0348:セタシュアさん、ほとばしる! その4

 春の80日。国から出陣要請が届き、西に出現した敵と戦うために、兵を向かわせることになるらしい。


 次の日にはイリス様やオーベ様たちが出陣して行った。今回、御主人様は留守番するのだという。良かった。また、危ない目にあわれるのかと思った。自分がというよりも、御主人様が危険な目に合われるのが怖い。


 ホッとして通常作業を行っていると、緊急命令が下された。家政婦長のデア様から全員に通達される。


「ここオベニスは大きな傭兵団に狙われているそうです」


 傭兵団! なんということでしょう……。悪い噂では盗賊団と同じようなもの。襲われて村が壊滅したとか、聞いたことがあります。既に攻めて来ているということが判明したそうです。数日しか有余が無いとか……。


 御主人様は、領民を危険から守るために尽力されているそうです。私はデア様に従って、御主人様の着替えや生活用品を用意します。


 避難すると聞かされて連れてこられたのは、オベニスの地下? でした。こんな所が……。


 というか、地下なのでしょうか? と思えるくらい、綺麗で明るく豪華な街がそこにありました。村じゃ無いです。朝になると明るいし、夜になると暗くなりますし。


 家とか道とか……全部新しい……ゴミもさっぱり落ちていないって、どういうことでしょう。


 御主人様によれば地下、しかも迷宮らしいけど……うーん。良く判らない。ここにある建物は全て御主人様が用意したそうです。え? 全部? なんで? 御主人様は大工さんではありません。


 というか、そんな魔術も使われるのだろうか? いつの間に……お忙しいのに。さ、さすが御主人様……。凄すぎる。


 それにしても。傭兵団がかなり街に迫っている。攻め込んでくるそうだ。私はどうしても、お役に立ちたくて、地上に待機することを志願した。もしも怪我人が出たら、多少とは言え、お役に立てる。そう思ったのだ。ううん、御主人様の側にいたかっただけな気もする。


 ギルドに向かう道すがら。ファラン様の肩を矢が射貫いた。血が、血が止まらない。


「癒しの女神よ、その御力を我が掌に、そして我ら子どもたちを癒したまえ」


 ああ、ダメだ、ほとんど効果が現れない。死の奔流の方が強いのだ。癒しの術よりも。私如きではどうにもできない……治す端から血が、溢れてしまう。


「御主人様、血が……止まりません。私の癒しでは……」


 何も言わずに、いきなり、御主人様が癒しの魔術を使い始めた。顔色が悪い。私よりも遙かに膨大な魔力をお持ちの御主人様……の魔力が尽きかけている? ああ、でも、血が、血が止まり始めて……肉が盛りあがって……。


「御主人様、ここからなら、私でもどうにかなると……思います、いえ、どうにかします。それ以上魔力をお使いになると、また、寝込むどころか、最悪命も失いかねません。今、御主人様を失うワケには」


「ああ……そうだな」


 御主人様は頷くと、魔力回復薬を飲んだようだった。あっという間に顔色が良くなる。よかった……。ここまで癒されれば、ファラン様はどうにかなるハズだ。意識は失ったままだが、呼吸は安定している。


 そのまま私は、ファラン様を支えて(兵士の人が手伝って運んでくれた)ベッドに寝かせた。


 その後。しばらくして、御主人様が言ったとおり、デア様に命令を伝えて、ギルド本部の隠し通路から地下の領主館に移動した。


 ファラン様はベッドでお休みになられている。


 御主人様の癒しの術でどうにかなった……とはいえ、命が尽きかけるところまでいった訳だから、しばらく側で様子を見ていなければ、怖い。

 良く判らないが、重い怪我を負った場合、いきなり体調が変化することがあるのだ。出来るなら数日は付いていたい。ファラン様は副領主様だ。御主人様と同じ様に失って良い方ではない。


 この状態で、癒しの術を途切れない様に掛け続けていると、深く眠りについて、回復が早くなる。とりあえず、私は術を欠かさないように注意した。この際に、瞬間的に過剰に術を使ってはいけない。この加減が難しい。


 短時間に大量の癒しは、かけすぎになってしまうんだそうだ。過剰回復というらしい。


 ファラン様の容態は……どうにかなった。と思う。まだ意識は取り戻されていないが、もう大丈夫……だろう。顔色も明るく、呼吸の乱れも無い。


 今回の傭兵団との戦いがどうなるか判らないけど……ファラン様から教えていただいている訓練を……もう少し増やそう。今のままじゃだめだ。御主人様の足を引っ張ってしまう……。というか、現実問題として足を引っ張っている。あんなんじゃ……あんなんじゃダメだ。





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