0392:二回目

 遙か彼方に見えるのがバガントリニアだそうだ。これだけ距離が空いていると……さすがにうっすらとしか見えない。


「本当に一人でやるんですか?」


「ああ」


 あーもう。決めちゃってる顔だなぁ……。


「正直、俺の術でこの辺から……アリエリの千里眼で中継してもらって、ピンポイントで仕留めるのが一番楽ですよ?」


「その場合でも結局は囚われた女達を助けに行くことになる。ならば、同じ事だ」


「うーん、ただ単にリベンジしたいんですね……」


「うん」


 ……しょうがないか。多分、その小さい戦士には、まだ、奥がある。最低でも二つ。多ければ複数。百式まであるとは思いたくないけど。


「祝福は……本気でかけたので、大体六時間くらい保ちますから時間切れは考えなくて大丈夫です」


「……モリヤ……それはスゴイな」


「そうですか?」


「強化呪文は……ファランだって三十分保つか保たないかだぞ?」


「オーベ師でも多分、その倍は保たないと思います」


 アリエリも同意している。まあ、範囲でかけられるから楽ちん。祝福は……賛美歌のイメージだ。守りたい人にベールをかける。


「では俺はここから二人の視点を利用して術で仕掛けます。まあ、多分、こないだの術は今の祝福で大丈夫だと思いますが」


「敵はほぼ、戦士のみです。噂ではそのイリス様の見た子ども、若い戦士がバガンの王。で。ヤツだけが術士の可能性が高いです」


 アリエリが事前にここいら一帯に派遣していおいた情報部の人間から、最新情報を入手してきてくれた。


「それはなぜ?」


「バガントリガンの王は、全て、戦うコトで決まるそうです。つまり、あの王は屈強な戦士を全てねじ伏せたということになります」


「……あの力であれば……確かに」


「んー少しでもヤバそうならこちらも術を使いますよ? イヤすからね。これ以上、妻に被害を出すのは。治ったとはいえ」


「判った」


 イリス様はただ単に再戦なんだろうけど、万が一負けたりしたら、ウチの領が終わる。自分がどれだけ大きくなっているか、もう少し自覚して欲しい。


 そのための……よい試練ってやつかな。バガンの王よ。いい機会だ。


 まずは……近づいたアリエリからの視界が繋がる。惨状……だろう。裸の女が鞭で打たれている。それを眺めているバガンの民。屈強な男達、海の戦士なのだろう。……って……そこで、殴られている者もいる。女が男に組み伏せられて……。


 ん? 凌辱? されてる? 見世物の様に……やらされている?


 おいおいおいおい……この世界は……ああ、いや出来ないわけじゃないんだ。うん。でも、嫌悪感があると……それを乗り越えてってことか? そうなのか? おうおう。そういうことか?


 そりゃぁ……なおさら許せないな。個人的な感情として。妻達がそういう目に

合うかもしれないと思っただけで、はらわた煮えくり返るし。


 というか、多分だけど、俺、戦闘的にそのバガンの王と相性良いと思うんだよなぁ。あの街ごと……一気に潰しちゃいたいけどな……なんか凄くイライラしてきちゃったなぁ。がまんがまん……。


 上手いこと、イリス様の成長の素材にしようなんて思わなければ良かった。元々、うちの嫁の意識を犯すなんていうふざけたことをしてきたのはそっちだしなぁ。


 さらになんだ、肉体的に犯される可能性も出てきている以上……。ねぇ。


「へぇ……戻ってきた……あれ? 連れて来たのは別のヤツか。今度は逃げねぇの?」


 街の外。門に当たる部分でバガンの王、いや、少年が待ち構えていた。多分、あいつ、敵性感知かなんか持ってるな。かなり広範囲の。ちっ。ここまで遠いと簡易でも鑑定に時間がかかるんだよな……。


 視界ジャック? からの能力使用は、何をするかで大きく違う。これくらい離れてしまうと、視界を借りて現場は見えているが鑑定は届かない。というか、指輪の、魔道具の力? はかなり距離が近くないと難しい。収納は誰かの視界じゃ何も出来ないし、転移帰還も俺の周囲でしか発動しない。


 逆に……通常の術……例えば俺の得意? な、風の術であれば、ほとんど普通に使いこなすことができる。数も出るし、操作もそこそこ普通にできる。癒しも若干精度は落ちるが使える。


「お前、そうとうやるな。くくく。よろこべ、俺の子を産め」


(アリエリは……そこで待機。とりあえず、イリス様に任せて)


 了解したという感じで首が縦に振られる。


(今回は向こうも用意していたんだろうな……王の周りの廃墟に……多分、手練れが山ほど。四十以上? かな?)


ガァァァア!


 バガンの王が、はっ! という顔をした。多分、仕掛けたのだろう。


(この位置であれば問題無いみたいだね)


 アリエリが頷く。彼女がいる場所までは届かないようだ。






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