0264:森都

 イーズ森域中央、ハゾンの集落。それはノルド以外の種族に伝わっても良い表向きの名前だ。本当の名は、イーズ森都。この集落がイーズ森域の中心であり、イーズで暮らすノルドの行方を定める会議が行われる場所だそうだ。


 集落の規模は……北アビンよりも若干大きいくらい? だろうか? 都というほど、人が多いわけでも無い。


 が。集落の中央に大きな木。その下にこれまた大きな建造物が木に食い込むように建てられている。建物を建ててからこの木を植えた? いや、どういう建造方法なのか? と疑問になるくらい、一体化している。


「そもそもは……森都はハイノルドがノルドに様々な命令を下す場所であったのだ。ヒームなど下等と侮るノルドは、会議という衆愚を認めることが出来なかったからな。賢きモノに従う。その絶対制がノルドの強みでもあったのだ」


 まあ、バガローンさん達のオーベさんに対する態度を見れば一目瞭然。王族扱いというよりは、神様扱いだ。


「あの木と融合してる建物、ヤバイですね」


「ハイノルドの館じゃな。大抵が、あのゲアルの大樹と同化させて、強度を増し、さらに、結界力も増しておる。あの中は森とは別の場所、隔離された場所になる。厳密に言えば、この世界と少々次元が違う。つまり、どんな優秀な感知手段があったとしても、あの中に入ってしまえば、一切反応しない。ハイノルドが同胞にも関わらず、交流が無いどころか、お互いの情報をほとんど持っていないのも、ああいう隔離された場所で暮らしている場合が多いからじゃ」


「んーでもなんかーうーん。嫌な感じがするんだよねぇ。あの中から」


「なんじゃと?」


「不愉快なヤツがいるなーっていう感じがする」


「しますね……うっすらと」


「……我が主はともかく、ミアリアもというのは……」


 ぶつぶつと言いながら、歩くオーベさんに対して、もの凄い気づかいをしながら、バガローンさんとお付きとして一緒に来たアビンの人たちが周囲を警戒している。


「やはり! バガローン! きさま、森域の掟を!」


「まて、ロンバーン。掟は破っていない。一切」


「なにぃ?」


 森都に入ってすぐの十字路。我々とは違う方向から現れた一群が、難癖を付けてきた。まあ、判りやすく、今回の件を外の人間、特に俺の様なヒーム族に明かすことを反対している派閥……ということなのだろう。多分。


「ああ、破っていないな」


「なんだ! お前は! そもそも、そいつはヒームではないか! 宿敵を! 森都へ招き入れるとはっ!」


 あ。バガローンさんたちが、なんでオーベさんを特別扱いしているのか判って……いや、見えてなかったのか。多分。頭に血が昇っちゃって、よそ者を森都に連れ込んだ……という部分しか見てなかったな。


「よそ者は黙っていてもらおう! これはイーズ森域のノルドの問題である。北アビンの長、バガローンよ! 貴様が掟を破らず、外のヤツラ、特にヒームを連れてこれるハズが無い。ここで制裁をくわ……あ?」


「五月蠅いの。貴様。ノルドはいつからヒームと同じ様に小賢しい知恵で言葉を紡ぐことになったのじゃ? 森の使徒たる誇りはどこへ行った?」


 その時、ロンバーンと呼ばれた五月蠅いヤツの隣にいた、明らかに歳を取ったノルドが、ひれ伏し、土下座した。そして、彼らの仲間ではなく、傍にいた、多分、森都の住人で、歳を重ねた人たちが……同じ様に土下座をする。


「な、何を?」


「ほう、覚えている者もいるようだの。この森域はハイノルドに見捨てられた……という訳ではないらしい」


「あ、ああ……」


 オーベさんが……威圧に似た、いやでも、威圧ほど強制的では無い、波動の様なモノを若干強めた。これはノルドにとって、逆らいづらい、服従しなければならないという何かを発しているのだという。


「五月蠅いの、これがハイノルドじゃ。ひれ伏し、よく覚えておけ。我以外のハイノルドなら、無礼として今この場でお主を絶縁してもおかしくはないぞ?」


 絶縁っていうのは、こないだオーベさんが北アビンで言った、放浪者として森を追放するっていうことだそうだ。森に戻れないノルドは、大抵がヒームの街などで暮らす事になる。強制的にそれをされるというのは酷い屈辱、苦痛なんだそうだ。


 威張ってた人が膝をついた。震えてる……。


 そして、オーベさんは既に彼をガン無視だ。


 土下座する反対派を横目に、完全に無視で先へ進んで行く。い、いいのかな? と小心者は考えてしまうが、種族的な身分社会みたいなので、介入しようが無い。想像出来ない歴史があるし。ちゅーか、いくら妻とはいえ……俺、良くこれに口出ししたな……。


 まあ、自分が不利益を被っていなければ、良しとしよう。


「バガローン、話は付いているのではなかったのか?」


「も、申し訳ありません、ロンバーン、ここにも、ヒームを森に連れ込むのを反対し続ける者がおりまして……」




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