彼にはそれが無いのよねぇ……まったく」


「はい。それは感じますのじゃ。これまで出会った強者とは何かが違う……」


「界渡り……だからってこと? 異界の者だからってことなのかしら~?」


「細かいコトは……判りません……ああ、大切な事を伝え忘れておりました。私は我が主の妻の一人なんですが……彼に可愛がられるのは格別です。モリヤに触られるのがイヤでは無いのです」


「え~? 何それ~?」


 フリージアの顔色が変わる。


「ちょっと、ちょっとちょっと、オーベちゃん。それ、とんでもないわよ? なにそれ、なにそれ。えっと。えっと。モリヤちゃん……に触られると……嫌悪感を感じない……ってこと? よね?」


「ええ、そうです」


「げげげっげげげ~え、え、え、という、ということは~あの~子作りの儀式が~あの~古の~あの~なんていうか~」


「はい、男性器を女性器の中に納めて精を放つやり方……さらにそれがとんでもなく気持ちが良いという事実。古文書で散見された記述通りの展開に驚いてしまいました」


「まあまああまままままままっまあああああ! お姉様大ショック! というか、オーベちゃんも、あの、き、気持ち良いの?」


「……は、はい。最初は少々痛みも感じたのですが……数回するうちに……」


「ひ、一晩で?」


「……はい……」


「な、なにそれなにそれ。彼、それがあるから……余計な欲が無いってこと~?」


「わ、わかりません」


「あらあらあらららまあままあ……奥様? オベニスに着いたらでいいから、旦那様に触ってもらってもいいかしら~?」


「ええ。治療の目処が立ったら、まずはマッサージしてもらうと良いと思います。さすがにそれ以上は……妻以外は無理ですが」


「マッサージ?」


「モリヤが背中や腰、足、身体を揉んでくれるのですが……。これも気持ち良いです。意識を失います」


「まあ。そうなの~」


「ちなみに……妻として……致した後は……七日間寝過ごしましたが」


「……なにそれ。そんな話聞いたことない~」


「はい。……我が主……面白くないですか? お姉様」


「……面白い~。オーベちゃん……さっきも言ったけど……起こしてくれてありがとう。こんな時期に寝ていたなんて後で知ったら、悔しくてもう一度寝ちゃうわ」


「良かった。叔母……お姉様であればきっと気に入って下さると思いましたから。それに。我々にも利益は大きいのです。お姉様に思い通りの魔道具を作っていただけますし」


「あ~そうねぇ。そりゃ当然協力するわよ~生活便利にするの好きだし~」


「くくく。その方面でも……驚くと思いますよ? オベニスに着いたら」


 浮遊馬車は滑るように走り続けていた。馬車の横をアリエリとモリヤが走る。身内で内緒話もあるだろうと、モリヤはオーベとのパーティを切断していた。


 なので馬車の中でどんな会話が為されているかは……誰にも伝わらなかった。

 

 




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