0278:鉱塊

「おい……これは……」


「で、伝説の場所なのか?」


「これだけあれば……数十年は保つな」


 なんていう声が聞こえてくる。うむ。まあ、全ては茂木先輩が生み出せるように設定しておいてくれたからこそ……なんだけどね。さらに……実はこの鉱塊で何を作っても、持ち出すことが出来ない。迷宮内限定アイテムだ。てへ。いきなりね、大量に必要だったからね。まあ、しょうが無い。思い切りダミーだ。見せ金属だ。


 とりあえず、もう、ここまで見せて出て行くのであれば、それはそれで問題無い。というか、どうでもいい。目の前にこれだけのお宝を用意されて、掴もうとしない鍛冶師では、ここに居ても多分、居心地が悪いだけだろう。


「我々も……お館様とお呼びしてよろしいでしょうか?」


「ん?」


 非常にわかりやすい。この二人の長の態度も、激変した。そもそも、この二人も俺に対してかなり舐めた態度を取っていたのだ。表に出ないようにしていたみたいだが、表情や態度でダダ漏れだった。


「それは、連れて来た里のガギル全員の許可を取った方がいいだろう。鍛冶師のとりまとめ、特にガギルのとりまとめは、副ギルド長のドガルが行う。これはもう、決定事項だ。その命令に従えるのか? 己が腕のみを信じる、君たち誇り高き者たちが」


「……」


「……」


「こちらはどんな答えでも受け入れよう」


 うーん。もめるのかな~そういうので。まあ、確かに、この世界、男の方が面倒くさそうだ。


 女性の方が、真理を知り、何かを得るためであれば手段を選ばないっぽい。特に生きるという意味では賢いと思う。

 さらにもめない努力ってものも良く判っている。大事なんだけどなぁ。大人の社会で上手くやっていくには。


 次の日の報告によれば、オベニスを去った者は一人も居なかったそうだ。いや一人や二人気骨のある者が居るかと思ったんだけど……。

 話を聞いたら、新しもの好きがまず列車で折れ、質を求める者が高品質のインゴットで折れ、それでも文句を言いたそうな変なプライドを保っていた者も酒で折れたらしい。ああ、昨日、全員が二杯程度飲めるくらいの量、あの酒を渡しておいたのだ。


 正直……本音から言えば。半分くらい去ってくれてもいいかな……って思っていた。いや、将来的にはうん、受け容れ可能にしたいし、そういう、鍛冶特化の国とか、都市とか、良いなとも思うんだけど。

 現状、オベニスは領都とはいえ、地方の一都市でしかないわけで、うちが原因で対外戦争が勃発……なんてなったら、面倒くさいことこの上ない。


 なので、今回、この人数を受け容れるためには、オベニスにガギル族が二百名いる……というのは、基本内緒にしなければならない。しばらく……いや、数年。下手すれば十年近く、か。


「無駄な戦争を起こさない為に、大量のガギル族が移住して来た……という事実は秘匿したい。まあ、なので、ある程度、引きこもり状態になるのだが……大丈夫だろうか?」


 と、もの凄く理不尽なことを言ってみたが、キョトンとされてしまった。これまでが基本、鉱山の中で終結しているような社会、生活だったため、別に何の気にもならないとのことだった。逆に、お館様によって、これまでよりも様々な文化に触れる機会が多そうなので、楽しみだ……という返答をいただいた。


 さらに、オベニスの者以外との接触は無い方がありがたいそうだ。ノルドとの交易を行っていた時と変わらないくらいが丁度いいらしい。


 そう……ですか。うんうん。まあその方がいいのかもね。確かに。


 とりあえず、ガギル族五十名……も多いので……命を救われたドガルとその妹、モミアと、さらにその一族のみが移住定住したということにしよう。二十名くらい? うん、そうしよう。


「お館様……そんなことが……可能なのでしょうか? 既にオベニスの民にはガギルの人々が数多く訪れているのを目撃されています」


「ああ、ガギル族は、一夜のうちに別の大鉱山へ旅立つことになるから。オベニスの住人誰の目にも留まらずに」


「え?」


「何かと怪しいとは思うだろうけどね。その後オベニスで売られる武器や防具、金属製品の質が異常に高くなるのだから。まあ、それはもう、副ギルド長にガギル族のドガル一族がいるということで流すしかないよね」


「……それ、流れるでしょうか?」


「強引に流す」


「はい」


「バレバレで見え見えでも、強引にそういうことにする。一年くらい経てば、みんな納得してくれるよ。きっと」


「はい」


「まあでも、その伝手でガギルの部族と交流が出来て、その生産物が手に入りそうだ……ってのも付け加えないとだな」


「はい」







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