0307:ドッキリ

 まずは。横に大きく広がって突っ込んでくる彼女たちの行く手を塞ぐ。土の術、土壁。まあ、穴を沢山掘ったからね。結構自由自在に使えましたわ。


 土壁……大体三メートルくらいの高さの壁を百枚近く。斜めに発生させる。戦場がいきなり狭くなる。別に、漏斗みたいにきゅーっとする必要は無い。大体、半分程度……大きく広がっているのを狭められれば問題無い。


 いきなりの土壁にビビったのか、数名が止まる。残りも止まらないものの、スピードを落としながら、こちらに誘導されるがままに中央へ足を向けている。


 これによって……自軍から敵軍も見えなくなる。というか、騎士の皆さんは後方で「いきなり壁が!」「これで守りは完璧か」なんて感じで、防御力アップな感じで受け止められている。まあ、そうか。まさか、視界を遮る為に生み出した……とは思わないか。


 伝説の「界渡り」三十三名。向こうの方が強いと思ってるしね。


 その前方に……黒い……霧、靄が広がる。弓を使っていた者を包み込む様に発生した靄は……オーベさんの召喚術の簡易版だ。前に使った広範囲殲滅召喚術ではなく、これは単純に靄を生み出す術だそうだ。オルニアが召喚術の素養があるということだったので、使い勝手が良いそうなので教わってもらった。


 はいそして、どーん。


 靄で視界が閉ざされ、足が止まった者も、スピードが落ちた者も、突出した七名が俺の付けた目印のところまで来たところで……その場所に巨大落とし穴が出現した。十五メートル近いこの穴は、逆ハングで登れない仕様になっている。


 彼女たちはかなり身体強化されているので、これくらいの高さであれば落ちても死なない。というか、モリヤ隊のメンバーに落ちてもらったが、基本平気だった。まあでも、不意打ちであれば落ちて足を挫いたり、最悪なら折れたりもするだろうし……さらに十五メートルあればさすがにジャンプして飛び出てくることはちと不可能だろう。


 その上、再度蓋も出来る。


 土の術で先ほどまであったのと同じ様に穴に蓋をする。


 この蓋は薄いんだけど、強化したおかげでかなりの加重に耐えられるのは実験済みだ。残念なことに、これだけの穴を掘るにはそこそこの時間がかかるということ。深夜に目立たない様に、音を立てないように準備するのは結構難しかった。この戦場至る所に穴が空いている。魔力の残滓というか、形を追えば俺には良く判るし、多分オーベさんとかファランさんとか魔術士の方々には一目で見破られてしまうお粗末な罠だ。


 でも。普通の人、さらに「戦乙女」には見破れない。戦場にこんな巨大な落とし穴。ドッキリでも見たこと無いしな。


 ちゅーか、俺、この術だけでも、落とし穴ドッキリ屋さんとして、一財産作れるんじゃないかな……。


 ということで、まずは七名隔離、無力化完了。あ。穴の中には既にモリヤ隊の誰だかが潜んでいる。闇の中、上手いこと意識を失わせてくれれば上等だ。


 残り……前衛は十五名か。第二集団として後続していた八名とイリス様、モリヤ隊が戦闘を開始したようだ。


 ではもうひとつ、どーん。


 その後方。もうひとつ用意しておいた穴の蓋を……消した。天丼っていってね。繰り返しのね、笑いの基本というかね。うん、ごめんね。君たちにこんなことをしたいわけじゃないんだけどさ。一番安全というか、一番早くて一番危険が少ないのがこの手のやり方っぽいからね。


 後方の落とし穴に落ちたのは七名。うん、イイ感じにまとまってくれてたからね。よく見てたよ~。


 ちゅーか、アレだけ超長距離射撃を繰り返していたのに、移動しないってどういうことなのよっていうね。狙って下さいと言ってる様なもんで。って、届く弓が無いと思ってるのかな? これでさらに減ってくれた。こちらにも蓋をする。しばらく大人しくというか、うちの人達が駆けつけて無力化するまで、穴の中で為す術無く待っていて下さい。


 と、黒い靄と謎の落とし穴に驚愕の表情で動揺広まる潘国軍。


 さらに、潘国軍の中央奥で……黒い靄が発生する。オルニアに命令してあった通りの行動だ。つまり、あそこ辺りが本陣という事か。


 オーベさん=靄じゃなくて、黒いスライムみたいなので、敵を殲滅……っていうのが思い出されてしまうので、ちょっとドキドキなんだけど、うん。そこはもう、オルニアだしね。あの靄はそこまで強くない。若干痺れるみたいだけど。


 次は計画通り、風の魔術、単純に暴風を生み出す術で身動きが出来なくなった「戦乙女」たちが……地下道を通じて、こちら側に移動していきていた。七~八名。こちらも予定通り、手前の落とし穴の蓋を消す。一斉に落とす。再度蓋をする。数は確認した。残りは……ん? 後……二名? かな? 


(お館様……残念な予想が……当たってしまいました)


(……あぁ……)

 

 報告を受けなくても……一瞬でなんとなく伝わってくる。


(怪我をして戦えなくなった戦乙女は……全員処分されたそうです。これから焼却される予定だった遺体……一体を発見しました)


(彼女たちに確認してもらう為にも……保存しておかないとだね。でも、彼女たちには見せたくない。丁寧に布で包んで、誰かに運んでもらって。俺の収納なら傷んだりしないし。今の情報を吐いたヤツに詳細を聞いて……殲滅の続きを)


(はい)


 敵の後方で……現場司令官の討伐に動いていたミアリアから情報が伝わってくる。畜生。もう少し……もう少し自分に余裕があれば。


 被害者を一人でも減らせたかもしれないのに。






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