0354:得意のマッサー
「で……マッサージはどうだ?」
ファランさんも色々と考えてくれている。多分、オーベさんが研究に没頭して最近姿を見ない、居ないのをフォローしてくれているのだろう。やさしい。
「うーん……うーん。同世界の者に特別な効果があるとは思えないんですよねぇ。で。効果が無かった場合、俺がスケベというか、エロイというか、そういう嫌われ方をして終わるというか。彼女達の精神的にもエロオヤジにイタズラされた的なリスクがデカいというか。高校生とかってそういうのの分岐点の年齢なので。超絶毛嫌いされちゃうくらいはいいんですけどね。別に。いまさら傷を深めるのはな~と」
「お前はこれだけ妻が居て、さらに彼女達にも手を出そうというのか?」
「ぶっ。そんなわけないじゃないですか。今だって……後悔はしていませんけれど。愛してはいますけど。全員。でも……物理的には嫁大杉だと思っているのに。これ以上増えたらフォロー出来ませんよ。色々」
「ならばいいではないか。彼女達に……モリヤ隊の様に自分の下で仕事をさせる気はないのだろう?」
「はい。それはありません。特に戦闘になるかもしれないような仕事には就かせたくないです」
「なら嫌われても何の問題もあるまい?」
「……そう言われてみればそうですかね?」
「嫌われて悲しくなるのなら、慰めてやる」
「あ、あの、わた、私も慰めます」
ありがたい。セタシュアさんも、ありがたいですけれど。
「まあ、そうですね……嫌われたところで、身近な世話はみんなに任せているし、今後、隷属が解除できれば、普通にお世話係だけになるだろうし……。俺が直接関わることは無いですかね」
「ああ」
「では彼女達の前に。セタシュアにマッサージを受けてもらいましょうか……これも気は進まないんだけど」
「御主人様、お願いします!」
「本人は乗り気だぞ?」
「……ええ。そうですね。もう、諦めたので。セタシュアに新しい出会いを迎えてもらうしかないわけで。妻とかそういうのは、とにかく18歳になってからね、でも」
「はい!」
「くくく……無理では無いか? 妻を増やさないというのは」
「……流れ的に、長時間かけて攻められるとどうにも否定出来ないです」
「甲斐性だからな! 多くを喰わせられるというのは」
「ファランさん……楽しんでますよね……」
「ああ、そりゃそうだ。自分がこれほど楽しい結婚生活を送れるとは思っていなかったからな。魔術の開発や、イリスの手伝いで仕事で充実する、ギルドマスターを続けるっていうのは予想していた。それらで満たされる思いもある程度予測出来た。だが。モリヤと一緒にいることで、それに加えて、結婚というモノから生まれる思いや気持ちを感じることが出来ているし、さらに、他の妻への嫉妬なんていう気持ちまで体験出来ている。その上……この世界でいったい、何名の女が感じているか分からぬ、肉体的な快感、性交による快楽というモノまで刻み込まれた。これで、子供でも仕込まれようものなら。母だぞ? 私が母親の気持ちを味わえるとは……本当に思ってもみなかった。これほど楽しいことは無い」
「そう……ですか」
なんか、刻み込まれた、仕込まれようって……そんな。
「感謝しているぞ。モリヤ」
「それは、拾ってくれたイリス様に言ってください」
「ああ、そうだな。改めて言うとしよう。しかし……面白い。人生とはこれほど楽しいモノだったのだな」
「ええ、そうですね。でもそのせいかはわからないですけど、ファランさん、死にかけてますよ? 肩に穴開けて」
「それはそれだろう? しかもそれも、我が夫、我が伴侶が直接救ってくれたのだ。素敵な恋物語ではないか」
「はい! そうですよね!」
セタシュアさん……何、そのうるうるしている憧れの瞳。アレってそんなに感動的な行為でしょうかね? 普通だよね? 自分の奥さんを必死で救うのって。
「そ、そんなに?」
「そんなにです! すぐにでも吟遊詩人の方に詩にしていただきたいくらい!」
「やめてーそれはやめてーほんとうにやめてーイリス様にしておいてー」
実際、イリス様の活躍は詩になっている。している。今回の「戦乙女」との闘いも大いに詩われることだろう。そういう地道な宣伝活動をしていかないと、女領主の求人に、人が集まらないからね。
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