0333:茶色のヤツ

「ん? モリヤ、なんで自分だけその茶色のヤツなんだ? スゴイ匂いだな」


 茶色のヤツて……。うん、まあ、知らなければそうとしか言えないのかもしれないけどね。うん。その言い方はちょっと食欲的にね。ええ。


 まあ、そんな感じでイリス様が興味を持った。生姜焼きと違って大きな鍋で大量に作ったので余っていたのと、ご飯を炊くのを料理長に頼んだからこちらも結構多めに炊いてしまったということで。


 勿体ないからと、俺も食べることにしただけなんだけど。うん、久々のカレーはなかなか旨い。スパイスからしか作れないからスパイシーだし。笑。


「これは……俺の国の定番料理です。家庭料理でもあり。故郷を感じる料理でもあり」


「ああ、だから彼女たちに……」


「まあ、郷愁というよりも、ちょっと前のことを思い出してしまうのか、またも大きく泣かれてしまいましたが」


「難しいな……その辺」


「ええ……」


「それは判ったから、それが欲しい」


「え? カレーですか?」


「イイ匂いだ」


「まだまだあるので……というか、オーリスさんにイリス様も食べると伝えて、用意してと伝えて」


 小間使いが厨房へ向かう。


「旨いな……これ。スゴイ旨い」


「ああ、複雑な味だが……美味しいな」


 イリス様だけでなく、ファランさんも気に入ったらしい。


「モリヤ! これは毎日でもいい」


「……これ、香辛料にかなりダンジョンポイントを消費するんですよ。現状、市場では手に入らないモノばかりですからね……遙か東、そして南の名も知られていない国と交易できればいつかは……」


「そもそも国があるのか?」


「既に無いかもですね~数百年以上前に物流も途絶えてるみたいですし。魔物のせいで」


 ということで、今後もしばらくは彼女たちに出す時にオマケとして……で我慢してもらう。茂木先輩が作ったっぽいオリジナルだからか、馬鹿高い(ダンジョンポイントだけど)んだよね……。


「相談?」


「はい」


「では領主様のところへ行こうか」


 夕食後。彼女たちの面倒をみさせているモリヤ隊、フリアラに呼び出された。宇城さん……と、八頭さんの二人が黙って後を着いてくる。領主の応接室には、イリス様とファランさんが打ち合わせをしてた。


「私は宇城美帆里と申します。元々生徒会長をしていたため、現在も彼女たちの代表をさせていただいてます」


 イリス様は……彼女たちがある程度冷静に物事を考えられる様になってから、会う予定になっていた。だって、殴って穴に落とした張本人だし。


 で、その際にちゃんと名乗ることになっている。これは、万が一……誰かが戻ってしまった際の情報漏洩を防ぐためでもある。


「まずは……代表して御礼を言わせてください。あの地獄から救出していただいて、ありがとうございました」


「ああ。気にしなくて良い。正直、我々は貴方たちが地獄にいた……ということも良く理解出来ていなかった。全てはそこのモリヤのおかげだ。感謝するなら彼にしてくれ。で? 何だ? ウシロ。何か不満か?」


 イリス様は優しく笑いながら話しかける。暴力の女神とは思えない、柔らかな、暖かい表情だ。惚気になるが我が妻とは思えない。美しい。


「いえ、不満など一切ありません。それに……まだ、それに気付けるほど、みんな回復してません……残念なことに」


「ああ、そうだな。だが、それはウシロと……」


「八頭未来です。よろしくお願い致します」


「ヤガチラ、いや、ヤガシラか。もそうであろう? しばらく休んだ方がいいと思うのだが」


「はい……そうかもしれませんが……少々……お聞きしたいことが……あの、その……本人を目の前に失礼なのは判っているのですが、杜谷さんの言ったことはどこまで本当なのでしょうか?」


 あれ? ああ……そうか、信用されてなかったか。というか、そういえば……俺、役職とか名乗ったかな? 名乗ってないか。日本人なのは言った。けど……それを信用すればするほど、なおさら、俺の言う事なんて信用できないよな。そりゃ。自分たちと同じ日本人の界渡りが、そこまで領の運営に食い込んでるなんて……想像できないだろうし。


「モリヤの言ったこと?」


「ああ、ここは安全なのでしばらく静養してください……くらいですかね」


 そんな様なことしか言ってない。


「と言うことだが」


「イリス……それでは多分、彼女たちには伝わらん。すまんな、うちの領主様は、イロイロな意味で残念な所が多くてな」


「残念では無い。領主に向いてないだけだ」


「まあ、そうだな。お前は戦っているのが似合っている」


「うん」


 宇城さんと八頭さんも、そう思ってる。そんな顔をしてる。






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