0397:自然に複合

「ぎっきさ、きさ……」


 おうおう。やっぱあの防護魔術、もの凄い強度だな……俺の生み出すどんな壁よりも優秀かも。


 何で俺が一人でここに立ってると思ってるんだよ。お前のその術を……潰しに来たに決まってんだろうが……。当然、俺には浄化に祝福が重ね掛けして、さらに物理的な防御術、能力付加術、できる限りの強化は行っている。


ガガガガガガガガガガガガダガガガがガガガガガガ!


 そして……今。凄まじい轟音を響かせて、絶え間なく降り注いでいるのは……純粋な物理攻撃だ。土術で生み出した瓦礫を風の術で飛ばして集めて、バガンの王に集中して放っている。とんでもない量の礫が全方位から自分に向かって飛んでくると思えば良いだろう。


「ああああああ”!」


 おっ。今のが範囲魔術かな? 精神というか、神経の一部を喰らうっていう。首の後ろがチリッとした。が。それ以上でもそれ以下でも無い。よし。防御完了。何の問題も無い。この手の外傷の無い攻撃って判りにくいよな。ゲームみたいに「なになには、いま、なになにした」みたいな表示があれば便利なのに。

 

 多分……風の術だけで斬り刻もうと思っていたのなら、分解だかなんだかの術で消されてしまっていたかもしれない。当然、土の術のみであれば同じ様に消されていただろう。だが、いま繰り出しているのは、土の術と雷の術? で精製した謎の魔法金属塊? それを小さく産みだして、そのまま、強烈な風でヤツの身体目掛けて弾き飛ばす。


 一方向から強烈な風が吹き付ければ逆の方向に飛ばされてしまうだろうが、現在ヤツを中心に全方位から風を送っている。ぶつかり合った風は上へ抜ける形で逃がしている。竜巻の様にも出来そうだが、それはそれでまた次の機会だ。


 瞬時に数千の謎金属の礫が中空に出現し、それが強風で飛ばされていく。ぶっちゃけ、そんなことを念には念を入れて五分以上繰り出してみた。念には念を入れませんと。おほほほほほ。


「すさま……じいな……」


 術の制御に集中していたからか、オーベさんが近づいていたことに気付かなかった。いやいやいやいや、貴方のあの黒い靄。あれも相当なモノでしたよ?


「単純な術ですよ?」


「同時に幾つもの術を展開しておいて単純などと言うな。二つ同時に発動出来るだけで、とんでも無い才能なのだぞ? 自らを貶める事は、一生を費やして切磋琢磨している者の汗と涙を馬鹿にすることになる。さらに言えば。この術は魔術にして物理じゃ。つまり、魔力の発動を感じて、術に対して備えていた場合は、完全に逆を突かれることになる。それは取り返しがつかない判断ミスだ」


「はい」


 もあもわと上がっていた粉塵や埃を、これまた風の魔術で強制的に下へ押しつける。バガンの王だった者が……肉塊と……黒い染みになっていた。これでまだ生きているというのであれば、それはもう、俺達の手の届く相手じゃ無いだろう。


 残るは周囲に広がっていた戦士共……約20程度か。


(お願いね)


(了解いたしました、お館様)


 情報収集で飛び回ってたアリエリが合流している。ミアリアと残りの雑魚の処分を任せる。

 まあ、いくら薬入りでも、下半身に何本か石槍が突き刺さったままなら、彼女たちの敵じゃないだろう。


 さらに、捕らえられている女性を保護しないといけないだろう。こういう場合……うーん。まあ、まずは聞いてみないとか。


 オーベさんには王の死亡確認と……肉塊の処理を頼んだ。あそこからの復活はないだろうが、念には念を入れたいし、オーベさん自身も持ち帰って呪いの研究に使えないか、試してみたいという。


 謎の能力覚醒麻薬? っぽい薬、「ジカ」で強化されたバガンの戦士は……確かにおかしいレベルで強い。ミアリアがアリエリと連携を取って戦っている。確実に行こうとしたらそれくらいしないと無理なのだ。

 

 残り十名程度……となった所で、港から船が離れた。逃げる様だ。……船が二艘。スゴイ早さで乗り込んでいく。……二十か。あの薬……そういう判断はできるのか。理性を失っているわけじゃない。ただ単に痛覚を切り離すだけか。


(いかがしますか?)


(こっちは被害にあった女性を回収しないといけない。そっちが先だよね……。なので逃げるなら無視で)


 女性は……全員……死んだ目になっていた。傷は全部治した。治したが……動こうとする者がいない。そうなるんだねぇ……襲われる文化の無い世界でも……結果的に。違和感というか、触られただけで嫌悪感を感じるんだ。そういうことをされれば凄まじい衝撃だろうからなぁ……。どんな悪人でもするヤツがいなかったわけで。


 その数、十一名。とりあえず、浮遊馬車を出して乗せる。


(オベニスに連れて行くしか……無いだろうね)


(はい)


 数人、自我を取り戻した人に話を聞くと、もう、故郷には戻れないということだった。多分、全員そうなると……。まあ、そうか。この世界は男尊女卑甚だしい。文字通り傷物となってしまった女性の行く末は……暗いものしか予想出来ない。


 廃墟化している街をそのまま放置して。俺達も帰路に着いた。






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