0371:ミルベニ・オルドナッツ②
逃れ墜ちた自分はここで再度拾われた。この恩を無にすることはできない。何よりも…ここオベニスには圧倒的な強者が揃っている。アルメニア騎士団の精鋭を壊滅状態に追い込み、「剣聖」と「魔剣士」を圧倒し討ち取った暴力。イリス様とオーベ師。ファラン師姉。そしてモリヤ隊と呼ばれる数名のノルド女性。
その戦力だけでも異常だが、さらに「戦乙女」の生き残りも保護しているという。半数は心が死んでしまったらしく、二度と闘うことはないそうだ。が、その半数でも…十は超えるはずだ。
強者だけで二十人以上。しかも並みの強者ではない。イリス様は「剣聖」を圧倒できる力を持つという。実際に討ち取られてしまった。あの方は……色々と問題も多かったが、征服国内で敵う者は一人もいなかった。周辺国の王、強者ですら指南を受けていた。
それを。だ。圧倒した。事実なら彼女は強者の中でも凄まじいばかりの力を持つことになる。
そんな、強者の中でも特に力の強い者は大抵が、傭兵団を率いたり、騎士団総長となったり、王……となる場合が多い。名付けるなら王級となろう。
王級は…一国に一人だ。王なのだから。その力を使って他の強者を、準強者を、民を支配するのが、力の成す形なのだから。
だが。ここオベニスには……ある程度割り引いて考えても、イリス様。オーベ師。ファラン師姉。モリヤ隊(全員紹介されたわけではないが)の中でも特に秀でたらしき二名。この五名は明らかに王級だ。王級が……一国の小さな領に集っている。どう考えてもおかしい。なぜこんなことになっているのかもよく分からないが。おかしい。
多分……イリス様とモリヤ隊数名で、このメールミア王国は簡単に墜とせるだろう。女王として君臨する事が可能なはずだ。だが、それをしない。少なくとも今はするつもりも無いようだ。
恐ろしいのは……それを意図的に配し、指揮している者が存在することだ。
アーウィック家家宰にしてオベニス領の総務部総務部長兼、外務部長兼、宰相兼、領騎士団及び領軍統括元帥。モリヤ様。さらに領主にして王級強者であるイリス様の夫でもある……さりげ無く入ってる宰相。これ……国の役職だよな……。許可無く不用意に名乗ると罰せられるハズだ。つまり。あの人はこの国の宰相でもある……ということだろうか?
その得体の知れなさは……先ほどの王級が揃っている事態よりも遥かに異常だ。
確かに、彼は普通の強者……ではないと思う。だが。明らかに、王級強者を「使いこなして」いる。自分も軍師として強者を動かさなければならない立場だったからよくわかる。彼らは強い。一騎当千であらゆる点で秀でているために、作戦行動という概念を理解しようとしない。囲まれても、伏兵があっても、不意打ちを受けても、奇襲されても。自らの力でそれを跳ねのければ問題ないと考えているからだ。
なので、こちらの立てた作戦通りに物事を進めるのは苦労が付きまとう。特に戦場での動きなど……伝令を介している間に、勝手に行動してしまうのだ。間に合うわけがない。
だが。この領の王級強者達は戦術行動の事は全て、モリヤ様に「任せて」いる。あの強大な暴力が、彼の思いのままに動作するのだ。
ああ。彼が愚鈍であればそれに意味はなかったかもしれない。が。その知恵は私を遥かに凌駕し、オーベ師にすらその方面の思考を放棄させているようだ。
そう。ここオベニスには……複数の王級の強者をまるで自分の手足の様に動かすことのできる、時代を超越するかの様な策士が存在するのだ。
そして……何よりも、これに気づいている者がここオベニス以外にはそれほど存在しないという事実。
どれほど異常なことなのか。説明のしようが無い。
アルメニア軍を裏で指揮し、国を統一し、さらにその後の困難もある程度、打ち破ってきた自分ですら……内部に入り、誓約を行い、馴染むまで、この異常さに気づかなかった。
戦争の際に重要になるのはとにかく、情報である。強者の存在も大きいが、その強者の情報は大切だ。
さらに敵の情報だけでなく、味方の情報の把握も、非常に重要な要素となる。自分も、そう考え、子飼いの者、配下、十数名を各地に派遣し、様々な情報を集めさせた。
が。ここでモリヤ様の元に集まる情報は……桁が違う。なんでも、百に近いノルド族がオベニス周辺だけでなく、メールミア王国周辺、さらに遠く離れた他国の街や村で情報を集めている。それがほぼ毎日、ノルド秘伝の方法? で届けられるのだ。
おかしい。これを彼が考えたのであれば、さらにおかしい。何かが……違う。何だ? 考えろ? お前は学究の徒であるハズだ。
-----------------------
おすすめレビューに★を三ついただけるのが活力になります!
ありがとうございます!
さらに、おすすめレビューにお薦めの言葉、知らない誰かが本作を読みたくなる言葉を記入して下さると! 編集者目線で! マネージャー目線で!
この小説が売れるかどうかは貴方の言葉にかかっていると思って!
やる気ゲージが上がります。お願いします!
■宣伝です。原作を担当させていただいております。
無料です。よろしくお願い致します。
[勇者妻は18才 第1話] | [ゆとり]
#Kindleインディーズマンガ で公開しました。
Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒
「直リンしちゃいけないんですってググってね」
そして、自分は手伝った程度ですが、こちらも。
[メロメロな彼女 第1話] | [ゆとり]
#Kindleインディーズマンガ で公開しました。
Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒
「直リンしちゃいけないんですってぐぐってね
単行本一巻、二巻もよろしくお願いします。
ブースで売ってます。
「直リンしちゃいけないんですってぐぐってね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます