0309:剣道vs現実

 両手剣を……日本刀持ちというよりも、竹刀持ちしている少女。腕力が向上しているのだろう。金属の塊であるアレを、何の問題も無く振り抜けるようだ。ああ、なんか見たことがある……と思ったら、彼女、すり足だ。右足のかかとを上げて若干前に出し、左足はそれを追いかけるように擦る。


 前後左右に動き瞬間的に竹刀を振るう、剣道という瞬発力を重視するスポーツであれば、まあ、それはそれで問題無い。高段位になると、当てただけじゃ一本は取れないし、斬り落としの意思が大きくなるのだが。


 というか、実戦と、その辺のその差がわかった上で、敢えて、すり足を採用しているというのであれば凄く強力な武器になるとは思う。が。


 両手剣ってね。イリス様と共感していると判るんだけど、手首の返しが非常に重要というか、剣先の遠心力を使用して、振り回す場合が多いというか。なので持ち手の位置や力加減をさほど固定しない。常に移動させてこねくり回すように操ることが多い。


 手で剣を振り回す動作と、足、脚の動きは連動していないことも多いというか、わざと連動させないというか。説明難しいけど。


 逆に動くときは全身……特に上腕、腰、脚の三部位を別モノの様に動く。これはイリス様がとんでもないだけかもだけど。


 ま、とにかく、竹刀、せめて日本刀であればそのスタイルで問題無いのかもしれないけど……ああ、ほら、普通に振りかぶって振り下ろすんじゃ……。


ガシュ!


 両手剣が派手に地面に食い込む。そりゃそうなるよね。ああ、それも有りなんだ。ワザと躯を飛び込ませて強引に腕力で再度振り上げる。おお。なかなかトリッキーな。


 でもさ。無駄だよね。その動き。


「それは大地では動きにくかろう」


 一瞬で間を詰めたシエリエがもの凄く自然に、剣を握る指を絡め取る。振り下ろしに剣が地に食い込み、その瞬間無防備になっていたのは確か……だ。だけど、その指を殺す戦法なんて、通用するのはよほどの格差のある相手だけだ。しょうが無い。可哀想だけどね、彼女たちは戦いたくてここに居るわけでは無いのだから。


ビキッ


 人間としてあまり聞きたくない音と、響きが伝わってくる。まずは手前の右手の人差指と中指。右手は添えるだけ……なんて言われるけど、ぶっちゃけ、これだけ重い両手剣を支えるには、右手の力だってかなり重要なわけで。何よりも痛いしね。逆方向に曲がる自分の指を見るのもかなり精神的に厳しいし。


「ぐ!」


「篭手をしていないのであればこういう時に絡め取られる用心をしなければ」


 ああ、彼女たち、私語どころか、悲鳴とか叫びとか、声を出すこと自体を禁じられているのか。隷属の術はどこまで彼女たちを縛り付けるのか。腹立つ。多分、篭手はしていたんだろうけど……いつの間にか無くなってしまった感じ……かな?


 普通なら心折れる攻撃を受けても、彼女たちに施された「戦え」という命令は一向に劣化することは無かった。


 折れた指をそのまま支えにして、両手剣を振上げる。ああ、対峙からさらに時間が経過した。鑑定できる。


羽倉尾雪 隷属

界渡り 女 力498 躯278 器512 敏528 知374 精351


言語理解


武芸1

→刀術4


魔力制御1

→風術1


隷属の呪い


 うん。パラメータはね。凄いんだよね。その辺の二つ名の強者を軽く上回ってるし。最初からこれって、同じ界渡りとして、俺凹んじゃうなぁ。


シエリエ

モリヤ 女 力460 躯404 器509 敏543 知388 精326


敵性感知

感覚鋭敏

気配察知


剣術6

弓術7


魔力制御6

→風術7

 光術1


 対峙しているシエリエはこれだ。スキルは圧倒的なんだけど~パラメータは合計値ギリギリ勝ってる? って程度だし。パッと見、体格的に似ている感じだからか、そこまで差は無く感じる。


 のだが。


 その戦闘能力、技の差は圧倒的だ。


 シエリエが……また、両手剣が地を抉った瞬間を突いて、今度は逆へ、奥の手である左手の手首を上から押さえる。手首の骨と筋の間に力を込めると、握力が無くなってしまうポイントが生まれてしまう。自分で握って見れば判るハズだ。

 特に小指に力を入れて握っている場合にどうにもならなくなる場所があるはずだ。そこを捻りながら締め付け、手首を……。


 ペキッ!


 折る。折った。


 竹刀持ちの場合、左手が潰されると即アウトだ。右手だけで攻め込む流派もあったとか、時代小説で読んだことがあったけど……まあ、普通はそこまでだろう。右手の指二本も既に奪ってあるしね。


 さらに、両足。鞘に入れたままのショートソードで両足首を破壊する。これまた……あまり聞きたくない、さらに伝わってきて欲しくない震動が……気分を苛立たせる。


 支えられなくなって、えーと、羽倉尾雪さんは地面に倒れ込んだ。顔を苦痛に歪めている。隷属の術で「戦え」と命令され続け、体は動こうとするのだが……こうなるとどうにも動けないのだ。辛かろう。


 すべてはオルニアの放った靄のおかげで、周りには一切見えてない。


(シエリエ。彼女を抱えて。穴に落とすよ)


(かしこまりました。お館様)







-----------------------

おすすめレビューに★を三ついただけるのが活力になります!

ありがとうございます!

さらに、おすすめレビューにお薦めの言葉、知らない誰かが本作を読みたくなる言葉を記入して下さると! 編集者目線で! マネージャー目線で! 

この小説が売れるかどうかは貴方の言葉にかかっていると思って!

やる気ゲージが上がります。お願いします!


■宣伝です。原作を担当させていただいております。

無料です。よろしくお願い致します。


[勇者妻は18才 第1話] | [ゆとり]

#Kindleインディーズマンガ で公開しました。

Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMQ54KSC


そして、自分は手伝った程度ですが、こちらも。


[メロメロな彼女 第1話] | [ゆとり]

#Kindleインディーズマンガ で公開しました。

Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMQ5QN37


単行本一巻、二巻もよろしくお願いします。

https://shitirokugou.booth.pm/items/5722996 #booth_pm






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る