0277:観光資源

「まあ、主に鍛冶師という意味で見るべきところは、現時点ではこの魔道列車周りが多いかと思う。こちらへ。アレが停車場となっている」


 停車場は比較的中央に用意してある、巨大な工場系の建物だ。この中で各種整備などを行うのだが。


「ここで先ほどの列車の整備を行っている。ここにある巨大昇降機を使って車体を上へ上げて、列車下側の整備を行ったりする」


 喰い付くような目で見つめているガギル鍛冶師たち。うん。そうだよね。この辺の技術があれば……鉱山での採掘なんかでかなり楽ができる。そういう技術流用に関してくらい即理解してくれないと、どれだけ画期的な腕を持っていても意味がない。


「も、モリヤ様……あ、あの、あの、れ、れっ? 列車は全て……ここで創られたんでしょうか?」


 お。モリヤ様になった。


「現在の誓約では詳細を教えることは出来ない。が。まあ、君たちが納得できないのも可哀想なので、一つだけ教えよう。あの列車は、君たちの鍛冶の技とは違う、製造の技で私が一人で産みだした。多分……あの列車を詳しく見てもらい、解体し、作動法則などを確認すれば、君たちガギルの鍛冶師であれば、アレを再現することは可能だろう。が。しかし。大切なのはそこではない。私はアレを思いつき、現実に生み出したということだ。なぜ、兼務などという状態で、私が鍛冶ギルドの長を引き受けているか理解してもらえただろうか? 私以外に、カギルとヒームの鍛冶師をまとめることのできる者がいなかったからだ」


 なんかこっ恥ずかしいが、これくらいわかりやすく言わないと、理解されない、判ってもらえないそうだ。そもそも列車を思いついたのも、用意してあったのも俺の手柄じゃ無いからね。


「話を聞くに、ガギルだけでなく、この世界の鍛冶師、いや、職人は、新しいモノを生み出す力が弱い気がするのだが……どうだろうか?」


 頷いている者もいる。まあ、数百年と継承している限り、同じモノばかり作っている……というのは自分たちでも理解出来ているのだろう。


「ここ、オベニスで鍛冶師をする……ということは、こういった世界最新、革新的な製作物を目の当たりに出来、それを自分で模倣などしながら腕を上げ、さらなる何かを生み出す事が可能だということだ。つまり、新しき物を受け容れられるだけの度量が無ければ、ここに居る資格は無い。新しい何かに対して謙虚にそれを受け容れ、自分の物と為し、さらに新たな何かを生み出してやろうという気概が必要となる。年老いた……ああ、別に年齢を経たという意味では無い。心がすり切れ、年老いてしまった者には辛い環境だといえるだろう。選択は君たちに任せる。オベニス以外……いや、私以外のヒーム族であれば、君たちガギルの鍛冶師など、諸手を挙げて歓迎するだろう。だからこそ、敢えて言う。自由にしていい。自分たちで決めろ」


 やはり、若そうな者の方が、目に力があるようだ。こう言われてに、やる気に満ちあふれているのが伝わってくる。年老いた者に……何か新しいモノをというのは、これまでの経験が通用しない恐怖が付きまとう。

 いやいや、まあ、今回は威しちゃってますけど。実は貴方達の鍛冶の技の方がよっぽど重要なんですよ~。特に武器防具、装飾品に魔術付与できるらしいじゃないですか~レベルの高い一部のガギル鍛冶の方々は。商売するにはそっちでしょー。


 列車売れないからね。持ち出せる様にしたら異様にDPかかるし。せいぜい、迷宮内で使用するくらいだ。結果的に観光資源にはなりそうだけど。


「モリヤ様……その、列車の元……になる……鉱石……ここに鉱山は……あるのか?」


 ああ、そうか。その説明をしていなかったな。うん。


「とりあえず、こっちへ来てくれ」


 この停車場は元々大きい。スペースは有り余っている。その一角を二十五メートルプールくらいのサイズで塀で囲い、鍵付きの扉を付けてもらった。その中には。


「ここオベニスに鉱山があるか無いかは、先ほども言った様にまだ、君たちには教えられない。が。ここにあるインゴットは今後、この街で働く鍛冶師に使用してもらう予定のモノだ。どうだろうか?」


 ちょびっと見栄も張って、このスペースにミッシリとインゴットを詰め込んでおいた。鉄、鋼、銅、銀を主にして、プラチナ、金、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネ、さらにこの世界ならでは鉱塊も並べてある。


 実はドガルに聞いた所。このインゴット自体の存在が「レア」らしい。


 そもそも、鉱山などから入手出来る鉱石には不純物が多い。それらを砕き、石と鉱物を分けて、金属塊をのみを、炉に挿入。溶かして精錬して必要な金属のみを抽出する。それは向こうの世界と一緒だ。


 が、それらは鍛冶師の親方毎、鍛冶場毎、鉱山毎、種族毎にやり方やシステム自体が異なるのだそうだ。そしてこの世界の鍛冶の最先端、ガギル族おいても、金属をインゴット状態で保存することは無いのだという。


 それは、純粋に、精錬したらそのまま、使ってしまうからだそうだ。そもそも、精錬自体が鍛冶師の極秘事項で、「どの程度の純度で金属をいじっているか」自体が隠されるべき案件だという。


 まあ、そもそもの規模が小さいんだろうな……。大量生産の方向で文明が発展していないし。



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