0349:セタシュアさん、ほとばしる! その5

 傭兵団は……御主人様、そしてファラン様、さらにモリヤ隊の方々によって何とかなったそうだ。


 緊急のお使いで、一度地上に出たが、門の側、ごちゃごちゃと色々な建物があった辺りがほぼ燃えてしまっていた。焼け落ちて、ボロボロの街をみんなが片付けていた。


 だけど、みんなの表情はあまり暗くない。


 守備隊の人は何十人か亡くなってしまったみたいだけど、街の人、市民でそれ以外に死んだ人はいないからだ。みんな奇跡だといっている。


 あんなスゴイ、消せない火の魔術が使われて、街が焼けてしまったのに、死亡者がいない。有名で強い大きな傭兵団が相手だったのに、それはとんでもないことだと噂されているようだ。


 さらに……御主人様が用意した地下の街があるおかげで不安を感じないのかもしれない。避難が行われて、さらにそこに住宅も用意されていた。


 簡易住宅であって、避難用の場所らしいけど、もの凄く豪華で便利だとみんな言っている。私はお屋敷に住み込みで働かせていただいているのであまりピンと来ないが、家族がいて通いで働いている人はみんな「地下の家の方が生活しやすいので、ずっとここで暮らしたい」そうだ。

 

 私は元々、地上でも領主館、お屋敷暮らしなので、その恩恵は良く判る。自分の部屋があり、いつでも暖かく眠れるベッド、食事もお腹いっぱい食べられる。トイレも綺麗で匂いがなく、豪華だ。


 さらに、地下の領主館に移ってからは、使用人、小間使いもお風呂に入ることを進められるようになった。綺麗にしていると、気持ちがいいだけじゃなくて、病気にもなりにくいそうだ。


 大きなお風呂、大浴場? も御主人様が創ったそうだ。魔石を使っていて、お湯がいつでも出るのだ。湯船は朝、当番が掃除しているとき以外は常にお湯が張られている。さらに湯船にはお湯が常に暖かく保たれる魔道具が使われているそうだ。省エネ? とか教えてもらった。


 普通に考えて……自分でもあり得ないと思ったが、どんな貴族、いや、王様のお城でもこんなスゴイ家はあり得ないそうだ。私たち使用人がいつでもお風呂に入れる様になっている奉公先なんて聞いたことが無いという。


 家政婦長のデア様は他の貴族様のお屋敷で働いたことがあるので、間違いないだろう。


 というか、聞けば、常にお風呂に入れる様に改良したのは、やはり、御主人様だった。「自分がいつでも入れるようにしたかっただけだよ」とおっしゃっていた。


 お風呂は……気持ちが良い。躯を綺麗にできるだけでなく、暖まるのだ。心の底からあったかくなる。


 御主人様は傭兵団をやっつけて、イリス様が帰ってきた後も、忙しく仕事を為されている。


 私はいつも通り……御主人様のお世話を開始した。毎日の仕事をこなして、それでも時間が空いたら、治療院に向かう。領主館の使用人、小間使いで癒しの術が使える人は治療院の手伝いをしている。治療院はオベニスの領民カードがあれば誰でも診てもらえるので、常に大人気だ。待ち合わせ室は順番待ちの人で一杯。


 元々、オベニスにあった治療院で癒しの術を使っていた術士様は、前の領主様がいなくなったときに一緒に連れて行かれてしまったらしい。空き家になっていた治療院を御主人様主導で復活させたのだそうだ。治療院専属の術士が四名、そのうちの二人も元は領主館の使用人、先輩だという。さらに私のようなお手伝いが常に数名いるが、行列を作る患者の方が遙かに多い。


 癒しの術は使えば使うほど、その能力が上がっていく。私は……御主人様のお力で、この治療院の術士の中ではかなり、難度の高い怪我も治すことができる。でも……ダメだ。いくら、癒しの術を使っても、御主人様の様な癒しは行えない。


 魔力制御もそうだけど、癒しの力が……御主人様に比べて弱すぎる。どうすればいいのだろう。多分、真剣さが足りないのだ。ギリギリまで自分を追い込んで……死ぬ直前まで……死ななければいい。もっと必死になろう。


 自分の腕に……短剣で傷を付ける。血が出る。もの凄く浅く斬ったので大した事は無い。うん。これを慌てずに癒す。……よかった。傷跡すら消えた。最初は……他人の傷を診ただけでアタフタしてしまって、上手く術が発動しなかったことを考えると、上達はしているのだ。うん。癒しの術自体も、上手くなってる。


 もう少し……強く腕に傷を付けた。痛い。でも、問題無い。癒す。癒す。御主人様の役に立たなければ、私など生きている意味が無い。


 痛さでアタフタしない……というのは、焦らないということ以上に、自分が怪我をしても御主人様を癒せるということになる。これは大切だ。


 私の全身全霊をかけて術を使おう。





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