0394:反省会

「はい。反省会です。何が悪かったでしょう?」


 未だむくれている。もー。


「イリス様? 今度、美味しいの作ったら、最初にファランさんとか、オーベさんにあげちゃいますよ?」


「ごめんなさい」


「謝らなくていいです。何が悪かったでしょう?」


 首を傾げる。


「なかなか撤退しなかった」


「それもあります」


「……とにかく殴ったから」


「それは普通。イリス様の戦い方に口は出しませんよ」


「言うことを聞かなかった」


「説明しましょうか」


「うん!」


 領主は「うん!」とか言いません。それも反省です。


「まず初戦。撤退した=負けたではありません。正直、バガンの王があそこまでヤバイと思いませんでした。なので、中途半端な情報でイリス様と、モリヤ隊三人に任してしまった俺にも責任がある。逆に意思を失った三人を「担いで」あいつから「即脱出」出来たのはイリス様でしか不可能でした。なので間違っていません。一番最初の作戦、こちらの油断もありましたが、もしも、一人でも自分の妻を失っていたらと思うと、自分にも過信がありました。軍師として申し訳ありません」


「あ、あ、いや……」


「その上で。はい。二度目の対戦。どこが悪かったでしょう?」


「……敵を舐めていた?」


「疑問形なのが減点ですがさすがです。正解です。というか、イリス様、最近、苦戦してませんでしたからね。別に自分が強いから増長するタイプでは無いですけど、ちょっと忘れちゃってたんじゃないですか? 未知の敵との戦い方」


「……そうかもしれない」


「三つ首竜との戦いの時。覚悟完了で向かったと思うんですが、事前に調査はしませんでしたか?」


「した……ファランが文献も調べてくれた」


「ですよね。というか、まあ、それが普通です。幾ら一見簡単な依頼でも、未知の敵、未知の魔物と相対する時は?」


「事前調査をキチンと行う」


「はい、大正解です。足りませんでしたね?」


「うん……」


「貴方の指示があれば、最初から確実に事前調査は行われていたハズです。それだけの権力と……責任があります」


「うん」


「反省して、今後は適切な指揮をお願いしますね?」


「……そういうのは……モリヤが全部してくれると思ってた」


「ええ、ええ。そうですね。基本的にはそうしましょう。その手の事があまりお好きじゃ無いのも判ってますし。ただ。それに慣れて当たり前になってはいけません。命のやり取りなのですから。もしも。自分が死んだら、どうしますか?」


 え? という顔。


「やだ……」


「ええ、もしもです。でも、出張でどこかの国に行かないとだったり、自分と違う戦場で戦わなければだったりする可能性は多いにあります」


「うん……すまん」


「いえ、謝らずに。ということで、あいつにイリス様は、とにかく相性が悪いという事が判明しました。あ。でも、血を流してましたよね? あれは?」


「んーなんか分厚い盾がある気がしたから、その向こう側、中身に届けと思って突いた。多分、んーぱっ! っていう感じ。力が溜まって、そこからスパっ! っていう突きの流れで引き出せる」


「ほ、ほほう……」


 多分、アレ、あいつの絶対防御だよな……あそこまで自信満々という事は信頼してるっていうことだろうし……。これまで貫かれた事が無いレベルだろうな。


「アレ、いつでも繰り出せますか?」


 ……ん……と。首を横に振るイリス様。


「なら、それを特訓しながら迷宮潜ってきてください。「戦乙女」たちの為にも、さっさと浅い階を踏破しないとですし」


「え、でも、あいつは」


「現在、アリエリが残って調査中です。しばらくすれば詳細が手に入るでしょう。アイツらちょっと不気味ですし。バガンの王だけじゃなくて、戦士も薬を飲むとヤバイ感じでしたからね。最低でもある程度は潰さないと」


「……」


「妻の仇は夫が取ってもいいでしょう? ご不満ですか? 領主様」


「……ずるい」


「感謝しないといけませんよ。あんなふざけた力、戦場でいきなり使われてたら、イリス様を失うことになっていたかもしれない。まあ、最低でも妻の何人かは失っていたでしょうね……」


 ここは、セズヤ王国の旧隠れ里のそば。オベニス領の輸出物資搬出口の遺跡脇に作った、小さな砦だ。ここから幾つかの馬車を偽装して、セズヤ国内へモノを運んでいる。当初こそ、麦などの穀物、野菜などを輸入のためかさばっていたが、現在では主にオベニスからの魔石を輸出することが中心で、大量の馬車は必要が無くなっている。


 言う事を聞かせたイリス様は凄まじい速さで俺を担ぎ、素直にここまで戻ってきていた。

 まあ、俺もそれなりに……有り余る魔力を使い続けて「はやかけ」を掛け続けられる様になっているけど、瞬間的な速さは……圧倒的で敵わない。


 今後はもう、担がれることは……緊急時を除いて無いと思ってたのに。ああ、アレか、浮遊馬車の二人乗り仕様、小さい版があるか。アレに俺が乗れば良いんだな。で。イリス様に引っ張ってもらうと。


 とりあえず、迎えが来たので水路を使ってイリス様はオベニスに帰した。駄々はこねたけど。


「モリヤ、では此の後の処理を命じる。上手く治めてみせよ」


「はっ」


 最終的にはそうやって命令させることで納得させた。んー。適材適所で人を使うって事もちゃんと考えられるようになってもらわないと。







-----------------------

おすすめレビューに★を三ついただけるのが活力になります!

ありがとうございます!

さらに、おすすめレビューにお薦めの言葉、知らない誰かが本作を読みたくなる言葉を記入して下さると! 編集者目線で! マネージャー目線で! 

この小説が売れるかどうかは貴方の言葉にかかっていると思って!

やる気ゲージが上がります。お願いします!


■宣伝です。原作を担当させていただいております。

無料です。よろしくお願い致します。


[勇者妻は18才 第1話] | [ゆとり]

#Kindleインディーズマンガ で公開しました。

Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒

「直リンしちゃいけないんですってググってね」


そして、自分は手伝った程度ですが、こちらも。


[メロメロな彼女 第1話] | [ゆとり]

#Kindleインディーズマンガ で公開しました。

Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒

「直リンしちゃいけないんですってぐぐってね


単行本一巻、二巻もよろしくお願いします。

ブースで売ってます。

「直リンしちゃいけないんですってぐぐってね」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る