0413:冒険者

「街を襲う不届き者め! 私が相手だ!」


 出てきたのは……ヒームの騎士……じゃないな。明らかに軽装なので良く判らないが、冒険者……か? なんで名乗りを挙げてんだろう。


「我が主……ヒームの相手は任せる。私はノルドを断罪せねばならんのでな」


「判りました。というか、余計な部分は引き取りますよ」


「頼む。これほど。これほど悲しいことはない」


「ミスハル。オーベさんに付いていって。偉大なるハイノルドが一人っていうのはね。お付きくらいいないとさ」


「はいっ」


 オーベさんは……無人の野を行くが如く、歩を進めた。背後に付き従うのはミスハル。小間使い、メイドとしての修練もバッチリ積んでいる彼女は、こういうときの従者役の作法などはバッチリなのだ。


 彼女達の周囲をオーベさんの操る風が舞っている。強く。弱く。尽く……行く手の障害物を吹き飛ばしていく。多分、あれらの建物の中には軍人……いや、ノルドだから狩人か? 戦う者ではない……一般ノルドも多くいるだろうし、子どももいるかもしれない。


 だが。


 天災は皆に等しく手加減をしない。彼らは……ノルドの王族、いや、神に近い存在であるハイノルドに武器を向けた。それがどんな命令であったか知らないが……既にこの集落にいるというだけで、断罪の対象なのだ。


 所謂、神罰。天罰である。


「「死なず」のアーリアス! 貴様らの様な悪鬼に、容赦する剣は無い!」


アーリアス

種族:ヒーム

腕力がなんとなく高め。


スキル:

剣術、癒術


 さっき叫んでたヤツだ。まあ、こんなか。正直……うん。これくらいならもう……ね。うん。彼がオーベさんを追おうとしたので、その行く手を塞ぐように立ちはだかる。これくらいの高速移動ならね。俺にも出来るんだよね。


 突然現れた俺にビックリしたのか、走り出した足が止まる。まあ、良い判断だ。そのまま行こうとしたら容赦なく首が飛んでいた。


「君の勘の良さに気が向いたので、一つ良い話をしてあげよう。君は我々のことを悪鬼と呼んだ。それは何故かな?」


「無辜の民を傷付ける。それが悪鬼以外なんと呼ぼうかっ!」


 盾を前に片手剣を構える。盾の影に隠した剣は、その出所が見えなくなる。うん、まあ、正しいね。強者としてそれなりの強さであるのは確かだし。


「では問おう。この集落から出荷されているジガラス草……これには激しい習慣性と常習性、使い続ければ、さらにそれを止められなくなり常に吸い続けたくなる依存症を発生する。これによって、何もかもが怠惰になり、生きるのをやめ、いつの間にか死ぬ者が多く出ているハズだ。それは無辜だろうが邪悪だろうがお構いなしに浸透していく。これは何だと思う?」


「!」


「無辜の民をたかが草の中毒者に仕立て上げ、暴利を貪っている者は悪鬼とは言わないのかな?」


「……」


 まあ、図星というか、既にそういう依存症が発症している者が多くいるのだろう。


「そ、それでも! オレはこの西ノルドを守るクエストを受けた……その約束を守る!」


 ああ、やっぱり冒険者か。うん、まあ、そうだね。末端の冒険者が自分の判断でクエストの善悪を判断出来ないよね。というか、もしもオレが本当の悪党だったら、それに説得されてクエスト放棄……なんてあり得ないからね。


「うりぁーーーー!」


 一閃。軌道を見せない剣の振り抜きの速さは素晴らしかった。だが。足りない。俺に斬り付けるにはまだまだ足りない。というか、俺が普段斬り付けられてる人たちが異常なんだな。やっぱり。


 ギリギリで避ける。


 ザザッ!


 その異常さにビックリしたのか……一瞬で後ずさった。うんうん、その辺を感じるって大事だよね。

  

「事実を受け容れられず、考えることを止める。愚かって言うんだ。それを」


 オーベさんが風にこだわっていたように。では。俺も。


「風裂」


 浮かび上がる……風の刃。手加減しているので今は二十くらい……ちゃんと緑色に色付けしてある。


「なっ! 幾つ!」


 指を冒険者の彼に向ける。一斉に囲む風の刃。それにしても……よほど彼を信頼しているのか、いつまで経っても増援は表れなかった。いや、来られない……が正解か。ここまで来たらもう、逃げるが勝ちだよね。多分。


「ぐあああああ!」


 うーん。ダメだなぁ。折角色付けして判りやすくした風の刃なのに。それくらいの数を避けられないなんて。本気でやるときは、さっきの緑色の刃の裏側に、透明の風の刃を追わせて罠を仕掛けるのに。


ドス……


 肉が落ちる。当たったのは右足首か。見事に斜めに切断され、既に転げてしまっている。起き上がれ……無いか。


 胴から上は軽装とは言え、それなりのスケイルメイルっぽいのを身に付けているのにね。本当はまずは、末端からだよね。特に足って大事。


 普通の……旅人のブーツ的な革製のブーツじゃ……ちょっと弱いかなぁ。




 


 


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