0433:故郷
「臭いの件だがな。我が主が新魔術を生み出したのじゃな? また」
「大したことは無いですけどね」
「……アレがダメで迷宮を嫌う者も多いのじゃぞ?」
オーベさんがやっと、寝床から起きて、活動を開始した。まあ、そのアレをした後に、イリス様達と同じように意識を失い、深い眠り状態となり、……そのまま十日近く目覚めなかったのだ。
そんなムチャな長期間昏睡状態、満足な栄養も得られないで大丈夫なのか? と思うんだけど……なんか、大丈夫らしい。起きてすぐに普通に活動し始めたのは、他の皆と一緒だ。
「根本的にもの凄く、生きている……という気がする」
オーベさんの言葉に頷く妻達。ま、まあ、なら良いんですけどね。ちなみに、二回目以降はこの深い眠りに陥ったりはしない。若干疲れることがあるのは、向こうの世界の人と一緒だし。
「その新魔術……は、根本的に良く判らんのだが」
「そんな……普通の考え方ですよ」
「そもそも、臭いが粒っていうのは聞いたこともないぞ?」
「そうですけど……自分の世界ではそういう事になってましたよ? 偉い科学者さんが研究した結果」
「ふむう……」
オーベさんが俯きながら首をかしげる。あ。そのポーズは結構可愛い。ずるいな。美人は。
「我が主よ。一つ……提案がある」
「は、はあ」
「私の出身はここから東。いまでは蛮族の領域となってしまった地。古の帝国、帝都のそばにあった小さな森だ。森域と呼ばれるほどの広さもない。月夜の森と言う」
真東……メールミア王国の向こう側は、デービア蛮族群領域と呼ばれている。そして、その向こう側にグランバニア帝国、その帝都グランバニアが存在する。既に巨大な廃墟の都市、だが。
「月夜の森は帝国と「組んだ」ハイノルドが帝国での活動をしやすくするために小さな森を開発したものでな。その元はさらにその東、クラエの大森域と呼ばれる広大な森になる。当然だが幾つものノルドの集落が存在し、森都も存在した。帝国が凋落した今では……数は減っているとは思うが、元々ヒームの世界と関わらずに生きてきた者達だからのう……ノルドは現在も生き残っている者はおるハズじゃ。多分じゃがの」
ほうほう。いつの間にか、ファランさんがもの凄い真剣に話を聞いている。もしかして、また、ハイノルドの秘密というか、口外してはいけない系の超極秘情報がさりげなく開示されたのではないだろうか? だって、森都が「ある」って事すらノルドの人達は誓約で言えない状態だったわけでさ。長年。なのに、さらにその上の森都が東にある……と言われているわけで。その部分だけでもヤバくない? 今の話。
「さっき言った通り、ノルドだけではなく、多くのハイノルドが生活していたが、多分、ハイノルドは既に命が繋がらず途絶えたと思う。私も父や母から話しに聞いた位しか情報は持たないがな」
「はい……んじゃ、オーベさんの御両親のお墓は?」
「ああ、月夜の森にあるな。でな? そのクラエの森の森都に私の親の実家、正確には母親の家があるんだが……そこに……行くのはどうだろうか?」
「え? あ、あれ? 里帰りとか……故郷巡りとか、そういう事ですか?」
「ふむう……それよりも大事な事を確認しに行くと言うべきか……いや、自分でも見てみないとちょっと何も言えないというか」
「案……ということは、何かあてがあるって事ですよね?」
「ああ。もしも私の案が使い物にならなかったとしても……その地、その家にある魔道具を全て回収するだけでかなりの益はあると思う。そのためには、家に入るための鍵となる私と、使い勝手の良い収納を持つモリヤが、直接行かないとなのだが」
「そう……ですか。正直、もしも今日明日、近日中に東南への使者やミルベニが帰還して新情報を得られたとしても、紅武の娘達には「気配察知」を覚えてもらうまで特訓かな……と思ってたんですよね。イリス様、ミスハルやモリヤ隊のメンバー。そして俺が「パーティ」にいない状態で迷宮を潜り続けるのは、正直厳しいですし。命の危険が大きすぎます」
「そうだな。安全策を……というのならそういう事だろうな」
彼女達の目的は最深層だが、最終目的はその先にあるご褒美であり、もしもそのご褒美が「何でも願いが叶う」というものであれば、当然、元の世界への帰還が大目的となる。万が一でも道中で死んでしまったら意味がないのだ。
「ただ、少々気になるのは周辺国の情勢です。至る所から煙が上がっている状態ですからね……」
「ああ。イガヌリオが弱り、ビジュリアがほぼ滅んだからのう……」
「ええ。そこに介入しようと躍起になっている所ですから。ただ。うちの国は女王が有能ですからね。そんな中で漁夫の利を狙いながら、富国強兵に励んでくれるハズです」
何よりも、オベニスは王国でもかなり内陸部、諸外国からは離れた位置にある。周辺国と戦争という事になっても、攻め込まれるまでにはかなりの時間を要する……のだが。
それでも、周囲をスルーしてここまで攻めてこられる可能性があるとして。イリス様とファランさんがこの地にいれば問題無いだろう。さらに、紅武女子への気配察知の講師としてミスハルにも残ってもらうわけだし。
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