0248:モボファイ鉱山
「ここ……何て言ったっけ?」
「……モボファイ鉱山です」
目の前に……村がある。が、どこからどう見ても完全に廃墟と化している。朽ち果てている。一部が、ではない。全てが、だ。
ガギルの人たちがこの村を捨ててからそんなに時間は経過していないハズだ。にも関わらず、なんだ、この劣化具合は。
「この村が捨てられたのは……まだ、たかだか20~30日前のはずだよな?」
「多分、そのハズです」
「死霊術……か」
「心当たりが?」
「そこまで詳しくは無いのだがな……死霊術にもイロイロと種類があってな。死した魔獣、いや生物を復活させるモノ、自らを死者として永遠の命を得ようとするモノ、霊魂を研究するモノ……そして生気を奪うモノ……」
「生気……っていうのは、生き物からだけじゃない……ですよね?」
「ああ、木などの木材も元々生きているわけだし、動物植物問わず、奪われる。……その奪われた様子がこの村の事象に似ておるのぉ」
朽ち果てる……という言葉でしか表現できない遺跡……が広がっていた。遺体ではない。崩れ落ちる遺骨が、この鉱山の男たちのなれの果てなのだろう。男も同じくらいの数と言っていたので、五十近い骨が転がっているハズだ。
「それにしても生気を奪うタイプの死霊ということは。やっかいじゃぞ?」
「オーベさんがいてもですか?」
「ああ、死霊術、特に生気を奪うタイプの敵は……ゴーストなどの死霊が進化した、リッチ、レイス、さらにその上はデーモンと呼ばれる悪魔混じりの魔物がリッチ化したなんてのもおるな。全部……通常の攻撃は効かぬし、魔術による攻撃も半減される。とにかく面倒なわけだ。ってミアリア! 何をやってお」
ミアリアの前方に明らかに怪しい黒い塊が出現していた。
パァーン
両手を、柏手を打つかの様に勢いよく合わせた。ミィーンという空気の歪む音が周囲に広がる。両の掌に挟まれた黒い塊は細かく、粉々になり、さらに振動で細分化され、消え去った。
「なん、なんだと?」
オーベさんの顔が驚愕で固まった。
「何をした?」
「んーなんか消えちゃいましたね」
「モリヤ……」
「イヤイヤ、俺じゃないですし」
「本体は判らないですけど、あの黒いのはいけそうです」
柏手というか、ミアリアが手を振るうと黒い塊が若干消滅する。というか、あいつに襲われたって言ってたんだけどな。ガギルの女性陣が。特に、腕を失ったモミアさんは「黒い塊が鎌の様な形になって襲いかかってきて」「気がついたら、腕が切り落とされていた」と言ってたし。
「それは……実体の伴った幻覚に近いモノじゃな……あの黒い塊は、やはり、生気を奪う負の塊じゃ。アレは襲いかかった生き物に、都合の良い幻覚を見せる。落とされた腕の切り口。鈍くなかったか?」
「そう言われてみれば……剣……というか、刃物で切り落とされたなら、もう少し断面がちゃんとしていた気もしますね」
辺り一面に見える黒い塊。蚊とか小バエの塊のような感じで浮遊している。生気を感じると近づいてくるのだろうか?
「ああ。「風裂」よりも遥かに鈍かったろう?」
「ええ、確かに。そういえば、その辺、凶器に関してよく考えて見てなかったな」
「……というかな。モリヤ。お前の周りにその黒いのが近寄らないように見えるのだが?」
「ああ、そう言われてみれば……」
確かに、近づいてくるのだが、俺を避けるように、オーベさんとミアリアに襲いかかっている。オーベさんは結界術でガードしているのか、一定距離よりも近付かない。
「お館様は癒しの術だけでなく、光術の使い手でもありますから」
「なんだと? 癒しと光を?」
「え、ええ、使えますけど。いつの間にか」
オーベさんの顔が固まっている。
「光術……光の魔術か。本当に……あったのか」
「え?」
「よいか、モリヤ。光……という属性の魔術は長い間、在ると言われていたが、それがどの様なモノか良く判っていなかった属性なのじゃ。というか、厳密に言えば。魔術そもそもの属性がキチンと分類されたわけではないし、良く判っていなかったのだが……ああ、そうか。モリヤの「鑑定」か。これで初めて、様々な魔術やスキルが分類されるのだな」
「?」
「説明は後で行う。とりあえず、光の術士よ、この場を浄化してみせよ」
掌を下に向ける。え~光の術……は確かにステータスに表示されてたけど、なにがどういうモノなのか良く判ってないしなぁ。浄化、か。浄化。清らかに……澄んだ空気? 場所? 泉とか? アレか、田舎の鎮守の森の澄んだ空気か。あんな感じになれ!
ぐぐっと力が入った。ゆっくりと……ミアリアと同じ様に掌を合わせる。おかしい感じで魔力が抜ける。くっ。半分……くらい持ってかれたかな? イメージ通り、掌から、なんか、綺麗な光の波が発生した。最初地面に当り、反射するように広がって、一面が薄らと輝く。
ドン!
「うっこれは」
「さすが」
縦に一度だけの振動、地震……かのような震動が一帯に広がった。ザワザワと周りの木々が揺れている。あ。さっきまで死んでいたこの一帯に……生気が。緑が、水が戻ってきている。
「見事じゃな……これは」
「これが浄化……ですかね?」
「ああ、詠唱もなにもすっ飛ばしての発現だからの。これが誰かに伝わるわけではないが。これ以上無いくらいに……この地が浄化されたのではないか?」
「そう思います。さすがお館様」
光術よ。これでいいのか。
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