0360:ぽかん
彼女が何に誓約を立てたのか……は聞かなかった。施術者(今回はオーベさん)がそれを知らなくても誓約する方の心の中にあれば、それが誓約の条件になるのだという。
「誓約は為された」
「さて。どこから話しましょうか……」
「ん? 簡単じゃ無いか? 誓約したんだから。全部言えばいい」
……イリス様……? デリケートなんです! 女子高生ですよ? JKですよ? 相手は!
「えっと。自分の説明からしていきましょうか。再度。俺の名前は
宇城さんが頷く。
「まあ、ここからは長くなるので少々省きます。夜の森で魔物に襲われそうになったところをイリス様に助けられます。これが出会いです。自分のこの世界の人種との最初の接点です。運が良かった。それだけです。なので、「戦乙女」の様な辛い状況には巡り会いませんでした。当時、オベニスではあらゆる文官を求めていました。これも運が良かった。元社会人であれば、行政系の数値や書類は得意分野です。俺はオベニスで職を得ることになります」
「イリスが女領主ということで侮る者が多くてな。貴族社会の反発を受けて、優秀な文官候補や学生などは全て排除されてしまったのだ」
「この世界はとにかく男尊女卑が酷いです。自分たちの世界でもまだまだちゃんとしてませんでしたが、こっちは……まあ、それを感じる隙間すらなかったかもしれませんが……」
「いえ……「戦乙女」などと名前を付けておいて、その扱いはヒドイものでした。これは、異世界から来たということだけではないなと思っていました。そもそも、戦場に女が立つという事だけでも反発を受けていたのですね」
その通り。未だに。イリス様やファランさんが戦場に……というだけで、ふざけたことを抜かすヤツがいるのだ。実際、今回の戦場でもそういう声が多々聞こえた。
「ああ。イリスや私のみならず……はるか昔から闘い続けている「召喚妃」オーベ師ですら、未だに女がどうやってその名声、戦功や勲功を「買った」? などと言う愚か者がいる始末だ」
そうみたいなんだよなぁ。そんなこと言ったヤツは大抵、あっという間に潰されてるんだろうけど。完璧に。
「ということで、女性領主であるイリス様の下で働く文官がいなかったことから、自分は雇っていただきました。で。領の立て直しを行っていたのですが。成り行きで、この領が国の罠に掛かってイリス様が陥れられそうになっていた謀略に気付きました」
「気付いて、防いで、潰してやり返したのだろう? ちゃんと言えばいい」
「恥ずかしいじゃないですか」
「モリヤのその辺がよくわからん」
「す……ごいですね」
「まあ、そうですよね。信じられないですよね。自分でもそう思います。自分は勇者として召喚されたわけじゃないですから、貴方たちの様に剣を取って闘う力はないですし、強いワケでも……取り立てて賢いワケでもありませんでした。今はまあ、魔術が使える様になりましたが……相変わらず武術や格闘なんていう方向はさっぱりです」
「本当ですか?」
「ああ、本当だな。ここへ来た当初は、子供に殴り殺されそうな力しかなかった」
……イリス様……そんな風に見てたんだ。
「いやだが……策略謀略には長けていたのではないか?」
「と、ファランさんは言ってくれますが……多分、俺が国の謀略を暴いたのは、前の世界で生きていれば必然と身に付くレベルの教養で、順番に考えていった場合に思いつく程度のモノでしかありません。勝負師は数十手先を読むと言いますし、将棋のプロなんかなら、五十手先は当たり前だそうですが……自分のは僅か数手先を読んだにすぎません。ですが、まあ、それがドンピシャで当たっただけというか。多分、その辺の能力は幼い頃から帝王学を勉強して来た宇城さんの方が遥かに上でしょう」
宇城さんが頷かないが、納得した顔を見せた。謀略とか策略とか……多分、触れてきたんだろうなぁ。子供の頃から。そんな顔だ。
「で、自分の特殊能力が判明したのはしばらくしてからです」
「あ、あの、それまで杜谷さんは具体的、実務的には何を……」
「完全な事務仕事です……かね。住民一覧の作成とか、生産の確認。税制の確認と再確保、城砦都市の再構築……まあ、地方行政の基礎を最初からって感じですか」
「その辺……私もファランも弱くてな。丸投げだったからな」
いえいえ、丸投げはイリス様……貴方だけです。ファランさんは最低限手伝ってくれてましたから。それこそ、新規で雇った役人(女性)の教育とか。
「そういうの……って出来るんですか?」
「出来ました……いや、出来てなかったけど、まあ、なんとかなった……が正確なところですかね。この領のみなさんの協力あってこそです。元々自分の勤務は商社的な何でも屋さんだったんですが、いろんな傘下会社に派遣で入ることも多くて。様々な経理とか、事務仕事もやってましたから。それも良かったですね。で。この世界、正確には領なんですが、規模が小さいんですよ。根本的に。ほぼ、城砦都市で完結していますし、領にある街や村も小規模ですから」
「はあ……」
「ああ、で、俺の初期の仕事はどうでもよくて。そんな感じで仕事をしていくうちに、イリス様が非常に疲れた感じな日がありまして。軽い気持ちで「マッサージしましょうか?」と声を掛けたわけです。元々、俺、マッサージが得意なんです。子供の頃から祖母にお小遣いをもらってやってたんで。大人になって仕事先とかでも、パートのおばさんに肩もみとかして、とかにく大好評で。なんで、本当に気軽に声をかけたんですね」
「はい」
「そしたらですね。それが俺のユニークスキルってヤツでした」
「え?」
「マッサージ」
「すき、る?」
「はい」
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