0246:浮遊

(奇跡の人として祭り上げられる前に……姿を隠した方がいいかもしれません。加減が判りませんでした。申し訳ありません)


 と、ミアリアに謝られたので、早急においとますることにした。


 怪我をしていた人たちの治療は多分、完璧にできている。実は、腕を失うレベルでやられていたモミアさん以外は血を大きく失った人もいなかったのだ。というか、それ以前の癒しの術で、その辺の基礎的な部分は回復していたんだと思う。障害となっていたのは、大きな傷や、合併症で発病した他の病気だった。


 まあ、さらに移動は奥の手も用意してある。逃げるが勝ちだ。


 ノルドの人たちの土下座にビビったのも確かだ。


「で。なんでオーベさんまで……」


「いいではないか。なんだかピンときたのだ」


「そんな理由で……魔術学院の方は……」


「途中!」


「ぇー」


「というか、自分の妻にさん付けはどうなのだ?」


「しばらく無理ですよ」


「むむう」


 自由だな……この人。いや、この妻。


 森を離れ、しばらく歩いた所で休憩をしていたら、いきなり現れ、合流したのがオーベさんを筆頭としたモリヤ隊の面々だ。


 フリアラ、オルニア、クリシア、シエリエ。現在自由に動けるモリヤ隊、四名も一緒だ。というか、まあ、オベニスに帰還して動ける様なら援軍として来てね、と、お願いしておいたんだけどね。


 監視しているノルドの狩人がいなくて良かった。


イーズの森域から出てしまえば、俺たちの足跡は追えないハズだ。


 あまりに急な展開に、北アビンのノルドたちもイマイチ対応が出来なかったようだ。食糧の分配とかしないとだしね。多分、彼らは彼らでお腹が空いていたハズだ。

 

「うん、じゃあ、四人には……後でご褒美をあげる代わりに、重要な任務をお願いしたい」


「はい!」


「わーい」


「コクコク」(激しい頷き)


「妻ですから」


 頷いているだけのヤツもいるが、まあ、うん。これ以上に頼もしい存在はない。今回はちょっと出し惜しみは無しだ。


(浮遊馬車~)


 心の中で唱えながら、収納から今回特別に用意しておいた大物を取り出す。しかも四台。


「これは……」


「我が主……」


「お館様……これは魔道具を使った……」


 目の前に、馬車、台車が浮いている。とはいえ、丸い車、タイヤは無い。実はダンジョンポイントを使って、浮遊板というアイテムを持ち出し可能で生産(罠の補修部品なので、元がそれなりに安い。持ち出し可能にしても……結構痛いけど、そこまでではない)して、それを箱馬車の箱部分の下部四方に張り付けたのだ。


「スゴイ発想だ……いや、これはアレじゃな、迷宮の罠に使われている浮き板じゃな? それをこうして……いや、ああ、そうじゃな。そうなるな。浮くのか」


 さすがオーベさん。御明察。この浮遊板四枚に最大で魔力を込めると、大体三十センチくらいの高さで、二十日は浮いていることは確認してある。さて。浮いているということはどういうことか。そう。重さを感じないのだ。無重力状態に近い。つまり。


「これは……重さを感じん……」


「ふふーん、スゴイでしょう」


「す、すごいです」


「凄いな、これは……」


 高さ50センチ程度に浮遊しているので、持ち手を引っ張る者の負担がほぼ無い。乗っている人への負担も少ない。揺れないしね。

 危ないのは加速している時に手を離すことと、急ブレーキだが……それは、モリヤ隊の様な超絶身体能力を持つ者が制御すれば、万が一にも事故は起こらないハズだ。風の術を纏わせることで空気抵抗を軽減させ、さらに安全性が上がる。起こってもリカバリーするのは難しくないはずだ。


「とりあえず、四人はこれを牽いて、オベニスへ戻ってもらえるかな? ガギルのみんなを連れて。ぶっちゃけ、繊細な任務なので、君たちにしか頼めない。お願いします」


「はい!」


「コクコク」(激しい頷き)


「判りました」


「ええ」


 また、頷いているだけのヤツがいるが、まあ、うん、大丈夫だろう。


「お館様! これは! これはなんだ! 浮いてる? 馬車が浮いているのか?」


 ドガルさんに見つかった。うん、こういうのには目ざといよね。当然。


「まあまあ、とりあえず、オベニスで落ち着いてからだ。病人はもっと清潔で安全な場所で静養させないと」


「そ、そうか……すまん」


「で、みんな、病人も多いので慎重にね。でも……ここから、「はやかけ」を使うとオベニスまでどれくらいだっけ?」


「我々だけなら……消失の罠も既に無効化されておりますし、二時間程度で」


 また速くなってね? そうね、でも、俺が一緒で無ければ最高速度で行けるしね。俺だって「はやかけ」でそこそこ動けるようになってるのになぁ。


「この浮遊馬車、最大に注意すべき点は停車する時ね。いきなり止まると、もの凄い衝撃が箱の中の人に伝わるから。徐々にスピードを落とすようにしないと」


 で、実際にやってみせる。ああーとか、ふーんんとか、イロイロと納得しているようだ。徐々に止まるっていうのも理解してくれた。


 四台の浮遊馬車に、ガギルの人たちを分乗させる。大型の箱馬車を元にしているので、一台に付き大体、二十人は乗れる。余裕を持って十人ちょいづつでいいだろう。


 最大積載量は……よく判らない。人間が乗れるだけ乗っても平気だし、もっとずっと重い金属塊を大量に乗せてみたが大丈夫だった。多分、この馬車にぎゅうぎゅうにモノを詰めてもいけると思う。





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