0358:悲観的報告

 朝の九時。だいたいだけど。こっちの世界にはちゃんとした時計がない。細工物の時計は存在するが、微妙に時間がくるうのだ。そのため、一番正確と信じられているのは日時計となる。といっても両方とも魔道具だけど。


 細かい時間は判らないのだが、魔道具の日時計は小さい光の術が発生し、棒に影が発生する。その角度を見て時間を確定させる。


 そんな日時計を確認して、時計塔の鐘の音を鳴らして時報にしている地域もあるみたいだが、オベニスではない。なので、時間の感覚がわかりにくい。


 個人的にどうにか、簡単に前の世界の感じに変換出来ないか? と思っているんだけど……茂木先輩の部屋にあったデジタル時計……そういえばあれ、複製できるよな。多分。あそこにあるという事は、迷宮編集のタッチパネルに項目として残ってるハズだし。ああでも、DP……高めだろうなぁ。きっとそうだな……。あの手の機械的なアイテム、高いんだよな。


 まあ、この世界、日が昇ったら仕事始まり。日が沈んだら終業っていうパターンが多い。鍛冶屋や大工さん、冒険者も、外で働く人は大抵そんなかな? お店とかは……うーん。大体早朝八時くらいから始まって、日没数時間営業。酒場とかは日没ちょい前から客が帰るまで営業かな。 


 で、小間使いのみんなとか、内勤的な職業は、日が昇ったら仕事が始まり。仕える主人が眠ったら終業……。大抵がそんな感じだ。時間だけなら、ブラック企業なんて目じゃない。さらに、うちみたいな領主レベルの貴族家だと、住み込みの小間使いが複数いて、交代制で二十四時間勤務……ってパターンが多いそうだ。実際、そうなってる。大変。本当に。


 そんな朝の九時から集まった、集められたのはイリス様、ファランさん、オーベさんに俺。そして宇城さんだ。今後の方針について相談する会議、打ち合わせ……となっている。


「つまり、情けないことだが、隷属の魔術紋については解析出来ない部分が未だに多すぎるということじゃな。術で読み込むのにどうしても時間がかかる。というか、そもそも、まずはどうしても召喚に関する部分に目が行ってしまって、これまであまり研究も為されていなかったというのが本当の所じゃ。そのため、資料も少なく、参考例が少なすぎる。文献を漁ってはいるが……なかなかな。よくある隷属の契約で使用されるモノとは大きく違っているのでな」


 宇城さんの表情が曇る。


「ありがとうございます。周辺の情報までお教えて下さって」


「すまんな。長年研究してきた結果がこんな体たらくで」


 オーベさんが謝る。宇城さんが首を左右に振った。


「そして、俺の特殊能力……で解術できないかと、現在隷属状態の者に実験してみたんですが。残念ながら難しく。現状……オーベさんの研究が進むまでどうにもならないということが判明してしまいました」


「そう……ですか」

 

 まあ、落ち込むよね。自分たちがいつ、あの、無抵抗に命令されるままになるのかっていう恐怖は刻み込まれている。


 土下座では無いが、ねじれろと命令されて床をのたうち回ったっていうのは……もう二度と味わいたくないだろう。


「あの……モリヤさんのこと、メイドの方々から色々と聞きました。モリヤさんがいたからこのオベニスが存在している、住人が生き残った。と。本当ですか?」


「うーん、そんなこ」


「本当だな。モリヤがいなければ……多分、ああ、オベニスは存在したかもしれないが……確実に私は領主で無くなっていた。当然だが、現在のオベニスの活況も存在しない。当然、貴方達を助け出すことも出来なかった」


 こういう会議ではほとんどしゃべらないイリス様が、優しく宇城さんに語った。


「そうですか……メイドさんから貴方がなんとかしてくれるから安心して欲しい……もの凄い信頼されているのが伝わってきました。その貴方が……ダメだということは……この世界どこに行ってもどうにもならないということでしょうか?」


「ああ。ウシロが聞いたことがあるか判らないが、この国の西南に魔導国家リーインセンチネルという……世界の魔術の最高峰であり、知の集積地、知恵の結晶と呼ばれている国がある。そこの上位者、大賢者に聞いたところでどうにもできぬのは保証しよう。元魔導院、元大賢者が言うのだから本当の事だ。嘘は言わん」


 え? なんかスゴイ情報飛び込んできた。オーベさん……リーインセンチネルで大賢者やってたの? 大賢者は世界で八人しかいなくて、あの国の意志決定機関兼務なんだよね? 魔導院って。確か。


 あ。ファランさんもイリス様も動揺もしてないってことは、知ってたのか。ってことは……あまり言いふらす事ではないんだろうな。オーベさんがここに志願してきた時に自分から語らなかったわけだし。







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