0398:ミルベニ調査旅①

 このオベニスという街は……特殊すぎた。自分の知らない何かがある。根本的に何から何まで新しい。


 アルメニアで投獄される前は様々な学校で学び、さらにオーベ師にも師事し、最終的にはその知識を生かす為に、冒険者として各国を巡った。


 当然、その国のシステムや状況、民の声などをリアルに聞くことになる。普通の人よりも見聞量は格段に多いハズだ。にも関わらず、一切観たことも聞いたことも無いモノが多すぎる。そう。一つや二つなら違和感を感じないかもしれない。だが、数えただけでも数十の何かが存在している。いや、その構築される理論から数えれば、数百、数千の見知らぬ知恵が、議論され尽くし、厳選された知識の数々が……この城砦都市には秘められている。


 まあ、普通に訪れた、くらいじゃ気付けないだろう。判るのは、この都市に居住することになってからだ。この都市が如何に優れているかがジワジワと身に染みこんでくる。何よりもそういう根本的な凄さを隠すかのように、飯が旨いとか、税金が安いとか、鉄道とか、役所の人間が異常に丁寧だとか……そういう表面的な部分に誤魔かされてしまう。


 さらに賞賛すべきはシステムの方だ。戸籍というヤツと税。そしてその税の、民への還元の仕方。重税にならないようにするバランス。都市の土地の買い上げ、癒療院の充実、領営住宅。そしてその家賃の支払い方……もう、なんていうか、なんでこんな発想の積み重ねになるのかすら予想出来ない。賢者と言われている者、何人で何千年かければ……ここに到達出来るのか?


 元にあるのは……単純なのだ。このオベニス領に誰が住んでいるのかハッキリさせたという事だけだ。それが全ての始まりであり、全ての元になっている。大切なのは調査ではない。それの情報を維持し、最新のモノに常に差し替えていくシステムだ。それには、ここに住んでいる住民の協力、さらに意識の改革が必要になる。


 一般的に民……というのは正直、学がない。当然文字の読み書きも不十分な者が多い。

 だが、ここオベニスではそれでは通用しない。この領では各街に無料の学校が多数存在する。その費用も領主が負担している。大人から子どもまで学べる環境それだけでも素晴らしい。ただ、辛辣な者からは何をムダな事を……と思うだろう。


 が。その学校で使用する教材となっているのが、その手の税金のシステムや納税の意味、如何に領主側が儲けていないか? を証明する、通常であれば極秘資料であればどうだろう? その学校で文字の読み書きが出来るようになれば、その文章を読めるようになり、日々の生活で「自分たちが納めた税金がどのように使用されるのか」が判る様になる。


 当初の学生は子供が主だった様だ。当然だ。仕事を持つ大人、親は学校に行く余裕など無い。が。子供に無知を指摘される親が続出。結果、親の要望を叶え、授業に夜の部が生まれ、今に至るという。

 驚愕すべきはそのスピードだ。親も仕事が終わった後に勉強したいという声が領役場に届いてから、僅か数日で開始されたそうだ。


 オベニス領の行政に加わっている者であれば誰もが知っている。その決定が、領主様の独断即決ではなく、総務部長であるモリヤ様の決定であることを。そしてあの方の判断だからこそ、誰も異論を唱えないことを。


 傷も完治。体調もすっかり戻り、しばらくオベニスについて自分なりに調べ、驚愕を繰り返していた所に、初めて命令を受けた。


 ここオベニス、及びメールミア王国の東南に位置する各国の調査、及び、スパイス……香辛料の継続入手が任務となる。あくまで調査なので、冒険者として旅をして戻ってくることになる。


 正直……あまりにたわいない仕事で少々ビックリしたが……


「我が主はお前に、行商人との渡りを付けろとご所望じゃな。行商人を連れてきて、さらに定期便とさせられれば最上じゃろう。この世界で遠方からの行商は危険を伴う。さらにそれほどの遠方となれば……とんでもない力量を持つ護衛が必要になる。継続してそれを行うのは大いなる困難を伴う。要望を叶えるのはかなり難しそうだ。……つまり、お前でなければ出来ない調査を求めておるよ。自分なりに調べて見るんだね」


 オーベ師にはそう言われた。うーん。難しい。だが、面白い。これだけ進んだ都市システムを構築した方に、自分なりの報告書をまとめて情報をお伝えする。むむむ。


 とりあえず、旅装を整えて、旅立つことにした。供の者や協力者を連れて……と薦められたが、一人の方が動ける自信がある。情報収集であれば確実に一人の方が成功率が上がる。


 オベニスでは私の顔を知る者も少ない。


 昔の様にさりげなく、普通に……旅に出た。







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