0441:もぐもぐ

「月夜の森の集落……無くなっちゃったんだ~」


「そうですね。蛮族に攻められたとか、帝国の滅亡に関係してると、いろんな噂がありますが」


「そうね~帝国の滅亡の時に~この森のノルドやハイノルドは裏切り者と戦って……尽く処分したのよねぇ~だからもの凄く恨まれてた。それでも、お父様が生きているうちは~大丈夫だったと思うんだけど」


「はい。その通りです。お姉様が眠りについてからしばらくして、お祖父様が亡くなり、母は父と共に、父の生まれたナルガ森域へ移住したそうです。その後すぐに……月夜の森は壊滅……この館は傷付くことはなかった様ですが、ノルドが離散し、死に絶えた状態では集落は維持出来ません」


「まあ、そうなるわよねぇ~まあ、この館は私が寝ている限り、最低限の機能は失わないようにしてあったし~強度もかなりのモノだと思うし。もぐもぐ」


 お腹が空いていたのか、フリージアさんはものスゴイ勢いで食べていく。


 カレーは当然として、肉……普通にステーキ……これ、五〇〇グラムはあるよな? を、もう、五枚以上食べている。さらにパン、スープ。いつもと変わり映えのしない食事だが、凄まじい勢いで消費されていく。


 まあ、オベニスを一年程度維持出来るだけの兵站を「収納」してあるし、至る所で「鍋買い」してスープや汁物、さらに焼き物なんかも大量に詰め込んである。パンも焼きたてだ。


「おいしい、おいしい。なにこれ。貴方お料理上手ねぇ。カレーは懐かしい味だけど、なんか確実に味が上等だわ。さらにこの焼いた肉……ただ焼いただけなのに……本当に料理人じゃ無いの? というか、肉は焼いてたけど、パンとかスープとか……「収納」? ああ、その指輪ね? 全部入れるの? それにしてはもの凄い容量ねぇ。どういうこと? もぐもぐ」


「お姉様。その辺はゆっくり説明します。大丈夫です。全部伝えますから。慌てずに」


「あ、もぐもぐ、うん、そうね。だめね。なんか焦っちゃうの。眠る前に想定していたよりも早く起こしてもらえたんだけど~やっぱり、自分の居なかった間に色々と変化してるのに付いていけるかどうかが怖いみたいね」


「そうですか。おば、お姉様ほどの天才でもそう感じるモノですか」


「そうなのよ~って天才なの? 私? もぐもぐ」


「ええ。お姉様の開発した魔道具が、現在世界で売られている流通している全ての魔道具の基礎となっています」


「あらあら。それはちょっと残念ねぇ~」


「なぜです?」


「だって、私以上の魔道具師が生まれなかったということは、大きな魔道具の進化も無かったという事でしょう? そんなのつまらないわ。もぐもぐ」


「そう……ですね。確かに。そうかもしれません。ですが、これから……かもしれません」


「あら。意味深ね。もぐもぐ。おかわりー」


 もう、ステーキ七枚目か。どれだけ入るんだろう? さすがにもう、迷宮産で無いと手に入らない「バター」が切れるな。畜産業って魔物がいるせいか、ほとんど定着してないんだよね……。この世界。結果、鳥系の卵も手に入りにくいし、牛や山羊の乳、そこから生まれる各種乳製品もほぼ存在しない。まあ、ラードでもいいか。肉は狩ってきてくれたから、豊富にあるからね。

 ちなみに、美味しい美味しいと言ってくれている最大のポイントは醤油と砂糖、みりんとかだと思う。その辺はダンジョンポイントで常に交換して持ち歩いているので、激うまステーキソースが簡単に作れてしまう。バターとニンニク、生姜。さらにおろし大根にポン酢とか、こっちの世界では食べたことのない、旨味の重復っぷりだ。


「まずは、紹介します。彼は我が主……我が夫であるモリヤです。メールミア王国のオベニスという領で領主の補佐をしています」


 頭を下げる。調理はしっぱなしだ。


「あら? オベニス? メールミア王国っていうのは知らないけど、オベニスは知ってるわよ? それ、帝国の中でもかなり大きな城砦都市よね? 勇者の築いた都市として有名だったわ」


 なんと! そ、それはもしかして……。


「その勇者の名前をご存じです……か?」


「えーと、なんだっけかな? 私もまだ産まれてない頃の話だものねぇ~。歴史書で読んだけど~でも……確か……父は共に戦ったことがあるとか言ってた様な。モグとか……モズとかそんな名前の……」


「モギ、ですね」


「そう! それ。ってあれ? よく知ってるわねぇ~孤高の勇者、惨殺の勇者、排除の勇者。帝国の西にいた蛮族とか魔人とかはほとんど彼一人で退治したっていう話だったような。あ。魔人の国をほぼ一人で滅ぼしたってことで付いたのが、惨殺の勇者だったかな? それで、帝国の三分の一を治める大辺境伯になるように当時の皇帝に言われたんだけど、自分には出身地であるオベニス周辺だけで十分と言って断って。それ以降、皇帝に逆らったとして為政の場に一切現れなかったっていう。最終的には清廉の勇者とも言われてた様な」


 先輩……手紙には詳しく書いて無かったけど……やっぱり……。若い頃はかなりやらかしましたね? あのチート能力を持ってて、目立たないわけが無いし、はしゃがない訳がないものね……。


 




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