0428:マッパー

「迷宮を知らぬ者(モリヤ)が、偉そうに計画を立てるのはいかがなものか?(意訳)」


(私の大好きな迷宮攻略を進めているのに、その計画に混ぜてもらえていないのはズルイ! 狡すぎる!)


 というイリス様のごもっともな意見を拝聴し。まずは。俺とイリス様に紅武から三人を加えてパーティを組み、迷宮を探索することになった。


「序盤はなっ! 敵がそれほど強く無いからな。走り抜けてもいいかもな! ボス戦くらいか。気をつけるのは!」


 某領主様が……非常にやる気満々だ……。どことなく元気で弾んでいるし。声が。張りが。


「罠も二十階層くらいからだな。普通はっ!」


「人数制限は三十階層くらいか! くらいかな!」


「次の階層へ移動出来ない時は、階段で待ちだ! 楽しいな!」


 ……遠足気分ってヤツか。子どもが……遠足の一週間前くらいから、遠足のことを話始める感じに……酷く似ている。そんなに好きか。

 

 うん、イリス様は~過去に色々あったらしくて、普段余り喜怒哀楽をキチンと表現しないからな。こうして喜びの気持ちを前面に打ち出しているのはやっぱり可愛いかも。


「えーと、ということで、先行して試行しようと思うんですが。イリス様以外は能力は高くても迷宮素人……というのはどうなんでしょうか?」


「ああ、うん……気持ちは判る」


 ファランさん?


「イリスは……本当に……昔から……迷宮が好きでな……」


 しっ知ってますけど……。え?


「あれな。もう、潜りたくて仕方なくて、かなりいい加減になってきてるな」


 ……なんかそんな気はしてましたけど……。


「子どもかっ!」


「ああ。普段のあいつは「何か欠けているのか?」ってくらい……冷淡というか、落ち着いているにも関わらず、こと迷宮に関わることをしていると、最終的に迷宮に入って暴れるまで落ち着かん……今回もいつの間にか気持ちが盛り上がっていて……止まらなくなってるな。既に」


 子どもかっ! マジで。


「じゃあ、チェックはしてもらう感じにして、こちらから不安要素を提案していった方がいいですかね?」


「おお……さすがだな……それだ。ヤツの意見を聞いていくのではなく、間違いが無いか聞くだけにした方がいいな。確かに」


 ファランさんも大概ですよね……。


 とりあえず、迷宮内での活動に必要なモノを見極めてみないと判らないかもしれないが、俺の収納はいざという時まで使わない方向で用意することになった。


「地図作成って迷宮探索中にやるんですよね?」


「ああ」


「大変じゃ無いですか?」


「なので、結構パーティ内で押しつけあいすることになるな。特に……イリスはそういうのは嫌いでな……一度、強引にやらせたら、何が何だか良く判らない模様を描いたので、それ以来やらせてない。当時はこんな綺麗な紙は無かったし、いや、そもそも紙が無かったし、皮紙は雑皮紙でも高かったのでもったいないしな」


 まあ、そうでしょう。ダンジョンポイント(DP)で交換する原稿用紙やコピー紙、トイレットペーパーは、現在、俺管轄の限定された場でしか使用していない。輸出も制限している。元々、迷宮産っていうのは言ってたので、在庫切れとさせてもらった。

 一時期多めに王宮中心に出荷してみたけど、あまりDPに頼り切るのはヤバいなと思って、制限したのだ。


 オベニスでも、役所仕事なんかで日常使いしてるけど、普段使いの紙は地下職人街で生産されるモノに移行している。


 地下街を始め、一般に流通している紙製品は、製紙工場で作られている。俺のうろ覚え知識……特定の木(繊維質を多く含むヤツ)を細かくして、糊を混ぜて、伸ばして、漂白して乾かすぐらいの知識を与えて、職人さんたちに試行錯誤してもらって作られている。


 現状、藁半紙的な薄茶色の紙と、ガサガサのちり紙が完成し、お安く提供されている。


 まあ、その辺は良いとして。


 イリス様のアピールがあまりに大きい。ビニール傘を振り回すかの様に両手剣を振り回してますし。今も。体から離さないように素振りをするという技術がある。ヌルヌルと動かすというのか。振りかぶるときも自分の体に密着させて~とか。もうそれが止まらない。


「地図を綺麗に描ける……あ。ミスハルですよね。絵を描くの上手いんじゃ無いんでしたっけ」


「そうだな……確かに、魔術紋の細部まで記憶して、さらにそれを書き写す事の出来る能力はとんでもないな」


「それを迷宮の地図描きに生かせませんか?」


「生かせるかも……しれんな」


 案の定、ミスハルに頼んでみると、これまでやったことが無いというだけで、出来るんじゃないか? とのことだった。それこそ、まずはオベニスの街の地図を描いてもらう。


 結論としてあっという間に見事な鳥瞰図、俯瞰図が仕上がって来た。


「ここまですごい丁寧じゃ無くてもいいから、ある程度で。時間優先で描ける?」


「はい」


 結論としてミスハルよりもこの手のことが上手い人がいなかった。迷宮探索に行かせられるメンバー(妻&紅武)の中で。


 記憶力がスゴイのと……実際に見ているかの様な配置、距離。うむ。精密描写とか模写とか地図作成なんてスキルを持っていてもおかしく無いよな。この出来映え。


「よし。とりあえず、お試し挑戦は、イリス様、俺、ミスハル。あとは……宇城さんと八頭さんで行きますか。三人じゃなくて二人でいいですよね。単純に代表なわけですし」


 オーベさんに作業補助の手伝いを休んでいいかと尋ねると「迷宮優先で構わん」と快諾してくれた。


 我々、第一次試行パーティはこうして、迷宮に跳ぶことになったのだった。


 







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