0262:平伏

「……もしや、シールゲレニハ・ダイドボールド……か?」


「は、ははっ!」


 あ。その名前、前になんか嫌な予感がした人だ。死霊術の元祖というか、系列を生み出したとかっていう……。


「生きて……いや……そこに居る……のだな? よい、しゃべれ」


 オーベさんの顔がかなり怖い。まあ、死霊術といえば……あまり良いイメージ無いしな。


「古から、森都の祭壇奥は立ち入り禁止になっておりました。我々はハイノルドの遺構として封印を犯すことなく、守り続けて来たのです。ですが、この百年ほど、そこから、黒き煙のような塊……我々は死霊と呼んでおりますが、が、漏れ始めたのです。死霊は簡単に滅することは出来ませんでしたが、癒しの術で撥ね除けることができると判明し、解呪を行い、一時的に封印の中を調査しました。すると……その……あの……」


「奥に……シールゲレニハ、その者が封印されていたのだな?」


「は、はっ」


「ということは……キサマラ、ガギルの鉱山に現れたのが死霊だと知っておったな?」


「も、申し訳ありません。いきなり、いきなりなのです。我々も彼らが逃げてきて初めて、鉱山に死霊が出現したのだと知ったのです。なぜ、いきなり、モボファイ鉱山に死霊が……と。契約のため、迂闊に情報を話すコトもできず」


「まあ、その分……ではないが……それは、ガギルの面倒をギリギリまでみたのだから、良いということにしよう」


 オーベさん無双。やはり、連れてきて良かった。事情が即判りだ。会話が早い。というか、俺達だけだったら、絶対、何も話さずに、その森都に行く事になっていた。と思う。


「我々は……封印の中の事どころか場所の事すら喋ることが出来ませぬ。ですが、その中には様々な資料が保存されておりました。その中に……癒しが……と」


「ああ。シールゲレニハは……死んでいない。ということは自らを死霊化したということか。だが、我らが先祖はそれの封印に成功した。そして、封印を継続していくためには、癒しの術士が必要ということなのだろう。というか、今現在も、癒しの術の使えるノルドが森都に赴き、癒しの術をかけ続けているのであろうな……」


「あ、ああ」

 

 バガローンさんが頷いた。


「……まずいな。封印は既にズタボロで、いつ、はじけ飛んでもおかしく無いレベルなのかもしれん。この手の高度な封印や、森での感知などの大規模な術は、ハイノルドでなければどうにもならん。だが、近年ここイーズ森域にはハイノルドが存在しなかった。真実を知ることも出来ず、ノルドはどうすればいいかも判らず、ここまで来てしまったのだろう」


 ノルドたちがうなだれる。ってうーん。そんなに悪いことはしてないよね? 彼らは。無責任なのは……。


「封印を仕掛けたハイノルドは……いや、ひょっとして、イーズの森域に残っていたハイノルド全員で封印を仕掛けてみたものの、シールゲレニハの力が強すぎて、全員が瞬時に命を絶ったのかもな。ここまでの大物を封印したのだ。もしも生き残りがいれば、後世に情報を伝えないなんてことは絶対に無い。なので他のハイノルドに使いを出して、後始末を願うことくらいは必ずする。それが出来なかったということじゃからのう。しかし……確かに……やっかいじゃな。……あまりに時間が経ち過ぎた」


 なんか、現在生きてる人は誰も悪くないけど、大変なことになってて、というか、腐ってるのを再封印しなきゃなのか。うーん。


「しかし、それをヒームであるモリヤにやらせようとするのか。キサマら。これまで何人が死んだ? そして、それを言わずに向かわせようとしておったな? 誇り高きノルドの民が! 恥を知れっ!」


 威圧……ではないが、オーベさんの言葉が重さを持ち、ノルドたちを殴りつける。まあ、そうだよねぇ。生け贄……ではないけど、そういう流れだもんね。


「キサマら、イーズの森域、北アビンのノルドは今後、ノルドを名乗らせぬ。放浪者として生きよ」


「そんな!」


「何をそんな強引な」


「まだ気付かぬ者がいるのか? この森域にハイノルドが長い間居なかった、立ち寄らなかったというのは、確かなようじゃな」


「あ、ああ……」


 オーベさんが若干偽装していたっぽい術を解除したのが判った。なんていうか、空気の重さが変わる。


「我が名は月夜の森のオーベシェ・ミード。キサマらが今、我が言葉に従い、動けなくなっているのがハイノルドたる我が力の証」


 オーベさんが何も言わずに、ゆっくりと手を横に振った。


「も、森の……魔道具が……」


「この集落を守るモノは今、無くなった。恥を心に抗うが良い。反省せよ!」


「は、はっ……」


 土下座……というか、顔を地に食い込ませるレベルで平伏するノルドたち。




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