0422:迷宮探索用主力武器

「すごーい。この剣……希望ぴったり……ありがとうございます!」


「さすが、ドワーじゃなくて、ガギル族! 飾りとかスゴイカッコイイですね~」


 迷宮探索用装備をあっという間に仕上げてきたドガルが、紅武女子に褒められていた。正直、使用者の希望を聞いて、体格やその力に合わせた専用の武器を拵えるには剣一本でも最低十日は掛かる。


 現在、紅武女子の中で迷宮にチャレンジすると表明している「戦える」者は十九名。つまり、メイン武器が十九は必要となるのだ。しかも、彼女達全員が魔力を攻撃力に転換することが、自然に行える戦士のため、使用している金属は当然ミスリルである。


 ヒームの鍛冶士であれば一本でも数十日かかる総ミスリル製の武器。それを十九本、たかだか数日で仕上げる。尋常では無いスピードだった。が。彼女達はそれがどんなにおかしいことか理解していない。結果が「ありがとー」なんていう、超絶軽いお礼の言葉になるというわけだ。


 ちなみに、ドガルが妙に嬉しそうなのもこちらの世界の常識的にはあり得ない。


 ちなみにそれを見ているイリスからも何かツッコミが入ることはない。なぜなら、彼女も、自分好みの武器を思いついた端から、僅か一日~数日程度で作ってもらっているからである。


 それが当たり前になってしまっているので、感謝はしていても、おかしいなどとは思えないのだ。


「とりあえず、その武器を体に馴染ませるために、素振りはそれで行うように。ドガル。次は時間が掛かってもいいから、予備も数本ずつ用意しておいてくれ」


「は。既に作り始めています」


「さすがだな」


 だから、オーダーメイドのミスリル製の武器を数本×人数分量産っていう……それはもの凄くおかしい……のだが、現在ここには誰も突っ込む者がいない。


「あ。ドガル。防具はどうなってるか聞いてるか?」


「はい。お館様から、基本、ミスリル製のチェインメイルにして、音と動きを抑えた方が良いと言うことでしたので~そこにプレートで急所を庇おうかと。現在、組み上げ中です。こちらはもう少々時間がかかります。さらに一度着ていただいて、その後でまた、調整をしないとですから……」


「ああ、それは仕方ないな。防具が時間がかかるのはどうにもならん。篭手、肩当、胸当、腹当、佩楯、脛当。特に脚と脛、足回りはキチンとしたものでないとな」


「しかし、イリス様。ご注文通り、下半身のみ重装備……金属板状鎧で固める形で良いのでしょうか?」


「いくらミスリルで軽いと言っても、全身固めるのは色々と戦い方に不自由が生じる。それならチェインメイルに重要な部分を守る防護板を取り付ける方が動きやすいからな」


「はっ」


「ただ、足は……彼女達は素早さを生かした戦いをする者が多い。魔物の中にはまず、足元を狙う攻撃をするヤツも多いからな。なので重装備にせざるを得ないのだが、重くなると素早さを失う。その点、今回は黒鉄ではなく総ミスリルで組み上げられるからな。多少の罠を踏んでも、踏み抜けるだろ」


「さすがイリス様。それはそうですね。了解致しました」


 一般的にガギルは鍛冶に秀でている……と言われているが、実は、革や骨、貴金属関係も扱える。それどころか、秘匿されていただけで、物作りに関する全ての職人技を極めることができる。それこそ知識として伝えられている情報も多いし、さらに言えば、革を加工する技術も金属関係と同じように高い。


 森で暮らしている場合、ノルドとある程度住み分けることが必要になる。そのため、木工や革はノルドの職人に任せる……というやり方が慣習になっているだけなのだ。


 弓に関しても木製の弓はノルドの職人の方が技量が上なこともあるが、ミスリルなどの弓に関してはガギルの方が達者であるといえよう。


 さらに高位の魔物等の高級革の扱いは、生粋の職人であるガギルの方が上手かったりもする。


 オベニスに来てその辺を遠慮する必要が無くなったため、鉱山階層の工房では、鍛冶、木工、革、骨、裁縫といった、ありとあらゆる職人仕事が動き始めていた。これによって、さらに高度な武器防具が生み出されていくことになる。


「これは……違いますね……」


 薙刀部の三人に渡されたのは本身の薙刀である。宇城は実家に古美術品としてでなく、毎日振っていたので当り前になっていたが、三野瀬、千野の二人は……これが初めてのマイ本身である。


 改めてみると、長い柄の先に小さな日本刀、ククリナイフ形状の刃が付いている様なモノなのだ。これは……扱いを間違えると、とんでもないものを斬ってしまいそうだ……と二人とも思っていた。


 さらに言うと。刀身から柄までが、総ミスリル製で一体化している。これはもう、ミスリルの無駄使いというのと、「戦乙女」としてのポテンシャルが高いため、柄の部分を木などの軽い素材にしなくても良いことからなのだが……魔力を通しやすいというのも関係している。


「会長、思ったよりも刀刃が長くて大きいです」


「もう少し……鎬あたりに重さがあった方がいいです」


「判りました。その辺の調節は言ってもらえれば」


「……それにしてもこれで……迷宮で戦えるのでしょうか?」


「大丈夫だと思うが……うーん、まあ、確かに狭めの通路とかだと取り回し辛いか。ドガル。これのもう少し柄が短いモノも用意してもらえるか? 実際に使ってみて選んだ方がいいだろう」


「はっ。かしこまりました」


 ……と。領主様は簡単に言い放ったが。ミスリル製の武器、それこそ、この薙刀レベルの棒状武器ポールウェポンを新規で作る場合、大きめの屋敷の建造費とそう大して変わらない金額が必要になる。最低でもだ。


 それこそ、ガギルと連絡を取ることが難しい状況で競売などで現物が出品されると、値が高騰し、手の付けられない価格となった実例もある。


 ミスリル鉱石がふんだんにあり、さらにガギルの集落が二つ半、それだけの住人が定住しているからこそ出来る奇跡と言ってもいいのだ。


 が。一番スゴイのは、それを本気で何も気にしていない、オベニス領主と女子高校生なのだが。なのだが。


 ここにはツッコミ役が存在しなかった。









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