0320:紅武女子運動部バスごと異世界転移事件①

 最悪の状況が続いていた。正直……為す術が無い。音声による命令の入力。その抗えない強制力。自分でも愚かで下らないと思っていても、従わざるを得ない。生活環境の低下、食生活の悪化、体調管理以前の重労働、突発的な襲撃対策による睡眠不足。当然のことながら、思考能力も低下している。


 八頭未来の「紅武女子運動部バスごと異世界転移事件」に追加されていくファイルは……最悪に次ぐ最悪の内容ばかりだった。


 正直……周囲を眺め、じっくりと考え、準備を行い、現場に当たれば、これまではずっと、なんとかなってきた。自分の情報処理能力を初めとする知恵は、困難を打開するための方法ややり方を提示してくれたのだ。


 だが。この世界に召喚されて以来時間が経過すればするほど……「為す術が無い」という絶望感、そして虚無感が増加し続けていた。とにかく余裕が無いのだ。


 彼女たちを召喚した王は……明らかに頭が悪いと思われた。戦略も、用兵も兵站も何もかも判っていない。騎士や戦士たちの心の機微を読み解くこともできない。ただただ、目的を叶えるために、力で殴り続けるだけだ。


 その殴る拳は自分の拳でないので痛まない。拳が破れ、肉が飛び散り、骨が突き出しても、王には何の関係も無い。


 王の、経営者の、まあ、なんでもいいから長としての才能は無いだろう。


 今回、あの愚王の手に入れた戦力は圧倒的、脅威的と言っても良いレベルだった。既に伝説、神話レベルの言い伝えにしか残っていない、召喚された界渡りの勇者。たった一人でも時代を変え、時代を生み出すことがあったというのに……自分にはそれが四十三名なのだ。どこか根本で勘違いが始まったとしても致し方ないと言えよう。


 王=命令者はその強大すぎる暴力に、いてもたってもいられなくなったのか、とにかく身近な敵に襲いかかって行った。あまりに散漫で手当たり次第なやり方に、積極的に作戦に対して助言しようとしていた八頭未来は翻弄されてしまった。どうすればいいのか思案しすぎて、堂々巡りを始めてしまったのもあった。


 現実問題、王のそのやり方は……本当にバカの無策でしかなかったのだから。


 賢き者はどうしても、物事の裏を読もうとする。八頭未来にも「さすがに一国を率いる王が本当のバカではないだろう」という思いこみが存在した。それが先を読む思考を阻害する。


「軍は……どこかで大規模な補給、補填を行わないと、破綻します」


「ええ。王は……妙にメールミア王国の王都に拘っている様だったけど……このイガヌリオ連邦の向こうの国を攻めるには、どこかで再編成が必要なハズ」


 八頭未来は、生徒会長であり、この異世界転移でもリーダーであろうとしている宇城美帆里とこまめに相談、作戦会議を行っていた。


 宇城は学校一の有名人というだけでなく、個人でインターハイ優勝もしている上に、全国模試で常に五十位以内をキープしている。文字通り、文武両道、才色兼備を地でいく。説得力やカリスマ性も異常に高かった。


 いざという時、即行動に移るには、飛び級してきた年少者の自分では無理なのだ。会長が動かなければ全員は付いてきてきてくれないことは明らかだった。


 賢すぎた。


 ……残念だったのは、未来も美帆理も、二人とも智に長けており、知に富んでおり、この乱世では軍師としての才も高く、賢き者として、つい裏を読む癖があったことだけだ。


 この世界の標準よりも遙かに高いレベルで状況を把握しつつあった二人は、現実問題として……侵攻状況、今後のことを合わせて考えた場合に、どこかで再編成を行う必要があると思っていた。


 その際には隷属の術を使う者の所属や階級などを考えた上で自分たちを配置しなければならないので、確実に時間がかかるはずだ。


 時間があれば……王本人、本陣からは既にかなり離れている現状、何か隙が生まれる、そこを突くしかないということで、二人の考えは一致していた。


 が。愚か者の愚行は、まれに、前の世界と、今の世界、二つを合わせた中でも有数の賢き者の思惑を力尽くで超える。



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