0273:本当に多いよ?

「あの酒を書簡と共に持たせたことに、自慢したいという気持ちがあったんだと思う。家族や仲間は大勢死んじまったし、呪われたような、なんか黒い靄にやられて死んだそうだし、普通にいけば、「モボファイは呪われた、生き残りも呪われている」と言われてもおかしくねぇことだったからな。なので、あの酒も付けちまった。俺たちはこんな旨い酒を毎日飲めるんだぞと」


 ……まあ、うん、それくらいは良いんじゃ無いかと思うんだけどなぁ。


 あの酒、今では違うモノを生産しているけど、大樽で百以上はあるし。貯蔵庫一杯で他を圧迫してたんだよね(まあ、地下に移して強引に何とかしたんだけど)。


 どんなにガギルが飲んべえでも、五十名なら小樽一つで三晩保つ。大樽は子樽百分だったか? 毎日飲んでも問題ない。


 そもそも、実験失敗と判断したら廃棄するしか無いわけで。え? 何でそんな実験結果が大樽で百とかあるかって? くくく。征服国へ出張して、更にオベニスが襲われて、安心出来る様になるまで、うっかり忘れてたからダヨーン。トホホ。


 新酒製造は最初からゲンズバーグほぼ一人で実験室に籠もってたし、建物周辺、領主館地区は作業していた者もいたので一切弄らなかった。そうしているうちについうっかり、チェックするのを忘れてしまったというか、新規の命令を伝えるのを忘れてしまったというか。……ゲンズバーグ……ごめん。こんな所で大きく反省することになるとは。今度奢ろう……。あいつ甘い物好きだったよな。


 と、まあ、ドガルの気持ちは判る。確かに、呪われたなんて噂とか流言を言われても仕方ない状況だったみたいだし。実際、死霊によってもたらされた原因不明の黒い靄にやられたわけだしね。


「その結果が? 二百名?」


「……モボファイ鉱山に一番近い、ゲルファイ、そしてシェルファイの民、全部……だ」


 また、ドガルが土下座し直した。うーん。まあ、もう、来てしまったモノは仕方ない。確か、ドガルの書簡には、他にも移住を望むガギルが居るのであれば、オベニスは喜んで受け容れる……と加えてある。話し合って、俺もokした。つまり、大元というか、巡り巡ると一番悪いのは俺ということになる。


「ドガル。その二つの鉱山に……今回ここに来ている者達の長はいるんだよな? 当然」


「ああ、うちと違って生きてるからな」


「呼んでくれ」


 俺の執務室に呼び出されたのは二人とも見た目は完全にお爺ちゃんだ。ヒゲもムサイし、衣装も暗い色で統一されており、鉱夫、鍛冶師と言った感じだ。ドガルが若いというのがハッキリと判る。だが、目力は凄まじく強い。現役バリバリで働いている感が嫌でも伝わってくる。


「あんたが、ドガルの言う、お館様か……俺はゲルファイ鉱山の長、バガリ。よろしく頼む」


「俺はシェルファイ鉱山の長、エバル」


「俺はこのオベニスの総務部長モリヤだ」


 二人は揃って頭を下げた。うーん。なんというか、ドガルの様な……なりふり構わないというか、命がけの気迫みたいなモノを感じない。まあでも……普通はそんなものか。貴族とかそうで無いとか、役職が……とかそういうのは気にしないのがガギルスタイルなのだろう。


 でも、どこかで……傲慢さというか、こちらを見下しているような……。


「まずは、何故オベニスへ? しかも何かしら書簡による問い合わせなどを一切行わず、一族郎党伴って、だ。これ、下手すると攻めて来た……と思われても仕方なくないか?」


 思わないけどね。彼らの服装はヒームと比較して、何処からどう見ても棄民のソレだ。黒い靄に襲われていないので怪我をしてるわけではないが、どう見ても元気では無い。二百名の中には体調が悪い者もいることだろう。

 実は、ドガルたちも最初は酷かった。指輪の中に救済用に衣類=大きめのシャツとか、紐で縛るパンツを入れていたのでなんとかなったけどね。


 言われて始めてそこに気付いたのかもしれない。二人の長は、かなり慌てた顔を見せた。


「元々うちの……ゲルファイ鉱山は既に廃鉱ギリギリだった。なので、ここ五十年近く、移住先の新たな鉱山を探していたのだ。だが残念なことに、新たな鉱山の片鱗すら見つけられていなかった。そこに。モボファイの件を知らせる書簡が届いた。モボファイは……悪霊? が発生したのなら、どうにもならないことだったのだろう。昔からの知り合いも多かったが、全員死んだようだ。結果、命を助けられた残りのガギルが、ヒームに恩を返すためにオベニスに移住するというのも、理解した。聞いたことが無いが、あり得ないとは言い切れない。恩を感じたのであれば、それを返し終わるまではガギルは意見を譲らない」


 助けるにしても、あんなスピードで浸食されたのだからどうにもならなかっただろう。



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