0435:旧帝都
城砦都市を抜け、蛮族を警戒して封鎖されている国境の砦=関所を避けて再び、街道に戻る。ここから先は蛮族の領域、さらに言えば、古の昔に滅んでしまったグランバニア帝国の領土である。
赤の街道はさらにボロボロだ。それが、山脈の端の渓谷沿いに走って、帝都へ続いている。こちら側へはほぼ人が行き来していないのか、倒木や落石、土砂崩れで道が失せている場所もあった。
とはいえ。
渓谷を抜ければ、そこは枯れ果てた荒野……だった。
メールミア王国と蛮族領域の境は山脈である。そこまで険しいわけではないが、メールミア側は泉や小川があり、植物の生い茂る「生きた」地であったのと比べると、山を隔てたこちら側は生気が薄いとしか思えない。
岩石や土、茶色い荒れ地……しか目に入らない。
蛮族はこんな地でどうやって暮らしているのか? そりゃ略奪したくなるよな? と思わざるをえない。たまに魔物や動物は見かけるが……それも飢えた状態であるのが見て取れる。
国境付近ではしばらく、赤の街道を外れて走っていたが、いつの間にか街道に戻っていた。何よりも走りやすいのだ。蛮族に見つかったとしても、構わないというか。追いかけて来て襲ってくるのならまあ、返り討ちにすればいいや……というか。見て見たいというか。
かなりの距離……荒野を走り抜けていると、次第に緑の……木々が見える様になってきた。水場も……多分あるのだろう。若干潤いのある風景が広がってきた。
「ここはもう、旧帝国の首都付近……なんですよね?」
「まあ、まだ半日はかかるな。我々の速さで」
そうなのか。結構遠い……のだな。それは仕方ないか。
「そういえば、旧帝国ってなんで滅びたんですか?」
「内乱によってだな。各属性の上位術が使われただけでなく、召喚術で広範囲に被害が出たらしい」
「あの、黒いグニョグニョな術とか?」
「あんな術は子供騙しと思えるような……複数の上位魔術士が協力して行う大規模範囲魔術じゃな。ここまでの荒れ地を産み出したのはそれじゃ。ああ、この辺りからの地は今でこそ緑が生い茂っているが、帝国滅亡時は毒のような効果で全て枯れ果てたらしいぞ? 私は離れていたから見ていないが。それこそ、全部が朽ち落ちて、何もかもが腐り墜ちたという」
「毒のような……」
「ああ。多くのハイノルドも命を落とした。浄化に時間がかかるので近寄るなと言い残してな。彼らの命がけの術式が、今も発動し続けて居る感じじゃな」
休憩の度にこの手の話をして、説明を受けている。一度聞いたりしている話もあるのだが、かなり忘れている。
街道を駆ける我々三人。予想されていた行く手を阻む敵、蛮族は……一切現れなかった。
「そろそろ……見えてきたぞ? 遠くに」
少し小高い丘でオーベさんが言う。確かに……何か……雲というか、蜃気楼の向こう側に人工建造物がらしきモノが乱立しているのが見えてきた。まばらで歪んでいる。灰色の……オバケ煙突の少し太いのとでも言えば良いのか。
「あの塔は全て、増幅塔だったらしい。魔術のな。登録してある者が術を使うと、その威力が数倍に増幅したと言われている。なので、帝都の周辺に「敵」は近づけなかった。帝国の城砦都市にはほぼ、あの塔が建てられていたので、寡兵であっても籠城すればほぼ迎撃出来たそうだ」
「そんなにですか」
「帝国時代は領主はほぼ、優秀な術士だったようじゃの。なので、領主さえ生きていれば抵抗は可能となっていた」
そこまで……あ。もしかしたら、当時の領主は尋常じゃ無く強かったのかもしれない。茂木パイセンも帝国の貴族としてオベニスを治めていたんだし。
元帝国首都、帝都グランバニアに近づくにつれて、さっきの塔の正体も見えてきた。構造は多分、通常の……崩れかけた塔だ。円形で壁面内側に階段が這わせてある、普通の塔。だが、デカい……。一つが……高層ビルくらいあるのか? 昔ネットでチラッと見た絵画「バベルの塔」だかの……小さい感じ? だろうか? 煙突なんて言ってごめんなさいな感じだ。
塔と塔の間に廃墟が広がっている。というか、デカいな……。この都。帝都というだけある。今では……完全に魔物の住処になっているのだけど。
そして、崩れかけている塔に囲まれる様な位置に巨大な建造物跡が見えてきた。これは……この巨大な跡……多分……。
「帝都グランバニアの象徴……白亜城……のなれの果てじゃな。多分、魔術……強力な魔術によって、吹き飛ばされ、崩れ落ち、雨風に晒されての結果ということになるな。増幅塔は色々と残骸が残されておるので資料が残されているが、この白亜城に関しては、ほとんど全て一気に吹き飛んだ……ということくらいしか判っておらん。その構造や形もな」
「名前からして白かったことくらいですか」
「そうじゃな……。多分白かったんじゃろうな」
木や草、岩がゴロゴロしていて判らなかったが、よく見れば。確かにクレーターになっている。円形の……大穴だ。
「スゴイ規模の術ですね……ここまでの広さってことは、建造物もかなり大きかったんじゃないでしょうかね」
「ああ」
俺の頭の中に、東京都庁の背の低いバージョンのお城が思い浮かんだ。土地の規模として考えると、見える範囲でアレよりも大きい気がするけど。
「それにしても……魔物は置いてけぼりにしているだけで何体か見かけたが……蛮族は見なかったな」
「……ヒームもどき? なんですよね。そうですね。見かけませんね」
「私が……この先の森にいた時は見かけなかったからのう……蛮族なぞ。まあ、その前に森に入って来れんが」
「まあ、そうですよね」
ノルドも、ハイノルドも基本、引きこもりですもんね。
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