0318:生姜焼き無双
「で。おかずは、切り分けてもらったこの肉に、この生姜を擦ったものと、醤油、砂糖、みりんをいれてよく揉んで~焼きます」
肉は名前は忘れたが、確か魔物の肉で、脂身が少なく豚肉の食感に近い。俺が好きだと言ったら、たまにこの肉を使った料理を作ってくれるのだ。それをお願いしておいた。猪の豚よりの魔物?
「この黒い調味料。これは自分の知る限り最強最高傑作だと自分では思っています。醤油というんですが~大抵の食材の味付けに使用出来て美味しくなります。焼いた肉にかけても美味しいですし、煮込み料理に使っても最高です。まあ、貴重なものなので、量産化出来るまで大量消費はできませんが……」
揉み込んだ肉を焼く。簡単だ。生姜焼きになる。というか、久々の醤油と生姜の匂いに俺もヤバイ。涎が溢れるってこういうことをいうのか。付け合わせにキャベツ(と、俺が呼んでいる似た野菜)を刻んで。盛り付ける。
最後に味噌汁。なぜか一番ダンジョンポイントが高かったのは「鰹節」だった。おかしい程高かったし、さらに当然だが鰹節削り器……が存在しない。なので今回は諦めた。
仕方ないので、比較的安かった昆布のような海藻と、元々調理場にある椎茸っぽいキノコで出汁を取ることにした。ほん〇しは無理だったのかな。さらに味の素も無かった。……茂木先輩の偏りが、なんとなく理解出来る。俺も同じ様なもんだったな……上辺だ。上辺。自炊手前というか。
沸騰しない程度の温度でしばらくつけ込んで、ぐつぐつきたら止めて時間を置いた。海藻とキノコは取り除く。うん、自分が思っていたよりもイイ感じの出汁だ。さっきの海藻よりも薄いヤツと玉葱に似た野菜を刻んでちょっと煮て、火を止めてから味噌を溶く。味噌は沸騰させちゃダメ……だったよな?
ああ、これも……良い香りだ……。
「モリヤ様は……本当に料理人じゃ無かったのですよね?」
メモりながら手伝ってくれていたオーリスさんがなんかビックリした表情で見つめている。ああ、そういえば、これまで俺が少し台所仕事をしていたときは一人でやってたか。夜中とかに。
「ええ。普通の……それこそ外食ばかりの独身者でしたね。料理なんて……年に数回かな」
「なのに……これだけの……コツを知っていると?」
「子供の頃に通う学校で、料理もちょっと習うのです。家庭科といって縫い物とかも習います。ああ、できた。これを、昨日連れ帰った娘たち用で出してもらいます」
「ええ、30名程度でしたね? 問題無く作れるかと。出せると思います。火加減と、ちょっとコツさえ判ればそれほど難しくない料理ですし」
「でも……この醤油と味噌ですか? スゴイですね。私も好きです」
「あ。私も。味噌は~うーん。見た目で……好き嫌いもあるかもですけど、味はスゴイですし。醤油に関しては言われる通り……イリス様の食事で使ってもいいですか?」
「ええ、構いません。ただ、しばらくは量が用意できないので、内密に。この屋敷と子供たちだけということで」
「はい」
二人と共に試食した生姜焼き定食はあっという間に完食された。
そして……数日後。癒しの術と泉の水のおかげで外傷はほぼ癒えた……と思う。これまで、醤油味なオートミールやパン粥だったが、癒しの術のおかげで躯的にはすっかりと治療出来ている。普通の食事を採っても問題無いだろう。
彼女たちの食事を病人食から通常食に戻す。
俺も手伝って用意したのは、さっきよりも柔らかめのご飯。そして味噌汁。生姜焼きも食べやすいように柔らかく仕上げてある。
食事だと声をかけてもらう。全員が食卓に着いた。到着時には意識が無かった娘も……今は全員起きている。
心配していた……絶対に部屋から出れない……という娘はいない様だ。メンタルの調子で籠もりがちになる娘が二、三人いるのはしょうがないだろう。
例え食べる気になれなくても、夕食だけは、なるべく食堂で取る様にと、話をしたのだ。
そして……全員、用意されているモノに……ビックリしている。
「寝ていて初めての人、モリヤです。ここにいる詳細は聞いていると思うので省略します。で。ごめんなさい、自分は日本に居た頃、料理をしない独身の中年オヤジ会社員でして、ちゃんとしたレシピなんてほぼ覚えていません。まあでも、簡単で作れそうだったのは生姜焼きかな……と。ご飯も完璧じゃ無いし、味噌汁も出汁の取り方自体からちょっと間違ってるかもしれません。ですが……この世界に来て初めて、ちゃんと料理をしました。大変な部分はうちの料理人さんにやってもらいましたが。偶然……少量ですが、醤油と味噌が手に入って良かったです。口に合わないようなら、パンとスープも用意してあります。では。いただきましょう」
箸を取る。ちなみに、箸は木を削って作ってもらった。
? 動きが無い……。あの宇城さんですら……止まっている。ゆっくりと……箸を取り……お椀を……いや、持ち上げる前に手を合わせた。
「いただきます!」
必要以上に宇城さんの大きい声が響いた。それに推されるように、みんなも口々に「いただきます」と呟いた。これまでずっと下を向き、俯いていた子も……小さな声で呟いていた。箸を……手に取り、お椀を口に付ける。
「ああああああああああああああああああああああああああ」
誰ともなく、声が漏れた。宇城……さんも……号泣していた。全員……例外なく……。
後頭部……首の上辺りが非常に熱い。
誰が。悪い。誰のせいだ。
ビジュリアの王か? ビジュリアという国か? さらに、彼女たちを捨て駒として、使い潰すしか考えつかない低能としか言いようのない知識レベルか? いや、そもそも……過激な男尊女卑に端を発す、愚かすぎるこの世界の文化レベルか?
震えが来るほど熱くなっている自分がいた。
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