0291:局地戦

 状況は絶賛最悪中だった。何をしても悪い。どうしても悪い。今回一緒に召喚された仲間は、まがりなりにも全国上位の猛者揃いだ。精神的にも強い者が多い。


 更に、困難にぶち当たったとき、どう回避すれば良いか心得ている者も多い。


 だからこそ。何とか耐えられているのだ。発狂して泣き叫ぶ者もいない。


 肉体だけでなく精神的にも図太く無ければ、オリンピックのメダリストは狙えない。


「既に……どうにもなりませんね。これ、正面からぶつかるみたいですよ?」


「バカだな……あの司令官」


「諸侯の中でもバカで有名なヤツみたいです」


「未来、それでも作戦は?」


「なるべくこちらに引き込みたいです。というか、あの司令官に敵を集めたいところです」


「ああーそれはいいなぁ」


 出島チルハは母がロシア系フランス人、父がアメリカ系の日本人という、外見的には明らかに日本人離れした容姿で剣を撫でた。革鎧を着込み、鉢金を付けているが、動きにくそうな素振りはない。明るい茶色の髪の毛が風になびく。日本文化に触れさせたいと幼少時に進められた剣道にハマリ、高校二年で三段を獲得。さらに今年のインターハイでは優勝。つまり、日本一強い剣道女子高生となった。


 現在手にしているのは日本刀では無く、無骨で長大な両手剣である。界渡りの基礎能力は非常に高く、男性にすら持ち上げることを重く感じるその獲物も片手で軽々と扱えるようだ。


 テニス部部長の吉原希生は日本人らしい、所謂普通の顔付き、黒い髪だが、百八十センチを超える長身から撃ち出されるハードショットで既にプロデビューも決まっていた学園一の逸材である。当然、次のオリンピックの候補選手に選ばれている。彼女も今回のインターハイで個人で優勝。ダブルスで準優勝を決めている。


 片手剣を両手に二本装備。二刀流だ。元々彼女は利き腕を持たないスイッチプレイヤーだ。一本のラケットを器用に持ち替えてショットを打ち込む。


 今手の中にあるのは通常の騎士剣と呼ばれる大きめな片手剣で、片手で振り回すにはソレなりの筋力が必要だ。


 未来は、チルハは一対一の戦闘、希生は多対戦闘が得意と見ていた。そして……自分自身は。


「強化しておきます。ハードコート! ストレングスアップ、アジリティアップ! これで……あとは」


 魔術。自分はどちらかといえば格闘よりも知能だろうと思い、自分なりに試していたらなんとなくその概要が理解できてしまった。後は魔力を認識し、発動する手順を記憶するだけだった。いつの間にか防御力アップと力アップ、素早さアップの術が使える様になった。命名は未来だ。小学校の時プレイしたゲームでそんな感じだったのだ。さらに、自己訓練で火の魔術も形になっている。


 現在仲間うちで判明しているのは地水火風の四属性の攻撃魔術。そして未来の能力値アップの付与魔術。それくらいだ。この他に癒しの術があるはずなのだが、誰も発動することが出来なかった。


 仲間達は全員武器の適性を持ち、力が強くなった者、素早く動ける者、遠くが見える者、様々な特徴を持っている。だが、その辺の個体差は大きめだ。魔術が使えるようになったのは未来を含めて数人だった。


「戦乙女よ。我が元に勝利を引きずり出せ! 殲滅せよ!」


 嫌味な顔をした無能な指揮官が指揮棒を振上げる。王が指揮権を移譲移行した現場指揮官の命令も絶対となる。王との違いは、本人たちの命に関わる命令が下せないことだけだ。本当に駒でしかないのだ。


 さらにその声と共に、前衛の傭兵が無駄に突撃を仕掛け始めた。重装の騎士に軽装の傭兵が正面から撃ち掛かって、何か効果があると思っているのだろうか? 


 この位置だと確実に味方にも被害が出るが、そんな細かいコトは気にしていられなかった。自分たちが生き抜くためには、どんな障害も排除しなければならない。


「火球!」「火球!」「火球!」


 未来は自分なりの詠唱のあと、術名を叫ぶ。三連続だ。すると、前線、敵重装騎兵の上空に巨大な火の玉が発生した。瞬時にそのまま下に落ちる。


「ぐはあああああ!」


 阿鼻叫喚とはこのことか……というレベルの悲鳴が響く。


「良いぞ! 良いぞ! やってしまえ!」


 お前の命令で味方を巻き込むことになったのを判っていないのか? 未来は一気に消費した魔力のため、脱力感を感じ、膝を付いた。


 まだまだ戦闘は始まったばかり。火球でダメージを受けて戦線離脱したであろう敵騎士はそこまで多くは無い。元々の数、そして戦闘能力が違うのだ。慢心できるタイミングではない。



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