0323:紅武女子運動部バスごと異世界転移事件④
戦場では敵と対面して、自分たちが横一列に並ぶ場合が多い。八頭未来は本当に、これは愚かで唾棄すべき、戦術という言葉を使うこともおこがましい「やり方」だと思っていた。
だが、彼女は知らないだけで、事実、地球の戦乱の歴史、黎明期には、似たような戦法が使われていたのだ。孫子が書かれた紀元五百年よりも前、いや、中国の場合「春秋戦国」などの神話レベルの戦史が存在する以上それよりも遙かに前かもしれないが。
強力な戦力、戦士が存在した場合、それを横に並べて行軍する、会戦するという陣形……というか戦法はそれなりに有用だったのだ。
まあ、当然、地球では強力な戦士と通常の戦士の差がそれほどではなかったため、使用武器毎に隊が組まれて、それ毎に運用されることになり、さらにそれを有機的に組み合わせて陣形や戦術が工夫されていった。
そう。ただ。この世界では強者と一般の戦士との差が大きいことで、それ以降が工夫されなかった。なので強者を前面に立てるのはそれなりに効果的で、当たり前の考え方なのだ。当然、その側面から兵を走らせたり、伏兵を仕込んでおいたりと、強者のみに頼るということもそうは無いのだが。
八頭未来は天才でも、さすがにそこまでの情報を知るほど、歴史、戦史、古代マニアでもなかった。さらに、こちらの世界の詳細、常識やモラルなどの基礎的な情報がさっぱり足りていなかった。
「あぅ……」
だが。頭脳明晰な彼女であっても、既に思考は白濁化し、既に人間としての意志を維持することが出来なくなりつつあった。何か、言おうとは思うのだ。思考し続けることは大切なコトで、彼女の武器の一つなのだから。人間は話すことから文化を生み出し、進化し続けて行った。
これが普通の……それこそ、大会などの戦いであれば「がんばろう」や「よしやるぞ」なんて言葉が自然に口から呟かれる。それに合わせて頬を両手で張るなんていうこともしたことがあるだろう。
それが出来ない。声に出来ない。隷属状態での戦闘は……頑張って良いモノではないのだ。そのために口から漏れるのは、溜息というか、声にならない音。音の付いた息が漏れるというのが正しいのだろうか。
あまりに怒濤の。血の嵐の繰り返し。最低限の食事……濁った水と野菜のスープ、パン、干し肉……は口にしている。特に干し肉は身体が塩分を求めているだろうと、無理矢理囓るようにしている。これは戦場を移動し始めた最初期に、この食事構成だと、干し肉を食べないと塩分が足りなくて倒れる……というようなことを宇城会長が言っていたから癖になっただけだ。
身体を拭くのも毎日ではない。身体を拭く水で、洗濯も行う。与えられた下着なども最低限の数しかない。当然……生理用品などあるハズも無い。衛生環境的にも著しく低下している。
野営に次ぐ野営、使い古した毛布は蚤、ダニは当たり前だ。沼の行軍では吸血蛭が皮のブーツに入り込む。さらに異世界の蚊は放っておくと卵を産み付けられて、吸血部分一帯の肉が食い千切られてしまう。
劣悪。環境面だけでも最低な上に精神的にも追い詰められる。気が狂う……という言葉の本当の意味がわかりかけている気がする。というか……既に何名かは戻れないレベルに陥らされているのかもしれない。
既に仲間を気遣う余裕すら無い。周りを見れない。誰も判らない。人間としての尊厳は徐々に踏みにじられていた。
これが判りやすく迫害を受けたのであれば。もう少し精神的に有り様があったかも知れない。だが。王を始め……命令を下しているビジュリアの首脳陣、上層部、そして軍全体を含めて「これが当たり前」だったのだ。
なので、彼らに迫害しているなどという意識は一切無い。なので。彼女たちは自然に、ごく自然に押し込められていった。
そんな精神的な疲労に加えて……肉体的な疲労も蓄積していた。怪我をしたり……それこそ、死亡した者が出始めたのは、どちらかといえば、そちらが原因なのだ。一晩寝ても、最大HPまで体力が回復していない……通常時の三割程度の体力で戦闘開始すれば……それは事故も多くなるに決まっている。
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