0322:紅武女子運動部バスごと異世界転移事件③
「なんで……なんで……」
その頃になってくると、この団体の中でも最上、世代別なら世界最高峰の英知を誇るハズの八頭未来ですら、泣き言と単純な思考しか頭に浮かばなくなってきていた。
それこそ、二十名がアルメニアで死闘を繰り広げられていた時、残りの十四名は……留守番休息などあるハズも無く。恒例の街や村への略奪に駆り出されていたのだから。
特に……とある街には周辺の避難民が数多く逃げ込んでいた。戦えない者。赤子や妊婦、老人や傷病人も多く、その数は千人規模に膨らんでいた。
そこを。戦乙女十四名のみで処分させられたのだ。何人斬っても、斬っても斬っても。請われ泣かれても、それごと突き刺す。例え自分がそうしたくなくても躯は動いてしまう。
最終的に半分意識を失いつつ実行するか、血涙を流しながら実行するか、しかなかった。
感覚が麻痺していく。というか、感覚という器官が既に痺れてしまって、何も感じなくなっている。いや、感じないように切り離さなければ、自分を保てない。こういうのも生存本能っていうのだろうか?
今どこにいるのか? 疲れているのか? お腹が空いているのか? 立っているのか。何もかもが分からない。それでも命令を聞けば……そのまま体は動いて行く。自分が嫌だと思ってもどうにもならない。
その状況のまま。さらにメールミア王国への侵攻が開始された。というか、侵攻軍の足は止まらなかった。「戦乙女」たちには、とにかくメールミア王国の王都を墜とせ……としか言われていない。
というか、同行している彼女たちに命令を下す指揮官や、上級兵ですら、同じ命令しか受けていなかったのだ。
後ろから迫ってきている国王率いる精鋭、本隊は、別に援軍ではない。追いつかれたらそのまま督戦されてしまう可能性もあった。なので……先鋒は碌な偵察も行わず、戦乙女を先頭に立てて、とにかく突き進んだ。
メールミア王国への侵攻もこれまでと同じ様に、都市や拠点を襲い、周辺で略奪を行い、先へ進むの繰り返しだった。
ただ、既に避難が進んでいるのか、人が少なく、モノや食糧が持ち出された所も多かった。たまに多くの金銀財宝、食糧を貯め込んだ城砦都市があったので飢えなくて済んだ。抵抗は激しかったが敵ではない。さすがにあの規模の都市を捨てる事は出来なかったということだろうか?
王都に向かって進む上でどうしても通らざるを得ない場所が有るという。クラビアル草原。敵、王国軍はそこで待ち構えているとのことだった。
その数は五百以上。……以上という偵察は有り得るものなのだろうか。「戦乙女」がいるとはいっても、そんな戦争の仕方があるのだろうか? 村同士の水利争いでももう少しまともに戦略を立て、作戦を実行するだろう。
まあ、最上の戦略で戦術で「戦乙女」を戦力として使われていたら……それはそれでみんなの心は病んでいったかもしれない。ここにいる全員が未だに、全く折り合いが付いていないのだから。この世界との接点が良く判らない。居場所がない。強制的な隷属支配は彼女達から生きるための何もかもを奪っていた。
そのクラビアルの戦いの寸前、略奪を行った村で、フェンシング部の山東瞳が、村の少年にショートソードで太ももを貫かれた。反射的にその少年は首を刎ねられたが、罠を利用した一撃は非常に重く、太ももは寸断寸前まで断ち切られており、癒しの術ですぐに回復できるレベルではなかった。後方で治療を受けるため、リタイアとなった。
メールミア王国との決戦場には三十三名が向かうことになる。
既に気力、体力、精神力全てがすり切れ、無力感と無気力が支配している。このまま、命令通りに剣を振り続け、いつかは力尽き、死ぬだけなのだ……彼女たちの中でそう考えていない者は誰もいなかった。
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