0345:セタシュアさん、ほとばしる! その1
御主人様は私には興味がない。それは判っている。
そもそも、私は14歳なのに背も小さく、貧相な体格をしている。子供としてしか見てくれていないのだと思う。仕事をすればするほど、申し訳なさそうな顔をされるのだから。
何度も、奴隷誓約書を破棄して、隷属の術を解消しないかと言われている。それを解消されてしまったら、私と御主人様の間には何も無い。なのでそれだけは勘弁してもらいたかった。上手く説明出来ずにどうしても泣いてしまうので、御主人様を困らせてしまうのが申し訳ない。
そもそも、御主人様の地位は高い。
そうむぶちょうとかいう役職はよく知らないが、アーウィック家家宰でもあるのだ。アーウィック家の家宰ということは、御領主様、イリス様の使用人の中で一番偉い、ということになる。
私など恐れ多くて、女として見ていただくこともおこがましいとは思う。
でも……御主人様が好きでたまらない。はしたないとは思うが、どうしても、御主人様を目で追ってしまう。最初は私の事を女だと思っていなかったそうだ。汚い子供。なぜ買い上げていただけたのか良く判らなかったが、最近は、お優しいだけなのだということも判ってきた。
御主人様のお世話をするのが嬉しくてたまらない。なんとなくそろそろ、何か飲みたいのでは? というときにお茶をお出しして「飲みたかったんだよね」と言われたりすると、天にも昇る気持ちになる。
洗濯をするのも楽しい。私が綺麗にして、畳んで、さらに用意しておいた服を着ていただけるのだ。
非常に嬉しい。着替えの手伝いはさせていただけないのが悲しいが。
ベッドメイクも毎日ワクワクする。何よりも、シーツや枕カバーに御主人様の匂いがする時があるのだ。御主人様はあまり体臭がない。ほぼ毎日お風呂に入られるからかもしれない。
お偉い貴族様でも、お風呂なんて数週間おきに入るものって先輩に聞いたけど……領主様のお屋敷だから? なので、あまり匂わないのが残念だけど、御主人様の匂いのするシーツに、つい顔を埋めて大きく匂いを吸い込んでしまう。毎回。
一生お世話をさせていただきたい……と心の底から思っているのだが、当の御主人様は、私が気を使ってそう言ってると頑なに思い込んでいらっしゃるようだ。
ある日。
御主人様がイリス様に背負われて部屋にお戻りになった。
意識を失っている! ああ、御主人様に何かあったら! と気が気ではなかったが、ファラン様が言うには、ただ単に魔力が足りなくなって倒れただけだそうだ。魔術を使おうとする子供なら誰もが経験しているという。私は子供の頃から気がついた時には既に奴隷だったので良く判らないが。
私の記憶は……奴隷として使われることから始まっている。何歳だったのだろう? 四~五歳だったかもしれない。その頃は、比較的ましな御主人様に使われていた気がする。何か小さいものを運んだり、挨拶をするだけで褒められた。イケナイことをすると棒で叩かれたりもしたけれど。その方が亡くなって……違う方に売られて……さらに、その次の御主人様もお優しかった。
商店を営むメイル様……はお歳を召されていて、荷運びが上手くできず、接客も辛い日があるということで、私を買われたのだ。言葉使いやお釣りなどの計算方法、礼儀作法、さらにこの世界、社会のことはこの方に教わった。娘とはいわないまでも、奴隷にしてはもの凄く良い待遇だったと思う。あまり飲み込みの良くなかった私は、叩かれながらだったが、様々なことを学ばせていただいた。
メイル様が亡くなって……遺産相続人の甥の方が来て……そのまま売られて……そこからはあまり記憶が無い。
毎日毎日、荷運びと、魔物の囮役といった、辛い仕事ばかりをやらされていた……様に思う。何しろ、そのころの記憶が曖昧なのだ。細かい日々のことは本当に覚えていない。
だけど。すり切れていくような、千切れていくような辛い日々だったことだけは覚えている。
右足は上手く動かなくなり、左手も常に痺れてモノも持てなくなった。奴隷を街から街へ売り歩く商人に連れられて、オベニスに着いた時には……何も考えられない感じになっていた。
あの時、御主人様に買われて、数十日は……記憶が薄いのだ。それからだ。今の私がどれほど幸せなのかを自覚出来たのは。
御主人様は魔力を増やす訓練を開始したのだそうだ。
数日寝込むし、辛そうかもしれない……遅くても夜中には目が覚めるので、起きたら水や消化しやすいモノを食べさせるように……と言われ看病を開始した。それにしても……そんなことがあるとは……。魔力、怖い。
御主人様は、ファラン様の言われたとおり、辛いのか、一度起きた後、その後二日間ベッドから起き上がれなかった。たまに目覚めては意識を失うっていうのを繰り返した。キチンと起きたとき、ご自分でも時間経過にビックリしていた。
着替えと、身体を拭くためのタオルとお湯を用意する。御主人様はお風呂だけでなくお湯浴び、シャワーもお好きなのだが、しばらくは朝に躯を拭いて汗を拭うことにしたようだ。ふらつくのだという。出来れば身体を拭くのを私がしたいのに。させてもらえない。悲しい。
起きられて食事を取った後、すぐに御主人様は御仕事に向かわれた。さらに魔術の訓練、しかも今後、継続して行うそうだ。大変だ……領の御仕事だけでも大変なのに……魔術もなんて。
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