0386:神の名は

「さて。早急に確認しなければいけない事が重なりました」


「おう。戦争だな」


 はいはい。


「メンバーを決定しないと。ではイリス様は戦争参加で」


「戦争以外で何があるんじゃ?」


「ああ、まあ、どっちかと言えば個人的な……「彼女たち」案件なんですけど、ガギルの口伝の伝承に関わることでですね……」


 ドガルからの報告を、こちらでも報告した。まあ、良く判っていない。だよね~。この世代の日本人じゃ無いとどうにもならないよね。流行歌だしな~。ネタが。


「約束の地……か。その手の伝承は幾つかあるのだが……ガギルのモノは一切聞いたことがないな……。私が知らないとなると多分、リーインセンチネルも知らぬな……で。その小娘はなぜ、ここにいる?」


 八頭さんが俺の脇に立っている。秘書だそうだ。


「えっと……俺の仕事を手伝ってくれるそうです。本人希望です。イリス様、ファランさんの許可は出たので」


「そうか。まあ、我が主は無駄に仕事を抱えすぎだからな。必要じゃろう」


 うーん。こっちの世界ではこれくらいの子どもが働いているのは普通なので気にならないみたいだけど……セタシュアもだけど、俺的には未だにこの歳の子に仕事をさせるのはな~彼女は無駄に頭良いから、俺が気付かないことも気付いてくれるかもっていう期待はあるんだけどね。


 領主執務室のソファセット。いつものメンバー、イリス様、ファランさん、オーベさん、俺。そして八頭さんだ。


「私は今回は動けんな。遅々として進まぬとはいえ、子供たちの隷属解除が一番の優先じゃろう? 我が主」


「ええ……オーベさんが出来ないのなら誰も出来ませんからね……お願いしたいところです」


「とりあえず、隷属……自体の記述や詳細は無いが、我が主が発見した断末の呪いと同系統であるというところから、断末の呪いについて再度調べておる。こちらは逆にかなり多くの文献が残されていてな……どれが有効なのか、怪しいのかの判別が難しい。一つずつ検証していくしかなくてな」


「お疲れさまです。多少時間が掛かってもお願いしたいです。よっぽどオーベさん限定でご足労お願いする事態にならない限り、こちら優先でお願いします」


「ああ、了解した」


 そうなると……オーベさんは籠もりきりだし……。


「ファランさんはどうしますか?」


「ガギルの約束の地……か。それに関する文献の「噂」を聞いたことがある」


「え?」


「ガギルの物はガギルの地に。ガギルの種族としての特性はともかく、彼らが鉱山に引き籠もったのは、ヒームによる隷属化が多くあったから……と言われているが、それだけではないのでは? と以前から考えていた」


「そうなんですか?」


「あ、いや、隷属化はあった。だが、ガギル、そしてノルドが分散している最大の理由は帝国……偉大なる古代クランバニア大帝国の建国以前に強制的に分散させられたのではないか? と私は思っている」


「え? そ、そうなんですか?」


「ほぼ推測だがな。しかも四千年以上前の話だ。資料等はほとんど残っていない」


「帝国の資料にな。ノルドとガギルの森域を結ぶために、赤の街道を作った……という記述が残されているのだ」


「神話レベル……の話なんですね……」

「あの……」


 八頭さんがまた小さく手を上げている。ああ、うん、運動部系の部活は上下関係厳しいからね。下級生が発言する際の紅武女子のマナーなんだろう。


「ちょっと議題からはズレてしまうと思うんですが……神話を……神話の本を貸していただきたいのですが」


「ん?」


 オーベさんもファランさんも首を捻った。


「この世界がどんな世界であれ、「神」という概念はあるようです。ならば、様々な神話があるはずなんですが、自分たちに解放していただいた文献にはそれ系のジャンルの本が存在せず」


 ん? あれ? おかしいぞ。確かに……ん? あれ? そうなると……もの凄い違和感を感じ始めた。たった今まで何一つ疑問に思わなかった事が頭に浮かぶ。これ……ヤバイヤツちゃうん! ヤバイヤツ!


「八頭さん……ありがとう……。これは……とんでもない気付きかもしれない」


 オーベさんもファランさんもさっきと同じ様に首を捻った。


「オーベさん、ファランさん……癒しの女神の……名は? なんといいますか?」


「ん?」


「名か。神に名は無い。敢えて呼ぶ必要も無い」


「……おかしいですよ? それ。自然崇拝アニミズム、信仰概念の出現……どこからどう考えても、まず最初に行われるのは「名付け」です。それによって、自己認識に他己認識が加わり、モラルが生み出されるとされています。台風で非常に強い風が吹いた。その地方では定期的に吹いた。その風を「アネモイ」として崇め、讃え、恐れて、それに貢ぎ物を捧げることでその害が及ばないようにと祈った。自分の世界の古代の国の話ですけど、そんな成り立ちが普通のハズです」


「……」


「しかもこの世界では癒し……という神由来の具体的な力が存在する。なのに固有名称が存在しない。身近に感じる存在じゃ無いのは判ります。ですが、なぜ、そんなに距離感があるのでしょう?」


「魔術は……古代語を唱えれば発動するが、癒しの術は女神に祈ることで使える様になる力……モノであるハズ……なのじゃが」


「ならなおさら特別なんだから……女神なんちゃらという名があるのが当り前でしょう。名はあるけれど、恐れ多いからその御名を口にしない……ならば判ります。で。それなら。その神を崇める宗教宗派が存在し、そう記した経典や聖書があるハズです」


 オーベさんが考え始めた。何か思う所がある様だ。




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