0387:忘れる疑問

「教会……はありますが、そう言われてみれば、祈りの場はあっても、偶像や象徴になる様な像や物がありませんね……」


「アレは癒しの女神を祀っている。癒しの女神に捧げる祈りでもって癒しの術は発動するのだ。祈って当たり前であろう?」


「……すいません、そういうのよく判らないまま、癒しの術……使えてます。というか、女神に祈ったこともないです。そもそも、女神について詳細をよく知りませんし」


ガーン


 ……と。オーベさんとファランさん、術の二大巨頭がスゴイショックな顔をした。


 俺の癒しの術は……普通の癒し手の術とは、根本的に治りが段違いだ。それこそ、飛び抜けているらしい。自分では良く判らないけど。セタシュアや治療院などで治療を行っている人の術をちらっと見たことがある。確かに、俺の方が上手かな……と思ってた。だが、これは、医療知識が備わっている、その根本的な治癒原因を理解しているから……だと思っていたので変だと思わなかったのだが。


「これっぽっちもか?」


「ええ。だって……名前も知らない女神を……どう讃えればいいのか判らないというか」


 既に……多分、概念自体がすれ違っている。考え方が。


「女神……の名前か。確かにあってしかるべきかもしれん……」


「向こうの世界の神……特に、うちの国は「八百万の神」と言ってありとあらゆるモノに神は宿っている、神はいつも我々を見ているという考え方なので、それに近いのかもしれませんが……但し。それは場所や物、現象が中心です。森羅万象に神は存在し、尽く名を与えられ、敬われました。様々な神がいる。さらに、その神の特徴に合わせて、人間の行う行為を付随させていきました」


「つまり……この剣の神、荒ぶる神というのはいても、最初から戦いの神はいないということか?」


 え。すげっ。イリス様が真芯を理解している。さすがだ。そう。本質の理解という意味ではこの人はスゴイのだ。だから、人を信じるとか信じないとか、イリス様の方針は非常にあてになる。直感的なことを含めて信頼出来るのは、こういう事を即理解出来るところだ。


「はい。剣の神……というのはその剣に神が宿っている、だからこそ神と共にその剣を大事にするということになります。荒ぶる神は、人には理解出来ない荒々しさを持ちます。そして、戦いの神は……います。ですが、そうですね。人間の行為ですから、各種宗教の聖典などで描かれて、後付けされた感じでしょうか」


「宗教関係は得意じゃ無くて、基礎的な物しか知らないんだよね……そういうのと縁の無い生活をしてたもんだからさ。だから、不思議に思わなかったけど……」


「はい。この世界は宗教発展の基礎から多様化までの変遷が失われている気がします」


 うわ。この八頭って子もスゴイな……結論はやっ。普通の高校生はこんな展開に着いていけるもんなんだろうか? 俺……高校の時何してた? 部活もしてなかったし……バイトか? でも適当に遊んでたなぁ……友達と集まってゲームしたり。


「それにしても。杜谷さんにも苦手分野とかあったんですね……なんか、話に聞いてたら超絶完璧な超人だったんで。ちょっと怖いなと思ってました」


「いやいや~だって俺、東尾塾の全国模試で四千番に入ったことないもん。聞いたけど、宇城さんと八頭さん、あと……誰だっけ……もう一人は、紅武の天才スリーとか言われてたんでしょう? 常に五番以内だったって」


「弓道部副部長の剣崎真言げんざきまこと先輩ですね」


「ああ、そうそう。体育系でも全国トップで、頭もトップって……そんな人達に俺が敵うわけ無いじゃ無い」


「でも私達は貴方に助けられました。貴方で無ければ助けることは出来なかった」


「まあ、うん、そうだけどさ。それもこれも運だからさ」


「はい。では私もその運に従います」


 オーベさんがスゴイ笑顔でこちらを見ている。


「面白い、おもしろいな、ヤガシラだったか?」


「はい」


「しばらく私の手伝いをしないか? さっきの様に気付いたことがあれば言ってくれればいい」


「え? でも、あの……」


「我が主の補佐は隷属が解除出来てからでも遅くないのじゃ。いいか? モリヤ」


「あ、はい、隷属解除に必要だというのであれば」


「うむ。新しい発想が期待できそうじゃ。何よりも……我らと違って、「何か」を失っておらんからな……」


 あ。深刻な顔だ。


「一つ気付いた事がある。ヤガシラの言ったことは確かに真理だ。だが、それに私は気付けなかった。長い間……研究を行っている私が、そんな基礎的なことに気付けていなかった。「それはどう考えてもおかしい」ということだ。言われて思いだしたが、実際に……ヤガシラが言った様なことを昔、自分でも考えたことがあったのだ。だが。いつの間にか、それ自体を忘れてしまっていた……。この私が、だ。大賢者と呼ばれ、未だ多くの知恵と知識を我が身に留め置いているこの私がだ。それはとても「おかしい」のだ。何か。強制的かつ、強力で、抗いがたい、静かな力がこの世界に働いているとしか思えない。これは……呪いだけでなく……神についても調べる必要が出てきたな」


 そう言って……オーベさんは不敵に笑った。









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