0302:王都前草原

 広大な草原……距離的に王都までは、まだかなりあるのだが、川に挟まれた立地的に最短距離を選ぶのならば、必ずここを通らざるを得ないという。


 クラビアル草原……というらしい。その草原の北西部の小さな湖に、大甲殻竜が住み着き、開発が進まず、以降現在も手付かずのまま放置されているのだという。


 まあ、ぶっちゃければ、もう少し南、川沿いに麦の育成に適した土地が見つかったため、そちらの開発に全ふりした結果……だそうだ。


 さらに、その土地が第一皇子=次期跡取りの領地であったことも関係しているとか。いないとか。王族の中でも権威を持ちすぎると相互作用で潰されてしまうこともある。まあ、もう故人の話であるのでどうでもいいことだ。


 使える土地は全部使う的な、日本の狭小感覚で生きてきた自分としては、その土地が有効活用できるハズなのに……と判っていて、放置しておくっていう感覚が良く判らないけど。この世界だと仕方ないことなんだろう。純粋に当初のオベニス開発のコトを考えると、ヒューマンパワーが足りない、魔物という天敵の存在という大きな障害があるんだろうな、とも思う。大甲殻竜ってそんなに強いのかな? イリス様とファランさん辺りがいれば、どうにでもなりそうな気がするけど。


 まあ、王都から数日の位置にこんなに広大な草原があるって、良いわよねってことなのだが、ここが戦場になると考えれば、逆にイロイロと考えざるを得ない。


 召喚された「戦乙女」いや、女子学生は四十三名。アルメニア征服国への侵攻によって五名が死亡。それを警戒したのか、今度は二十名を送って征服国主力を壊滅状態にし、強者としても有名だったアーガッド王が殺された。現在は、「戦乙女」は全員本隊に戻り、この戦場へ向かっている。その際……三十三名が確認されたという。


 ……数が合わない。


 四十三のうち死んだのが五。つまり、生存しているのは三十八名でないとおかしい。


 と、思っていたら新情報が届いた。足りない分の五名は、足や腕に大怪我を負い、さすがに前線に出ることが適わないため、後方で治療中らしい。くそう……面倒くさい。後方がどれくらい後方なのかも判らない。前線の部隊に同行させている……わけではないだろうし。この戦線、どういう風に伸びているのかもあやふやだ。これじゃ特攻と変わらない。


 ビジュリア潘国ってかなり西に位置する国なんだよなぁ。それがなんでこっち来る?


 ただ……ビジュリアの王が後方から直接軍を率いて侵攻中らしい。現在イガヌリオ連邦の中央辺り。この最前線とはかなり距離がかなり離れている。そうか。本人来るのか。そこにも「戦乙女」がいるのだろうか? 分散しているのだろうか?


 それも含めて鋭意調査中という事だが……時間が無い。モリヤ隊から誰か行ってもらうしかないか。正面戦力が減るのは避けたいんだけど……。しかたない。


 そもそも。「戦乙女」召喚された女子学生、彼女たちは全員、完全に捨て駒として扱われている様だ。ぶっちゃけ……同じ人としては扱われていない。限界まで酷使される傭兵団の話があったが、確実に、それよりも酷い。


 ゴーレム……と言った感じだろうか。


 何故それが判るかといえば。


 そんなもの、まずは、ここでこうして、あの人数でうちの王国軍と対峙している時点でおかしいのだ。強者であるのなら、当然、能力が高いわけで、それを有効に使用した奇襲戦法、ゲリラ戦法が最も効果が高いし、数の論理をひっくり返せる可能性が最も高い。俺がやられて一番イヤなのはそれだ。不意に周辺都市を一つづつ蹂躙されるとかの方が何かとやりにくい。


 どう考えても、こうして、戦場で正面から戦う意味が分からない。


 で。さらに。今、目の前に布陣している敵の陣形があからさま過ぎる。というか、陣形なのか? アレ? 


 まだ……距離がある。が。


 正面前面に、「戦乙女」であろう、既に薄汚れた白い鎧を身につけた三十三名が……大体等間隔で横一線に並んでいる。その後ろに歩兵、弓兵が続く。馬に乗った騎士は……騎兵として遊撃なのだろうか? モリヤ隊からのイメージが……そう伝えてくる。


 うん。まあ、確かに、うちの軍にも強力なゴーレム兵がいたら。ロボ兵がいたら。まずは前に立たせて、動く盾として前進させる。さらに、敵を削るために、消耗品としてとにかく突っ込ませる……のもありだもんな。


 って納得できるか!


 激しい怒りが……。とにかくふざけるな……という怒りが沸き上がってくる。なんだっけか。文字通り「人間の盾」……いや「「戦乙女」が盾」か! ちくしょう。もういい。


 ああ、もう、このまま突撃して彼女達以外全員、無くしてしまいたい。自分の中にこんなにも殺意というか、破壊の衝動が膨らむとは思ってもみなかった。


 隠密のスキルを最大に活用したモリヤ隊のメンバーが前線を探っている。その視界に直接「戦乙女」女子学生、いや、女子高校生の姿が捉えられ始める。


 やはり……か。




-----------------------

おすすめレビューに★を三ついただけるのが活力になります!

ありがとうございます!

さらに、おすすめレビューにお薦めの言葉、知らない誰かが本作を読みたくなる言葉を記入して下さると! 編集者目線で! マネージャー目線で! 

この小説が売れるかどうかは貴方の言葉にかかっていると思って!

やる気ゲージが上がります。お願いします!


■宣伝です。原作を担当させていただいております。

無料です。よろしくお願い致します。


[勇者妻は18才 第1話] | [ゆとり]

#Kindleインディーズマンガ で公開しました。

Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMQ54KSC


そして、自分は手伝った程度ですが、こちらも。


[メロメロな彼女 第1話] | [ゆとり]

#Kindleインディーズマンガ で公開しました。

Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMQ5QN37


単行本一巻、二巻もよろしくお願いします。

https://shitirokugou.booth.pm/items/5722996 #booth_pm



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る