0425:騎馬民族の行方
「彼らがこのホムラ森域のさらに東にあるメルゲィルズの森域……ホムラよりも大きな森域で、森都もあり、ノルドも多く住んでいました。そこから逃げのび、なんとかこの森に辿り着いて、状況を伝えてくれた者達です」
ここに着いたのは数十日前だということだが、未だ起き上がれぬ重傷を負った五人のノルド。その他にも腕を失った者等数名がいるそうだ。
「彼は西メルゲィルズ集落のヨハンド。傷も浅く、話も普通に出来ます」
その中から一人、ノルドが前に出てきた。なぜヒームが? という顔をしている。
「ヨハンド。この方はヒームだが、北のメールミア王国、オベニスという都市の使者様だ。オベニスの者はお前も既に会っただろう?」
「ああ、ハイノルドの方、そしてその夫君に直接仕えているとかいう」
納得がいったのか、頭を下げた。こちらも下げる。異端なのは私の方なのだから。
「申し訳ない。私は癒しの術は使えぬが……似たようなことは出来る。多分、完全には癒えないが……回復の術を使用してもいいだろうか?」
「それはありがたい。すまない」
中空に魔術紋を描く。
「癒しの光よ……生命力が溢れ迸る光よ。降り注ぎ纏え。我は癒す者を示す者なり。異界の神は舞い降りん。既に契約は為されている。
じわりと影が光る。明確な光では無いが、異界の光なのだ。この世界とは効果が、表現が違うのだろう。
「おお……顔色が……」
それまで重傷で血の気の引いた者の顔色が、若干改善した。劇的な……肉体的な修復ではないものの、これを使うと癒しの術の効果が高まる。
「それで……何があったか教えてもらえないだろうか?」
「あ、ああ。すまん。恩には恩を。差し出せるものが言葉しか無くてすまない」
「その言葉が一番の価値がある。聞かせてくれ」
ヨハンドが頷いた。
彼らの住んでいた森域、メルゲィルズの森域はかなり広く、このホムラの森域の三倍くらいはある……とのことだった。まあ、その単位が良く判らないが、かなり大きいはずだ。で、その森域には八の集落があり、中心に森都があったという。森都については、ノルドの極秘案件なのだが、既に滅んだのか口にすることが出来るのだという。
「つまり、これを口に出来ているという事は、我が森は……壊されてしまったという事だ」
ああ。オーベ師から聞いたことがある。ハイノルドの術……か。
「狩人は森都だけで三百。八つの集落……一つで大体百。つまり、千人以上の狩人がいたのだ。我が森には」
「にも関わらず?」
「ああ……最初は……奢りもあったと思う。森で我らノルドに敵う者はいない、と。だが。一つ目の集落が墜ち、燃やされた時点で、我々は冷静に侵略者を潰すことに専念した。はずだった」
「どんな風に?」
「ジェナンは……森の結界をものともしなかった。ヤツラはいつの間にかいて、いつの間にか襲いかかってくる。集団で、だ」
「そんなことが」
有り得るのか? ノルドの森での強さは格別だ。
「更に、森の外では馬を自分の手足のように扱う。我が森の東にあったモダラというヒームの国はたった十日で滅ぼされた」
なんと。
「つまりは。ジェナンという国は領土を広げ続けているということか」
「あ、いや……それが……」
「ん?」
「ジェナンは蹂躙し殺し、奪い。燃やす。それだけだ」
「ん?」
何だと? どういうことだ?
「ジェナンの兵は治めない。征服しない。全員が攻めて、奪い、そして燃やして去って行く」
「……」
「ヤツラは略奪だけが目的なのだ……」
支配は……しないのか。というか、それで何がしたい? 破壊が目的……? ということなのだろうか?
「略奪した物資は……どこに?」
「後方に運ばれているというだが……場所は良く判らん。我々はこの危機を周辺の森域に伝えるために早々に離脱せよと命じられたのだ……そもそも、彼らの本拠地というか、国があるのかすら良く判らない。あっという間にやられてしまったのでな……我らが調査する時間すら無いとは……」
それは仕方ない。というか、ということは……。
「ということは、ここへ……攻め込む可能性もあるのでは?」
「ああ、それは……大丈夫のようです。このホムラの森域を東へ出るとモルドア諸王国があり、その東がメルゲィルズ森域となります。メルゲィルズの集落に火を付けたジェナンは、森全体を焼くことは出来なかった様で。つまり、森を馬で抜ける事が出来なかったと。そのため……北へ向かったという報告が最近届きました。これも逃げ落ちてきて、イーズの森域にいる知り合いの元へ向かったノルドの証言なのですが。実は、一時期は臨戦態勢を取っていまして。東ホムラの集落や森都に狩人が集められていたのです。逆に女子供や負傷者は戦場から一番遠くなるであろうということで、ここ、西ホムラに移動してきていました。今は、その警戒も解けたので戻れる者は自分の集落に戻ったというわけです」
というか、どちらにせよ……森を安易に攻略出来る大国が……北回りで西へ向かっているのは間違いない。これは……この時点で報告に帰るのが良いか。
もしも……この後ジェナンがメールミアに近づくとしたら、もっと北……セズヤ王国辺りから東方面から攻め込まれることになるハズだ。
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