0442:面白好き
「モリヤは……いえ、私も今はオベニスに住んでいます。最初に言ってしまいましょう。フリージアお姉様、身体を癒すためにも我々と共にオベニスにおいで下さい。そして魔道具師としての力をお貸し頂けませんか?」
「ん? 良いよ~」
もの凄い軽い。
「それは良かった」
「まず第一に病を治してくれる目処は付いているの~? もしも治ったらその恩もあるし、いくら故郷だからって、滅んでしまった集落に居てもねぇ。そうなると既に唯一の身内っぽいオーベちゃんに頼るしかないじゃな~い? お姉さんとしては」
「その際に……どうしてもお願いしなければならないことが」
「なに~」
「誓約をお願いしたい」
「何に対して~?」
「……オベニスと……モリヤに対する秘密、です」
「あらあら?」
「ちなみに、お姉様の病を治すためにも必要です。「モリヤに関するあらゆる事を口外しない」っていう誓約が」
「あらあら。そんな程度の約束で良いの? ん~何それ~面白そう~というか~モリヤちゃんってそんなにミステリアス? あまり怖くないし、スゴそうにも見えないけど~うーん。ああ、でも本質、そういう子の方が怖かったりするのよねぇ。皇帝とかで何人かいたし~」
そんなスゴイレベルと比べられても困っちゃいますけどね。
「ええ……私が聞いているお姉様の性格から考えれば……多分、私達と一緒に来ると、面白いことが沢山だと思います」
「あらあらあらああら。よく知ってるのねぇ。私の性格。そうなの。面白いこと大好きなの。魔道具も色々とワクワクするから作ってただけだし~出来なかったことが出来るようになるっていいわよね~」
「はい」
誓約を行った。フリージアさんは魔道具の神(というのがいるのか知らなかったが)に誓っていた。正直、魔道具師である以上、それを裏切ることは無いそうだ。ある意味、この人にとっては癒しの女神に誓うよりも重いようだ。
「ということで、フリージアお姉様。モリヤは界渡りです」
「!」
フリージアさんの顔から、初めて、表情が無くなった気がする。
「なんていう……なんていうことかしら。界渡りは……優秀であればあるほど、使い潰されて来たの~」
「ああ、大丈夫です。自分は……召喚されたワケではないので」
「え?」
「お姉様、モリヤの言う通りです。彼は隷属されたことがありません」
「ええ?」
これまでオーベさんに聞いた歴史の真実的な話だと、界渡りというのは尽くが隷属、奴隷階級であって、どんなに凄まじい能力を持ち、スゴイスキルを持っていても、評価されることはなく、使い潰される存在だったそうだ。フリージアさんはなんか、実際の所を見てきた様な感じで話をしているので……まあ、そういうことなんだろう。
「ええ。そうでしょうね。判ります。実際に……つい最近、四十三名もの界渡りが……召喚され、隷属されたばかりです」
「なんですって~? よ、四十三名? そんな数……そ、その国は大陸制覇を?」
「いえ……余りにも愚かな指導者によってほぼ、自滅しました。そして、全てとはいきませんでしたが、界渡りは全て私と同郷の者達だったので……保護しました」
「え?」
「今、オベニスで匿っています。そして、迷宮に挑戦することになっています」
「ええ?」
「お姉様……こういうことです。訳がわからないと思いますが……モリヤと一緒にいればこんなことは普通の事です。追い追い説明していきましょう。それで、我が主よ、まずはどうする?」
オーベさんが俺に尋ねる。
「安全とか……今後のコトを考えると、ココでの活動を早急に終わらして、オベニスに戻り、まずはじっくりとフリージアさんを治療するっていうのがいいんじゃないかと」
「そうだな……まずは戻るか」
「浮遊馬車を使えば、フリージアさんに無理をさせることも無いだろうし」
「そうじゃな……。ミアリア、スマンがお願い出来るか? 私はお姉様と同乗して細かい状況を説明しようと思う」
「はい。了解しました」
浮遊馬車はそれほど重さを感じないが、それでも超高速で移動する場合は、搭乗する人数と載せる荷物の量は少ない方が良い。
「浮遊馬車?」
「多分ですが……お姉様の魔道具制作に刺激を与えてくれると思いますよ。迷宮産です」
「おおぉ! それはスゴイのぉ~!」
「とはいえ……まずは物を回収しないとですね。フリージアさんがいた部屋の魔道具や資材も回収してしまいましょう」
「そうじゃな」
と言って、地下へ行き、まるごと収納していく。さすがの天才フリージアさんも、その姿を見て唖然としていた。
「その指輪~迷宮品なのねぇ。そこまでの性能の魔道具は~見たことないわ~」
まあ、「収納」の大きさは俺の魔力? に左右されているから、魔道具自体の性能じゃないのかもだけど。
「そ、そういうことならこれも、これも、あとこの魔道具も持っていってほしいの~」
大型の魔道具……正直、どんな役割なのか、どんな効果があるのかさっぱり判らないが、バンバン詰め込んでいく。フリージアさんはその辺を大半、諦めるつもりだったらしい。誰か勝手に使うと危ないので、魔石を抜いて破壊してしまえば良いと思っていたそうだ。まあ、そりゃそうか。
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