0372:ミルベニ・オルドナッツ③
オベニスに着いて数日。すっかり体調は良くなった。
着いた直後、自分ではよく覚えていないが……私の肩の傷を癒してくれたのはモリヤ様らしい。自分の傷はそう簡単に治るようなモノでは無かった。右肩だったので命はなんとかなったかもしれないが、生きていくにはかなり不具合が生じたと思う。右手はほぼ動かなかったし、下手すれば腐って落ちる所だったハズだ。
それが術で癒され、傷跡すら無くなり。次の日にはイリス様への謁見、そして幹部会議? とかいう席に出席して様々な話をすることができた。オベニスの領主、イリス様に仕えるという希望も叶ったのだ。
それもこれも、モリヤ様の癒しの術の効果が異常だったからだ。アレだけの傷がたった一日で癒えるワケが無い。が。実際には傷ごと無くなっている上に、次の日から動ける様になっていたのだからビックリする。
取り合えず、しばらくは体調も戻らないだろうということで、休んで良いと言われている。
誓約をした以上、散歩等、何処に出歩くのも構わないが、何かあった時のために護衛を付けると言っていた。まあ、まだ完全に信頼されているわけでは無いだろうしな。監視も兼ねているのだろう。当然だ。
「おはようございます、ミルベニ様。シエリエと申します。暫くの間、護衛をさせていただきます」
え? ちょちょっと、あれ? この領にはノルドが多いと聞いていたが……。護衛を務められるほどの腕があり、自分の様な少々問題のある立場の者を任せられるノルドの女性。
というか、この感じ……気配察知が大して得意ではない、自分でもさすがに伝わってくる。
「失礼な質問かもしれないが。ひょっとして貴方はモリヤ様の……」
「はい、妻になります」
なっ。聞いていたし、判っていたが、こうして実際に出くわすと驚愕を隠しえない。モリヤ隊はノルド女性だけの近衛で、全員がモリヤ様の妻。その腕は一騎当千。信憑性の無い噂と言われていたが。
実際に何人かお見掛けしたが、明らかな王級が二人。さらに他の方も準王級と言える実力の持ち主だった。当然このシエリエ様も。
小間使いの格好をしているが、そばに居るだけで「剣聖」レベルの緊張感を感じるとは。
「今日はどうなさいますか?」
「数日は休息する様にと言われていますので、オベニスを見て回れればと思っておりましたが」
「では、ご案内いたしましょう」
「いや、そ、それは……」
「御遠慮なさらずに」
え、遠慮とかではなく……お仕えする上司の奥方に何かさせるというのは……さらに街を歩くというのは……。
「ここいら一帯が延焼したというのが信じられないな……」
「オベニスの土地の殆どは領で買い上げました。現在、宿屋群、複合型大型店舗施設、各種市場、ギルド施設、職人街、観光施設等を建造中です」
「それはスゴイ……」
という事は目の前の労務は……全ては使役ということか? いや、オベニスは景気が良いと人が集まっていると聞いた。という事は奉仕ではなく、全て領主仕事……なのか? そういえば開拓や市街の開発には金をかけていると聞いたが。
城砦都市は細い道と建て増しの重なり。ごちゃごちゃと入り組んでいるのが普通だ。城壁で守られた内側だけが、魔物から身を守れる。身を寄せ合い、密集するのが当然なのだ。
それが……整然と整えられ始めていた。城砦都市にしては広い道。大きな建物が多いため、スッキリしている。普通であれば、都市内は非常に入り組んだ作りの場所が多い。魔物と戦う場合はいいのだが、対人、周辺領地との争いを想定した場合、侵入した兵が迷う程度の複雑さ、混迷さは用意しておくのが常識なのだ。
城壁上部回廊の要所には……都市外に向けて備え付け型の大型強弩がいくつも設置されている。これは強力だ。大氾濫のための用意だろう。この領地は近年何回か魔物に襲われている。
反転して、街を見渡す。
「……整った街になりそうですね」
「はい。お館様の計画ですから」
であれば……お館様、モリヤ様の計画であれば……なんらかの意図があるのかもしれない。
「あれ? しかし……ん? 住民の住まいが足りないのでは? まさか、城壁外に?」
「いえ。民の住居は……見ていただいた方が早いかと」
連れてこられたのは、街の東奥。巨大な階段が地下へ続いている。
「こ、これは」
階段を降りた先には。地下巨大都市とでも呼ぶべき、広大な……街が広がっていた。
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