0294:ふざけた話

 とにかくふざけた話だ。


 オベニスはやっと復興の階段を上り始めたばかりだというのに。なんちゃら藩国の王が、潘都の三分の一の民を犠牲にして、界渡りを大量に召喚したそうだ。


 いや、正解は、モボロア信教というビジュリア藩国の正教の教祖が、王に進言したらしい。


「うちの神殿の地下遺跡に召喚魔術紋が発見されました。当代の巫女長はかつてないレベルの魔力の持ち主ですから、成功するやもわかりません、界渡りの召喚に!」


 当然、王も、そんなうまい話に最初から乗った訳では無かったそうだ。まあ、上手くいったなら……程度のものだったらしい。


 が。儀式開始から半年後。儀式を取り扱っている巫女長が死んだ。原因はわかっていない。召喚紋に魔力だけでなく、生命力まで奪われたのではないか? と言われている。巫女長が亡くなって以降、数日で、神殿の巫女だけでなく神父や修道女が死に、さらに数日で神殿周辺の住人が軒並み死に、さらに数日で、潘都三分の一の民が死に絶えたという。その数……およそ数万人。詳細は不明だそうだ。


 そして数日後。召喚紋の上に、大型バスが出現した……という事らしい。


 召喚術の専門家、オーベさんによれば、元々の魔術紋が欠けていたり、歪だった可能性が高いという。界渡り、異世界からの勇者召喚の魔術紋は、召喚の記述と絶対隷属の記述。この両方が複雑に入り組んで途轍もなく細かく精密性を求められる。多分、魔術紋の中で世界で最も複雑で、大きさも大きくならざるを得ないのがコレなんじゃないか? とのこと。


 で、そんな歪んだ魔術紋を使用した結果、魔力の大きかった巫女長がいた時はそれでも何とか制御できていたが、最終的に破綻。その結果、魔術紋の魔力吸収部分が際限なく解放され、その大きさ、規模に合わせて魔力を吸収し続けた可能性が高いという。


 潘都という人口の多い場所で行ったため、生け贄を消費して、魔力が充分に充填し術が発動。その魔力に見合った能力を持つ者を、その瞬間で無差別に選別。異世界への門を開き、繋げた。というのがオーベ予測だ。


 そもそも……今回起動した魔術紋は、魔術紋保存のための勉強用、複写サンプルとして判りやすい様に「拡大」されたオブジェ、記念碑的な建造物の可能性が高いらしい。それを無知が良いことにそのまま起動した愚か者ということだ。


 さすがに、過去数千人レベルの生け贄を必要とする様な魔術紋は、時代の有識者、主にこの世界の知を司っている魔導国家リーインセンチネルの者達によって抹消破壊されてきたらしいが、今回の数万人というのは詳細が判れば、歴史に残る大事故のようだ。そこまでの魔術紋が起動するレベルで残っていたのも奇跡だし、歪であるにも関わらず起動したのが奇跡なのだという。


 つまり。奇跡が重なって、甚大な被害を出し。それを隠す、誤魔化すかのように、手に入れた出来すぎたオモチャを振りかざす。まさに愚か者の所業。


 大型観光バスに乗っていたのは女子高生は四十三人。調べてもらった情報を結びつけると、どこか旅行の帰り道だったようだ。


 その界渡りの異様な数に、王は舞い上がり、即、隣国への侵攻を開始。進撃に次ぐ進撃で、現状、戦場を広げ続けているらしい。その補給線を考えない、あり得ない、なりふり構わない出兵に、隣国のイガヌリオ連邦だけでなく、その周辺国も対応ままならぬまま、良いように蹂躙されているようだ。


 四十三人……大体ひとつのクラス丸々だろうか? それだけいれば、戦闘向き不向きがあるだろうに「戦乙女」等と一括りで呼ばれて、全員が前戦で剣を振るわされている様だ。そんなに早く自らの能力を把握し、状況に対応出来るものなんだろうか? それが隷属効果……なんだろうなぁ……。多分。


 特に攻め込んだ隣国、イガヌリオ連邦は……話を聞く限り、北方騎士団がイリス様たちに全滅させられている。兵力不足なのは間違いないし、元々連邦ということで、領ごとの連携が取れていない様だ。


 特に……北方と南方は仲が悪く、よほどでなければお互いに手を取り合うことは無いらしい。


 元々仲が良くない上に、敵は訳のわからない進軍速度で前戦を押し上げてきている。うーん。征服した城砦都市に後詰めを残したりしていないんだろうか? 


 その辺はまだ、情報が足りなくて良く判らない。というか、正直、初動が遅れた。うちの情報収集担当者たちは召喚事案に「俺がここまで喰い付く」とは思っていなかったし、所詮遠方の他国の事件、戦争として、客観的にしか捉えてなかった。


 俺が詳細を聞いた途端に「最優先収集事項」とするまで。


 とにかく……ふざけた話だ。



-----------------------

おすすめレビューに★を三ついただけるのが活力になります!

ありがとうございます!

さらに、おすすめレビューにお薦めの言葉、知らない誰かが本作を読みたくなる言葉を記入して下さると! 編集者目線で! マネージャー目線で! 

この小説が売れるかどうかは貴方の言葉にかかっていると思って!

やる気ゲージが上がります。お願いします!


■宣伝です。原作を担当させていただいております。

無料です。よろしくお願い致します。


[勇者妻は18才 第1話] | [ゆとり]

#Kindleインディーズマンガ で公開しました。

Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMQ54KSC


そして、自分は手伝った程度ですが、こちらも。


[メロメロな彼女 第1話] | [ゆとり]

#Kindleインディーズマンガ で公開しました。

Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMQ5QN37


単行本一巻、二巻もよろしくお願いします。

https://shitirokugou.booth.pm/items/5722996 #booth_pm




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る