0332:忘れてしまいそう

 ん? ちょい待ち。茂木先輩は何年もあの部屋に引きこもって漫画を描いていた。ということは、カレーもあそこで食べていた。すなわち、街へ買い出しに行かなくても、材料を入手できるようになっていたハズだ。


 魔道具製のキッチンにあった食料っぽい物は、ほぼ炭化している。調味料っぽい物も全滅していた。


 迷宮編集の作れるモノリストを書きだして、屋敷に戻り、その中で料理人が見たことの無いモノをチェックしてもらう。

 固有名詞はこの世界ではほぼ別名で呼ばれている。界渡りの能力で語学を習っていなくても、読み書きできる。意味があるモノであれば、それも翻訳されて理解出来る。実物が在ればそれも翻訳される。のだが、それがまとまっていない場合、読めても、中身とは一致しない。

 

 なんか原理が面倒なので解析していなかったが、そんな感じのようだ。


 胡椒はキゲルという。キゲルと聞いて胡椒は思い浮かべない。が。胡椒の実物があれば、それを見て、モノを認識した時に胡椒と翻訳される。胡椒を見て、始めて、その物の意味が伝わってくるってことなんだろうか? ありがたいが、その辺の微妙な制限が良く判らない。


 ということで、茂木部屋のタブレットから、香辛料っぽいのがリスト化されている部分を書き写して、チェックしてもらった。うん、やはり……かなりの数存在しているが……無い物が多い。つまり、茂木先輩が居た時代の方が、香辛料的には充実していたってことなんだろう。


 あとは、その中で彼女たちが知らないという香辛料を片っ端から手に入れていく。……あった。茶色い! オゼラ……というのが……これ、クミンだろ! やった! クミンさえあれば! どうにかなる! と、思う! だってホラ、ちょっと俺の知ってるカレーの匂いするもん! これにイロイロ混ぜていけばどうにでもなるもん! やった!


 あまりスパイシーにしても食べられない娘もいると困るからな。通常のカレールーの甘口が出来れば良い。チェックしてもらった十個くらいの香辛料と、元々存在する香辛料の中から、なんとなくカレーっぽい匂いのするものを少しづつ混ぜていく。


 黄色くなるのはターメリック……ウコンか。ウコンは……お世話になったなぁ。酒飲んだ後とかに。


 辛くなる唐辛子的な調味料は既存の物を使えば問題無い。って大して入れないけど。油で香辛料を炒めて、そこに小麦粉とバター。おうおう。ルーになった! やった!


 焼いた肉と野菜をちょい煮込んだ鍋に、それを加える。うん。久々に作ったにしてはちゃんとしてる。肉も野菜も質が高いからな。


 そして。


 正直、拙いカレーが完成した。うん。で。


 食事にカレーライスを出すと、また、大号泣となってしまった。


 ああ。自分1人で盛りあがってしまって、ついついやってしまったけれど。これ……どうなんだろう。あまり泣かせてもいけないんじゃないだろうか?


「あの。あのさ。あまり日本の食べ物を、懐かしい食事を出さない方がいいかな? みんなを……泣かせたいわけじゃないんだ。できるだけ日本で食べていた様な……口に合うモノをちゃんと食べて、体調を良くして欲しいなっていうだけでさ」


「……ありがとうございます。モリヤさんの心遣いは全員理解出来ていると思います。カレー……なんて再現するの大変だったんじゃ無いですか? この世界、食事に関してもの凄くおざなりですよね……。香辛料の種類もあまり出回ってないみたいですし」


 宇城さんが相変わらずちゃんと答えてくれる。彼女以外だと目の色がしっかりしているのは、八頭さんという、ちいさい娘だ。彼女……年齢は14歳で飛び級して高校生になったらしい。優秀なのに……こんな召喚で……。ってまあ、ここに居る娘たちは全員、スポーツエリートだしな。インハイ経験者で。


「とりあえず、ご飯はちゃんと毎食食べられるようになると思うから。パンが良いという人はそれを教えてください。あと今、うちの人に、君たちに施された隷属の術の詳細を調査しに行ってもらっています。その情報が届き次第、解呪できないか、試してみることになると思います。不安だと思いますが……もうしばらくゆっくりと休んでください」


 頷く……くらいは出来るようになっている娘も多い。


「ただ、それまで何もしないっていうのは勿体ないので、協力いただける人には解呪解術の実験に付き合ってもらいたいと思います。協力者を募集します。イヤだと思う人に何か強要することはないので安心してください。まあでも、とにかく、しばらくは休む。それが大事だと思います。この療養所の周りなら外へ出ても問題ありません。散歩したりゴロゴロしたり。心を休めてください」




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