0241:感謝

「あの……とりあえず、頭は上げてくれませんか。別にこういう風にされたくて、癒したわけでは無いですから」


 動かない。いや~なんていうか、ガギルはともかく、なんでノルドの人たちまで?


「あの……」


「まずは、感謝を、モボファイ鉱山の全ガギルを代表して感謝を述べさせていただく。土の精霊に捧げた我が御霊を捧げる。我らが誓いは我らの命尽きるまで果てることは無い。ガギルは忘れない。恩を忘れない。感謝を忘れない。助けられたことを忘れない。命を。命を捧げん。我らが命、如何様にもお使いください」


「……」


(どうしてこうなった?)


(……少々……神格化しすぎたかもしれません)


「ちょっ、ちょっと待って下さい。えーっと。私は、ミスハル……昏き森のノルドの外交官から、この辺りのノルド族が少々困っているという話を聞いて、ここへやって来たに過ぎません。ここから西の集落に住んでいるノルド族の方には、我がオベニス領で働いてくれる人を派遣していただく約束を交わしました。その約束の際にかけたご迷惑を、少しでも返せたらいいかもなと思って。ですから、ここへこれだけのガギルの方が避難しているとは知りませんでしたし、あれほど沢山の負傷者がいるとも思ってはいませんでした。なので、かなり偶然でもあるのです。畏まらないでください」


「それでも……もしものためにと持って来た魔道具を使わせ、さらに、命を削るような癒しを施して下さった。それはもう、命を捧げるに値するかと。我々は鉱山を追われ流浪の身。如何様に使われても構いませぬ」


 マジか! 表情から見るに……マジだな……こりゃ。ガギルをまとめている、えーと。ドガルか。ドガルさんの目がちょっと怖い。ちょい狂信者入ってる気がする。


「と、とりあえず、あのガギルのみなさんについては判りました。命とか今後とかはこれから話をするとして。まずは顔を上げて、病人の世話に戻って下さい。ああ、後でみなさんの怪我も治しますから。症状が重い人だけで癒しの術が行き渡って無いですよね? で。あの……ノルドのみなさんは……なぜ……あの、頭を下げているのでしょう?」


(あれ? そういえば。土下座ってさ、ヒーム族はしないんだよね?)


(ノルドやガギルなどの長命の種族は昔の仕来りを伝え覚えておりますから)


 ああ、そうか。茂木先輩を始め、かなり昔だけど、日本から転生してきた人がいるんだもんな。土下座……したんだろうなぁ。つい。そうか、イリス様が土下座したとき、オーベさんが苦笑してたのは、彼女は見たことがあるからなんだな。本物を。


「厚かましいながらお願いがございます」


 順当にバガローンが答えた。頭は下げたままだ。


「癒していただきたい……方がいるのです」


「いいですよ。って何千人とか多いのは厳しいですけど」


「本当ですか?」


「診るだけでしたら。でも魔道具も使ってしまいましたし、ノルドの癒しの術の使い手の方とそれほど変わりは無いと思うのですが」


「モリヤ様が癒して……それでダメなのであれば納得がいきます」


「うーん、そこまででもないと思うのだけれ……ど」


「あれほどの癒しの術……私たちは見たことも聞いたこともありません」


「判りました、で、癒したい方はどこにいるんですか?」


「この集落……ではないのです」


(あ、これは面倒くさい話になりそうです)


(そうなの?)


「これから使者を立てます。その結果次第なのですが」


「判りました。ではその辺、話がつきましたら、再度お話しをするということでよろしいですか?」


 待つという選択肢はない。こうなったら……ガギルの人たちをオベニスにつれて行くことになるだろうし。あと。できれば、彼らが鉱山から追い出された原因も突き止めたい。


 その後、ガギルの人たち、病人として倒れていなかった者たちの治療を始めた。横たわっていないだけで、疲労困憊していた者も多かった。

 

 洞窟の土床に直で寝ている……というのも正直、ヤバすぎる。オベニスで使用した天幕を一張り、持って来ていてよかった。雨露をしのげる大きな布として、床に敷く。これだけで、病人に優しい環境になったハズだ。


 そもそも、栄養も足りていないのだろう。潤沢に食料や水が用意されたとは思えない。自分は我慢して他の者や年少者に食べさせていた……者も多かったようだ。

 

 とりあえず食べれる者には、収納内にあった、作り置き(鍋に入れて蓋をしたモノを鍋ごと入れてある。「旨い」と思ったり、機会があれば食堂とかで買い上げているので……既に1000近く入ってる気もする)のシチューとふかし芋を取り出して、食べさせる。


 泣きながら食べている者も多かったので……まあ、ギリギリだったのは、怪我や病だけでなかったことが良く判った。





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