0321:紅武女子運動部バスごと異世界転移事件②

 侵攻軍の再編成は行われず、補給は、現場での略奪で賄われた。


 その際に、「戦乙女」と呼ばれている自分たちの中から数名が方々へ派遣される。付近の街、村の前で「全員殺せ」と命令されてそれに従うしかない。


 女子供、老人を含めた……虐殺が行われた。街の守備隊など、多くても百。少なければ三十くらいの兵士で構成されている。それを蹴散らすのは簡単だった。心もそれほど痛まない。明確に敵だからだ。ただ。その命令は街の中にいる者をことごとく殺せとなっている。


 剣が槍が弓が……敵国に所属しているという理由だけで、一般人に向かって振るわれていく。


 当然の様に、それまで一度も人を殺したことなど無かった彼女たちの心は……早急に蝕まれていった。別に彼女達で無くても。この世界の住人でさえも、子を庇う母をまとめて貫いたりはしない。愚者の命令は……自分たちですらやらないような蛮行を生み出していったのだ。


 界渡りという異世界からの「異分子」に責任を押しつけ、それに敬意や感謝を抱かせない様に。


 しかも。その略奪虐殺とほぼ同時に、本隊はイガヌリオ連邦を縦断しつつあり、止まらず。さらに、その中から五名は北のアルメニア征服国へ別行動を命じられた。何故か? 目的地であるメールミア王国への進路を「間違えた」のだ。


 作戦を練って侵攻するべき軍隊の行動ではない。というか、国の侵攻軍の体を為していない。


 まさか……だった。八頭未来はここに来て、自分の思考の根底に壮大なる「勘違い」が含まれていることに気がついた。


 この目に見える、多くの人々が死んでいる侵略行為は……「戦争」ではなかったのだ。子供が蟻の列を蹴散らす様に、ただただ、自分の得た「おもちゃ」の力を振るい続けているだけ。それによって「おもちゃ」が壊れても、何も気にしない。


「壊れちゃった。じゃあ、家に帰ろう」


 でしかないのだ。多分。


 つまり……自分たちは出しっ放しにされた命令、「無駄口を叩くな」「敵を倒せ」という基本命令に従い続けなければならない。どんなにダメージを受けても、回復されずに、戦わされる……のだ。もしも……死んでも何一つ問題無い。よく考えなくても、実は自分たちと共に進軍している兵は……使い捨てられること前提の死兵で構成されていたのだ。彼女たちには、その程度の情報を探る時間、機会すら与えられていなかった。

 

「イリスや美丹たちが死んだ?」


「……なので以下の二十名はアルメニア征服国へ向かえ」


 アルメニア征服国で別行動していた五人が……死んだ。強者と呼ばれる王に率いられた部隊に殺されたという。この頃既に……「戦乙女」と言われた女学生たちの心は完全に病み、ブツブツと独り言を言い続けている者も多くなってきていた。中には生きることを拒絶し始めてる者も。


 アルメニアに向かった五人、弓道部の後藤イリス、アーチェリー部の険山冬理、新体操部の未丹蘭、庄内理央、クライミング部の下柱香織のうち……後藤、美丹、庄内の三人はその傾向が強かった。精神が死んでいる状態ではその能力が如何に高くても、生かし切れるはずが無い。


 五人の中には、クライミング部の部長の下柱や、アーチェリー部の副部長の険山冬理といったまだ、精神的に耐えてた責任感の強い者もいた。が。多分……残りの三名を庇う形で命を落としたのだろう……。


 その後、二十名の戦乙女と共にアルメニアに向かった部隊は、アルメニア王を含む精鋭部隊を尽く撃破。亡くなった五名の遺体は、城門前に晒されていた。ただ。投石によってほとんど損壊し、肉片しか存在していなかったそうだが。


 そのアルメニア戦でも合計四名の負傷者が出た。テニス部副部長の大橋瞳、陸上部の光見安美。「戦乙女」の主力である薙刀部の牧田可奈と剣道部の谷津射伊南も戦線を離脱した。


 特に、牧田と谷津射は右手と左足を切断され、部位損壊状態となり、この世界の魔術でもそれは復元できない、癒やせないとのことだった……。


 死傷者が晒されたことと、さらに負傷者が重傷で戦線を離脱したのがさらに、彼女たちの精神に重圧を掛けた。


 その状態からでも残った三十四名はそのまま、メールミア王国への侵攻に向かわされたからだ。




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