0276:反抗
まずゲルファイ鉱山の長バガリと、シェルファイ鉱山の長エバルに、どう考えても文句を言いそうなクソ面倒くさいヤツを全員呼んでこいと言って、人選させた。
とりあえず、今回以降文句を言うようなら、そいつ(そいつら)は即追放する。言いたいことがあれば今回言えと、強引にでも引っ張り出す。ガギル族の真実は、面倒くさいというか、ものぐさなんじゃ無いか? 自分の仕事以外は。
集まったのは二鉱山合わせて、30名ほどの男たちだった。長である二人よりも年上そうなヤツもいる。まあ、確かに面倒くさそうだ。
「私がここオベニス領の総務部長、モリヤです。総務というのはまあ、なんでもやる部署で、鍛冶ギルドの長も兼任しています。今日はよろしくお願いします」
あ。明らかに馬鹿にした態度を取るヤツが多いな。というかほとんど全員か。うん。まあねぇ。そうねぇ。ヒームの鍛冶師というだけで下に見るのに、さらに兼務だしね。馬鹿にしてんのか? ってなるヤツもいるわな。そりゃ。ということで、威圧を使いまーす。
「はい、ここが戦場ならオマエらは今、全員、死んだ」
身動きできなくなり、息苦しくて膝を突いた者もいる。
「も、モリヤ……」
「モリヤ、や、やめてくれ、戦いに馴れていないヤツも」
「ああ? バガリ、エバル。君たち二人は既に、この街に定住するつもりでいるのではなかったのか? その際に上司になる私を呼び捨てというのはどういうことだ? 私は君たちに呼び捨てにしろと言った覚えはないのだが。ガギル社会では、公的な立場が上の者を尊重するということの意味を理解出来ないような野蛮な種族であるということでよろしいのか?」
別に名前の呼ばれ方などどうでも良いんだけどね。でも、そこに敬意、尊敬または従うという意志が微塵も感じられない呼び方は、領を運営していく上でどうにも上手くない。
「……」
「も、申し訳ない、モリヤ鍛冶ギルド長殿。この威圧を……解いていただけないだろうか?」
「ああ、了解した。しかし。君たちが長であるというのなら、なぜ、ここに集められた者たちに、事前に、説明をしておかないのか? これから先、もしも、この地に定住するというのなら、全員が私の言うとおりに働いてもらうことになる。失態を犯せば後悔するのは自分たちだというのに。ヒームだから……と侮りすぎではないか?」
「も、申し訳ない……だから……」
「いいや。まだだな。いいか、ゲルファイ及び、シェルファイのガギル族よ。貴方方は現時点では、流民、棄民でしかない。自らの住む場所を放棄した哀れな民だ。ここオベニスで衣食住が提供されたのは、「可哀想だからと施した」に過ぎない。それを自覚しているのか? 今回、我々オベニス側は、「この地に定住して共に繁栄を担う覚悟のあるガギル族の者」がいたら、それは歓迎する……と声は掛けた。だが、鉱山で鉱石が掘れなくなったため、仕方なく、さらに一族郎党が移住するというので、仕方なくついてきただけで、別にここで無くても問題無い……などと考えているのであれば、即出て行ってもらって構わない。今から見せるのは我が領の極秘部分だ。当然、誓約も交わす。ここから先を見て、自信を失い、働けなくなる様な覚悟の無い腑抜け鍛冶師は今すぐここを去れ!」
ちょっと大きな声で煽りに煽ってやったら、全員があっという間に誓約書にサインした。うん。もの凄い軽いヤツだけどね。オベニスの地下で見たモノの事を他の地で言えなくなるっていう。まあでも、種族的に、その辺は約束に関して律儀な性格な様なので問題は起こらないだろう。
そして、人目に付かない裏通路を使って、三十名ちょいを引率する。地下の一般居住区へ移動。今日のこの時間、この辺には立ち入りを禁止してもらった。当たり前だが、地下に入ってすぐの場所に駅があり……地下列車が絶賛稼働している。ガギル族の足が止まり、驚愕の表情でそれを見ている。
「これがオベニス地下の大動脈である、魔道列車だ。一度に百名程度の乗客を運搬したり、多くの荷物を運んだりすることが可能だ。地下とはいえ、かなり広いので、領民の足として朝~晩まで運行している」
うん、威圧の時とはちょっと違った感じで固まってるヤツもいるな。うむ。驚いてくれないとね。ここ、大迫力だからね。
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