0263:取り消し

「いやいやいや、オーベさん……ちとやりすぎ。まあでも、ハイノルドとしてはそういう風にしないとなのね?」


「ああ、親が子を叱るのは至極当たり前じゃ」


「うん、判った。でも、オーベさんは今は俺の妻なんだよね? ハイノルドだけど」


「ん? ああ、そうだが」


「俺の妻は、今回の件でノルドという名を捨てて生きろなんて酷いことは言っちゃダメ。甘いんだろうけど、別に俺はオーベさん、我が妻のおかげで何一つ被害を受けていない。最大の被害者になる可能性があったのは俺だよね? うん。矜持とか大切だけど、現実問題として被害が出ていないのだから、説教はしてもいいけど、現実的な罰は与えなくて良いでしょ」


「いや、だが……」


「さっさと、魔道具を起動させて、ノルドを名乗ることを許して」


「……」


「好きじゃない、それは本当に好きじゃないよ?」


「むぐう……わかった。先ほどの言葉は取り消す……」


 そして、オーベさんが掌をギュッと握る。感知というか、封印というか、集落がこの森の一部に再度組み込まれた。


「バガローンさん。これは別に情けを掛けたわけでは無いよ? 貸しだ。上手くしゃべれないのを良いことに、騙し討ちしようとしたのと一緒だからね。にも関わらず君たちを助けたのは俺だ。その命、無駄に捨てることは許さない」


「は、ははっ……」


「さて、それじゃ、その森都とやらに向かおうか。イチイチ説明が出来ないんじゃしょうが無い。直接いくしかないよね?」


「え、あの」


「モリヤ。ここまで聞いて……行くのか?」


「え? 行かないの? オーベさんが一番、知りたいし見たいんじゃ無い? 死霊術の元祖なんでしょ?」


「確かに……しかし台無しじゃ!」


「え?」


「我がハイノルドとしてこう、ノルドの規範をビシッと正したにも関わらず! 身内にこうまで崩されてしまうとは」


「そんな身内を選んだのは自分でしょう?」


「そうなのだが。そうなのだがな! むきいいいいいいいいぃぃぃ!」


 いやいや、ジタバタ……地団駄踏まれても。本当に踏むんだ。地面を。初めて見た。


「まあ、今回はこういう感じで。というか、俺と一緒だったのだから仕方ないよ」


「むぐう」


 あ。二回目。本当に、むぐう……という女の人、女の子を初めて見た。


 ということで、急かしたのもあるけれど。


 森都に向かう用意は粛々と進み、すぐに出発することになった。オーベさんがいるからか至極スムーズに進む。というか、基本、ノルドの人たちは何もしゃべらない。


「お館様、ステキでした……」


 ミアリア。ちょっとズレてるよ。多分。


 俺たちは野営用の荷物を全部、収納にぶち込んであるので、もの凄く身軽だ。森都まで三日かかるという。帰りは……多分、俺たちだけなら一日。俺が転移で先に帰れば、ミアリアとオーベさんだけなら半日程度で戻れるんじゃ無いだろうか? 


 ここのノルドはまだ、若干信用が出来ない。なので浮遊馬車は出さない。スピードだけならバガローンさん達も馬車に乗せて、ミアリアとオーベさんに牽いてもらうのが最速だと思うけど……まあ、森だしね。

 平坦な道があるわけじゃない。馬車の大きさでは、ちと運用的に無理があるかな。出来なくはないだろうけど、ある程度平坦で開けた道が無いと、スピードは出しにくいしな。


 そもそも、ノルドの人達の森の移動……というのは、実は、ヒームの移動とは訳が違う。森はノルドの庭ということで、とにかく限界ギリギリまで進む。で。木の陰とか、枝の分かれ目とか、まあ、適当な場所に身体を預けて仮眠する。無駄な時間は一切無く、もの凄くスピーディだ。逆に俺がいるから、ある程度、野営の場所を決めて行動しないといけないみたいで、ちょっと申し訳ない。


 だが。うん。俺も簡易なコテージをね。持ち歩いてるからね。しかも魔物除けの魔道具もバッチリ設置してあるし。で。これまた収納してある暖かいまま保存されている食事を取り出せば、美味しい食事を取って、ベッドで眠れるという贅沢さ。収納、完璧だ。


 魔力総量さえどうにかなってみれば、これほどスゴイ指輪、能力はない。マジチート。本当にありがとうございます、茂木先輩。


 これをなー最初からなー使えたらなー異世界転生系主人公だったのになー……と思ったりもするけど、いつの間にかハーレムは完成していたので(個人的にあまりそういう気分ではないけど)、そのうちチートも……って強さでミアリア……さらにイリス様、オーベさんを超えられるとは一切思えないな。うん。


 あ、当然だけど……遺体とか、アレでアレなモノを「目の前から消す」ために収納していたモノは、オベニスからかなり離れた荒れ地に土術で大きな穴を空けて、そこに全部投げ捨て、燃やして、さらに埋めた。死体とか遺体とか、こまめに処理しないとついつい入れっぱなしになっちゃうからね。


 なんとなく気分だけど……食べ物と一緒に入ってるのってやじゃないですか。収納の中で、空間自体が別口、違うから混ざらないみたいですけどね。




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