0383:ガギルの口伝

「結論として、やはりここが、ガギルの約束の地、神に祝福された地なのではないかと思う」


 セズヤに対するモロモロの作戦を準備をしていた所。


 ドガルが俺に大事な話があると言って、執務室に現れた。


 ガギルの人達っていうのは本当に……自己完結していて、鉱石と鍛冶仕事があれば少々食料に難があっても不平不満を漏らすことがない。高性能の引きこもりというか、それを管理している俺達にしてみれば「優秀な工場」の様だ。御褒美は適度な酒で問題ないし。


 そんなん過去に勘違いするヤツが出てきて、彼らを支配しようとする気持ちも判らないでもない。


 なので、こうして俺にわざわざ会いにくるっていうのはよっぽどの事な気がする。なので、忙しいからなんて追い返したりしない。


「ああ、依頼の品の開発はもう少し待ってくれ。魔力銃はどうしても使用する個人によって強度の問題や、さらに精度の問題が大きくてな。難航しているんだ」


 そりゃ……ヒームの鍛冶屋は最終的に手を上げたワケだから、難易度の高いのは判っている。多分、ドガルにやらせてどうにもならないってことは、この世界ではどうにもならないというのと同じ事だろう。


 鍛冶仕事でガギルに勝る者はいないし、ガギル界というか、ガギル社会はノルドによる書簡でのやり取りでそれなりの繋がりを持っている。その反応を聞いていると、ここオベニスにいるガギルは世界でトップクラスの開発を行っているのは間違いない。


「日々の生活は? 何か大変なことはない?」


「お館様のおかげで充実した日々を送らせていただいてる……ます。何よりも……食べ物が豊富で栄養? もあるので、いきなり死ぬ者がかなり減りました。食事にも気をつけさせてる、います。子どもたちも日に日に元気になっておりますし」


 言えてないよ。変な敬語になってる。ああ、そうね。慢性的な栄養失調で、仕事中毒の上に突然死ってパターンも多かったみたいだからね。さらに身体の出来ていない子どもの死亡率も高かった。それを食い止められているだけでも良いか、と思う。


「以前から、交流のあった他の鉱山のガギルに書簡でやり取りをしている」


「ああ、聞いてる。技術交流や……酒の手配だな」


「ご迷惑を……」


「問題無いよ。別にこの領の財政を圧迫しているわけじゃないし。酒はそれこそ、売るほどあるからね。まだ試作も多いから大量に欲しいと言われたら、考えないとだけど」


「ええ、とりあえず、今の量でしばらくは大丈夫です。そのやり取りの中で。気になる事が」


「うん」


「大事な話っていうのは、このオベニス、特に我々の生活している場所は、ガギルの言い伝えにある「約束の地」では無いか? という」


「約束の地? ああ、そういえば……前に言ってたな。神々に……」


「神々に祝福された地、だ、です」


「ああ、聞かれたけど何のことだが良く判らないって言った覚えがある」


 ドガルが頷く。


「ガギルが伝えてる物語は幾つかある。ます。全部、昔の話ばかりだ。竜を倒したとか、国を作ったとかそういう……ヒームの様な恋愛が~とか神が~っていう派手な話では無いからあまり面白くない。だが、その中で一つだけ、「続く」の話がある。それが約束の地の話だ」


「続く?」


「昔の言い回しなので俺も正確な所は良く判らないが、「掘り尽くせぬ鉱石。沸き出でる神々の水。大雨や嵐も無く、風も狂わない。火の精霊は踊り、大地の精霊は踏みしめる。ガギルの約束の地はその奥へ。続く」って感じだ」


「ああ。だからドガルはここがそうではないかと?」


「そうだ。ここで作業していてなおさらその思いは強まった」


「なんで?」


「我々に与えられた鉱山……掘れる鉱石の量はそこまででは無いが尽きないのではないだろうか? 掘って十数日すると鉱石が復活している。さらに、その種類が異常だ。普通一つの鉱山から採れる鉱石は多くて三つ。どんなに大きくて有望な鉱山でも五種類掘れればとんでもないってことになる。だが。この鉱山で、俺達が確認した鉱石の種類は既に十五種類を超える。これでここが約束の地で無ければ何なんだ? ということになる」


 あたー。そうか。リポップはそれなりに時間が掛かる仕様にしたんだけどなぁ。それでもまだ早かったか。種類に関してはやり過ぎたな。鉱山機能を集約するのに、ついつい、あそこに表示されてた鉱石の項目、全て掘れるようにしちゃったや。まあでもなー今更、ここまでボーナスキャンペーンでしたーっていうのもおかしいよな……。


 ちなみに、こういう鉱山型の迷宮っていうのは「多分無い」そうだ。この世界。設定できるからあるもんだ……と思ってたけど。

 鉱石が手に入る迷宮はあるのだ。だけど、非常にレアで、ガギルが鉱山とするほどの量は採掘できない。さらに魔物も襲ってくる。まともに生産活動が行えるわけが無い。


「で。ココが約束の地だとすると。手紙のやり取りでまだ続きがあることが判った」


「ん?」


「約束の地の奥深く。声も光も届かぬ奥深く。隠された希望は全てを叶える。約束の地は約束を破らない。山も風も海の色もある。一番深く。一番で無くとも、特別なのだから。青い光となりて夜空をこえ、行くのだ」


ゲホ……


「お館様? 大丈夫か?」


ゲホゲホゲホ


 む、むせた。そ、そんなん吹くわ! どういうことだ? あれ?


「そ、それだけ?」


「ああ、ああ、俺が知ってるのと他の鉱山に伝わってるのをくっつけたのはそこまでなんだか……エバルとバガリも部分的にしか知らなかった。でも、もしかしたら、もっと大きな鉱山の長なんかはさらに知ってるかもしれない。ただ、これは本当に重要な言い伝えで……伝えるのはこれを伝える長の一族、その一族同士と……言わなければいけない相手にだけだ」


 ああ、それは確かに大事な話だ。そして……言わなければいけない相手に選んでもらえたことに感謝しよう。


「ココ以外で……最も大きな鉱山っていうのは……どこにある? ドガル」


「俺の知っている限りだと、一番デカいのは西のイーズ森域のはるか東南にあるホムラ森域の鉱山だ。あそこは森域の中央にとんでもない大きな山脈があるそうだ。その中の一つだ。俺も俺の親父もその親父も聞いただけで、見たことも行ったことも無い」


「判った。ちょっと相談するよ。大事な話をしてくれてありがとう」


「いや、お館様の役に立てればいいが」


 本当にありがたい。












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