0368:流されてアルメニア
アルメニア征服国は……オーベさんの助力によりなんとか持ち直したのだが、その後、国軍が議会により解体。その議会もまとめる者がいないため、機能しなくなった。兵は故郷に戻り、各地方に分散配置され……完全に群雄割拠状態に突入する。各地で豪族が兵を挙げて、君主を名乗り始めていた。
群雄割拠状態ってやつだ。勢力も、東派、北派、西派と地域で分かれており、どこも似たような戦力のため、拮抗状態が続いているらしい。
さて。なんでそんな事を知っているでしょうーか。正解は。はい、また、ミルベニくんがやって来ました~。うーん。縁起悪い。なんと、死にかけで。右肩が抉れていました~。槍で突かれて失ったそうです。時間は経過していたけど、ファランさんよりは軽傷……かな。
まあ、意地悪するのもなんなんで治してあげました。
で。数日休んだ後、イリス様、ファランさん、そして俺のいる領主執務室のテーブルに青い顔で腰掛けています。オベニスに着いたのは、実は彼一人ではなく。お供の数は数十名。部下? というか家族というか、自分の館の使用人を連れて逃げてきた……感じなのかな? どうなのかな? こりゃなんていうか。
「イリス様にお願いの儀が」
さっきからミルベニは頭を机と平行に維持している。お。なんか違うぞ、これ。覚悟とかその辺が。
「自分を配下に加えていただけませんか。自分では……何一つ、自分の希望を叶えることが出来ぬと判断しました。どのような役目も果たしましょう。我が願いは一つ……」
心の決まった者の瞳をしている。これはもう……何を言っても変節しないな。塗りつぶし完了ってヤツだ。こういう顔になると……男も女も怖い。狂信者レベルで怖い。
「もしもアルメニアと刃を交える事態となったなら。私に潰させていただきたい」
「復讐……ではないのか?」
こういう時の話はイリス様に任せた方がいい。小賢しい俺の知恵なんてお構いなしの方が効果があるのだ。
「はい……いえ、復讐ではありません。栄枯盛衰、下剋上、謀叛反乱はこの世の中で当たり前のこと。そうなったということは、された方にもそうされた原因があるのです。そして、最終的には弱さは罪となります。我が王の為そうとしていた国造りは……民にも、そしてそれを率いる豪族にもお互いに利を施す最適なやり方でした。が。傲慢な者が数名。アヤツらのせいで全ては狂いました。実力があり、王に取って代わってアルメニアを導くのであれば問題無いのです。が。ただただ己で天下を取った気分を味わいたいが為だけに、旗揚げし、そのまま為す術無く動かずにいる愚か者共が……私は許せません」
「ちなみに「奴隷将軍」ゴバン殿……は?」
「私を……いえ、私達を逃すために囮となりました。そもそも、王宮から離れた際に負傷もされていましたから」
「だから言うたハズじゃ。あの場は「お前」が王となるしかないとな。最悪……死霊の技を使ってでも、恐怖で民を支配してでも、王となり、まとめるしか無いとな」
「……は……」
「国の決断を合議制としたのは悪いことでは無い。だが……その裏を付かれて、兵を剥がされ、その間隙を縫って、お前とゴバンを亡き者とする。うむ。私があそこを去る時に忠告した通りとなったな」
「はい……」
「とまあ、偉そうに言っておるが……な。お前も知っておろう? 私がそんな広い視野を持っていないことを」
「は、はい……そう、なのです。オーベ師は……師に失礼なのは判っているのですが、正直、謀や策に対して「面倒くさい」と思われているのでは? と勘違いしておりました。食指の動かないモノには一切興味を持たない方です。一処に落ち着かないのも、面倒くさくなるのを避けるためだと思っておりました」
「くくく。そうだな。その通りだ。お前の評価通りじゃな。私は今も、広い視野を持っていない。わざと持たぬようにしておる。その方が研究や興味のあることに集中できる。さらに言えば、その手の……国を治める、軍を率いるなんていう行為は面倒くさいとも思っている」
こういうときのオーベさんは「師」だ。挑発的だが……多分、戦や戦闘等についてを教える場合はこれくらいの激しさは必要のハズだ。
「事前に聞いた情報から私が加勢した後、特に一段落付いた後に「味方」に狙われ襲われる事。ミルベニ、お前が遠かれ少なかれ謀叛を起こされ無実の罪を負わされて、最終的には見せしめとして殺されること。そして……最終的にはメールミア、そしてオベニスにさえ逃げ込めば、確実に命は助けてやれるということを、さりげなく伝えておく事。それら全てを「私がアルメニアに向かう前の日」に教えてくれたのは我が主よ」
ああ、そういえば。言ったね。言った。多分そんな気がしたから。
ハッ……とした顔で俺を見るミルベニ。いやいやいや……顔、血の気が失せてて青白いよ……というか、別に大したことじゃないでしょうよ。キミら賢いんだから判るでしょうよ。それ位は。
「イリス様……我が浅ましき知恵如きでは何の役にも立たぬかもしれませんが……重ねてお願い申し上げます。私を配下にお加えください」
「判った。頑張って」
「ミルベニ。誓約を。己の学究の志に誓え」
頷く。そういう覚悟になるよね。そりゃそうか。逃げてきたんだしね。
とりあえず、彼はオーベ師の下なら働きやすいだろうと……彼女の使いっぱから始めてもらうことにする。
が。とりあえず、死にかけだったんだからしばらく休め。ね。
-----------------------
おすすめレビューに★を三ついただけるのが活力になります!
ありがとうございます!
さらに、おすすめレビューにお薦めの言葉、知らない誰かが本作を読みたくなる言葉を記入して下さると! 編集者目線で! マネージャー目線で!
この小説が売れるかどうかは貴方の言葉にかかっていると思って!
やる気ゲージが上がります。お願いします!
■宣伝です。原作を担当させていただいております。
無料です。よろしくお願い致します。
[勇者妻は18才 第1話] | [ゆとり]
#Kindleインディーズマンガ で公開しました。
Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒
「直リンしちゃいけないんですってググってね」
そして、自分は手伝った程度ですが、こちらも。
[メロメロな彼女 第1話] | [ゆとり]
#Kindleインディーズマンガ で公開しました。
Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒
「直リンしちゃいけないんですってぐぐってね
単行本一巻、二巻もよろしくお願いします。
ブースで売ってます。
「直リンしちゃいけないんですってぐぐってね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます