0347:セタシュアさん、ほとばしる! その3
御主人様が目覚められた。一言お声を掛けて、すぐにファラン様を呼びに向かう。
「後で呼ぶので、ここで待っていなさい」
「はい!」
ファラン様はかなり慌てた様子でモリヤ様の部屋に入って行った。少々激しい声が聞こえる。何かあったのだろうか?
しばらくすると、入る様に呼ばれた。一体……何が……。
「さて……セタシュア……何があったか話してもらおうか」
「……」
あ、あれ? あたし……?
「ああ、もう、別に彼女が悪いことをしたと決まっているわけじゃないんですから、そんな言い方をしたら」
「うむ、そうだな」
「セタシュア。えーと。昨日今日……いや、最近、何か変わったことはなかった?」
「御主人様が御倒れになりました」
「うん、ああ、そうだね。いや、キミ自身に……何かなかったかな?」
「わ、私に……です、か?」
「うん、何かこう、やりとげた! とか、やってやった! とか、これはスゴイ! とか、そういうのとか、変わった! これは違う! とか、何か閃いたとか」
「モリヤ、何を言ってるのだ」
! ば、ばれている? というか……なぜ? というか、最初から? あわあわわわわわあ……ああ、御主人様に嫌われてしまう、それは、それはいやだいやだいやだ、いやだ!
涙が……溢れてしまう。どどどどどどどどどうすればいいのだろうか。
ああ、私のせいで御主人様にご迷惑を……申し訳ない。もう、こうなったら何もかも……明らかにするしか……というか、光って見えるのは、幻じゃなくて、本当に光っている? 魔力? 魔術? え?
恥を覚悟で全てを告白した。恥ずかしいが、御主人様に迷惑を掛けるわけにはいかない。全ては私が悪いのだから仕方ない。
「セタシュア……泣かなくて良い。お前は既に魔術が使えるようになっている。しかも今後修行すればかなり高位の魔術士になることも可能なくらいの魔力量だ。つまり、元奴隷であろうとも、今後、働く先には困らない。良かったな」
「はい……御主人様がそんなことを出来ると知られたら……それ目的に多くの人が……」
「ああ、その通りだ。お前の御主人様に、そのスキル目当てで女が続々と近づいてくるぞ? さらに、それに目を付けた貴族、王族、いや、それこそ国そのものに狙われるやもしれん」
そ、それは困る!というか、た、大変なことになっている! 気がする。さらに私のせいで御主人様に無駄に他の女性が! それは大変なことだ!
とにかく、私の躯から漏れ出している魔力を制御できるようにならなければマズいらしい。ファラン様が直接お教え下さるという。ありがとうございます。本当にありがとうございます。
「ファラン様、よろしくお願い致します」
「うむ。短期集中で特訓するぞ?」
「はい、よろしくお願い致します」
これ以上御主人様に迷惑をかけないようにしなければ……。御主人様に御奉仕するのは当然だが、迷惑を掛けてしまうのはあり得ない。
必死で、ファラン様に言われた通りに、吐き続けながら特訓した結果、漏れ出ていた魔力は抑えられるようになった。しかも、言われたとおり、癒しの術が使えるようになった! す、スゴイ。
というか、御主人様はなんて偉大なのだろうか。こんな力聞いたことが無い。さすがです。
これで、御主人様のもっとお役に立てるかもしれない。魔術の訓練に励まなければ。御主人様は出張といって、様々な場所で仕事をすることも多い。
今も、北の方にある国で御仕事をなされているらしい。外交……とか言っていた気がする。これまでは御主人様を待つことしかできなかったのが、これからは魔力、魔術の鍛錬も行えるのだ。
これは素晴らしい。専属小間使いは御主人様がいないと部屋の掃除くらいしかすることがなくなる。その間、他のお仕事も手伝うけど、あくまで手伝いだ。時間が空く。そこで思い切り魔術の訓練を行う。素晴らしい。
しばらくして。御主人様が無事お戻りになられた。よかった。戦闘も多かったらしい。心配だ。イリス様たちと共に、敵の騎士団を相手に雄々しく戦われたそうだ。さすが御主人様。でも心配。私も一緒に行ければいいのに……。
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