0430:聞きにくい話題
ゴブリンが消えたところで、イリス様から小休止が命ぜられる。
「あの……すいません」
八頭さんが手を上げた。
「あの……トイレってどうすればいいんでしょうか?」
おうふ。そう言われてみれば。
「基本はメンバーから見えない場所ですることになる。した後は、尻の近くでこの清浄の魔道具を使えば、綺麗にしてくれる。出したモノもはいつの間にか消えるので放置だな」
おうふ。さすが、「荒れ狂う鬼」。我が妻とはいえこういう部分でデリカシーを求めてはいけない。迷宮って倒した魔物の遺骸だけじゃないんだな。消えるの。
イリス様が八頭さんに渡したのは、手のひら大、通貨、コインよりは大きくて、コンパクトの様な平たい十角形以上の角がある石? だ。なんだかオシャレ。芸術的というか。魔術紋が描かれていて、中央に魔石を入れる様になっているのかな?
「それ、俺も欲しいんですけど……なんで、遠征とか行く前に教えてくれなかったんですか?」
「迷宮品で売っていないのと……迷宮でしか使えないからな。これは。ありふれているので……説明したと思っていたというか」
え? そうなの? なら……仕方ないか。王宮の宝物の中に……無かったよな。そういうレベル、ランクの迷宮品ってことか。
俺は収納があるからお尻拭き用の紙とか持ち歩いて問題無いと思ってたし。今では収納に携帯用のトイレ、なんなら仮設住宅も一つ入っているわけですけどね。
「ああ、申し訳ない、イリス様にちとアレなことを聞いてもいいだろうか? お試しで五人で来ていてよかった。君たち二人ならこの手の話をしても無駄に騒がないし」
良い意味でビジネスライクというか、主目的を優先してくれるタイプなのは判っている。二人が頷いた。
「イリス様。……生理の時もそれで乗り切れるんですか?」
この世界の女性にも生理は存在する。というか、生殖系のシステムはほぼ同じだと思う。俺の知る限り。
「ん? いや、まあ、キレイにするだけであればこれで事足りる。だがなぁ。汚れてしまったものはどうにもならなないからなぁ」
え? そうなの? その魔道具、どういう仕組みなんだろうか?
「えーと。昔ファランに説明された気もするが、確か、身体の汚れは楽に判別出来るが、物に付いた汚れは判別が難しいのでそれなら洗ってしまった方が良い……だったかな?」
うーん。きっと、ファランさんはそんな投げやりな返答はしていないと思うんですが、まあ、そうですか。この魔道具で洗濯機の代わりは難しいと。
「なので、迷宮に潜る前に薬を飲んで強制的に始めさせて終わらせてしまう」
「ん? あれ? そうなんですか?」
そんな話……これまで一切したこと無かったし、気にもしてなかったけど……。一応、俺も男とは言え大人ですから知識だけはあるので、生理用品が存在するのは知っていたし、紅武女子の環境を整える際に色々チラッと確認はした。
アレだ、小さい布をあてがった分厚いショーツ? が存在するのも知っている。サイズを含めて、紅武分を用意してもらったしね。
でも、薬は……知らなかったな。
「この薬は昔から使われていたもので、飲むと生理が来る。そして終わる。大抵半日あれば済むので便利だ。その日から七日~十二日後が子供が出来やすい日だ。そういう話はしていなかったな……そういえば。紅武とも」
「そうなんですか? それ、スゴイですね……」
紅武の二人も頷く。
快楽としての性行為が存在しない中で、同じ様な身体システムを持つこの世界の人が「良く絶滅しないな?」と疑問だったんだが……そうか……多分、これでタイミングをコントロールしてるんだろうな。無意識のうちに。それにしてもスゴイ薬だ。まあ、飲むと傷口が消える薬草なんて世界だもんな……。
「だから……身近な女性……イリス様やファランさんが生理で苦しんでいるという状況に遭遇しなかったのか……」
「ん?」
「いえ、昔、それなりに女性が多く働いている職場でスケジュールの管理をしていたので、その辺は凄く気がつく、気になる癖が付いていたと思うんですが……そういえば、この世界に来てからその手の事は全然考えて無かったな……と」
「大抵は、この薬を飲めば解決するからな。ただ、飲むのは月に一度だけだ。無駄に飲むと薬が効かなくなるのでダメだと伝わっている」
うん。まあ、それは薬全般に対して言えることなんですが。とはいえ、理に適っているし、俺が判らなくても仕方が無いか。
それこそ、モリヤ隊の誰を偵察に出すか……なんていう場合に、前の世界であれば……生理ローテション的な考え方で、頭の中にスケジュール帳を用意しておかないと、色々大変だった。なぜ頭の中か……というと、実際に手帳やアプリなんかに記載してしまうと、セクハラパワハラで訴えられて負ける可能性があるからだ。
現実問題として、その期間は身動きが取れない、起き上がれないなんていう人もいる。ちょっと体調が悪くなって、ちょっと効率が落ちる程度であれば……まあ、無理してもいいかと流せるが、重い人が無理をするのはどうにもいただけない。それこそ、仕事に影響が大きく現れる。前の世界でもその辺は考慮して上手いこと話をしてやっていたし、この世界でも同じ様なことをしなければいけなかった。
こちらの世界で……俺がモリヤ隊のみんなに頼んでいるのは、一歩間違えば命に関わる様な危険な仕事だ。なので、なおさらその手のことを考えないといけなかった……。反省しなければ。半日とはいえ、体調が悪くなる期間があるのであれば……危険な任務なら致命傷になる。
って、その辺をちゃんと教えてくれなかった、忠告がなかったということは、そんなのは当たり前なのかもしれないけど。
「つまり、この世界の女性は……薬があれば何日も体調不良で悩まされることは無いんですね?」
「無いな」
「なのに……なんで、ここまで女性蔑視というか、働く上で女性が劣っているとされていたりするんですかね?」
「その辺は知らん。昔から?」
はい。ええ。その辺はオーベさんや、ファランさんに聞くことにします。
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